古家付き土地の売却とは?更地渡しとの違いと、解体するタイミングの決め方

古い家が建ったまま土地を売るか、壊して更地で渡すかは、売り出す前に決めておきたい分かれ道です。2つの売り方の違い、固定資産税や特例との関係、解体の時期と手続きを順に整理します。
結論
- 古家付き土地の売却とは、古い家を建てたまま「土地」として売る方法です。解体費を先に払わずに売り出せるのが利点です。
- 更地渡しは、売買契約のあとに売主が家を壊し、更地にして引き渡す方法です。買主は建物の状態を気にせず検討できます。
- 固定資産税は1月1日の状況をもとに課税されるため、年をまたぐ前に家を壊すと、住宅用地の特例が使えなくなることがあります。
- 迷ったら、まず古家付きで売り出し、買主の希望に合わせて解体するかを決める進め方が、出費の読み違いを減らせます。
「親の家はもう住める状態ではない。壊してから売るべきか」。「解体費をかけても、その分高く売れるのか」。古い家のある土地を売るとき、多くの方がここで手が止まります。
解体は一度始めると元に戻せません。費用も先に出ていきます。その一方で、建物が残っているせいで買い手が見つかりにくい場合もあります。
この記事では、古家付き土地と更地渡しの違いを表で比べ、解体の時期をどう決めるか、税金と手続きの面から順に説明します。売却全体の流れは「不動産売却の流れ」もあわせてご覧ください。
古家付き土地とは
古家付き土地の意味
古家付き土地とは、建物の価値がほとんど見込まれない古い家が建ったまま、土地として売り出す物件のことです。広告では「古家あり」「現況古家あり」と書かれることもあります。
建物としての価値ではなく、土地の条件で値段が決まりやすいのが特徴です。買主は、家を壊して建て直すか、手を入れて使うかを自分で選べます。
言葉の言い換え
- 古家(ふるや):古くなり、建物としての値段がほとんど付かない家
- 更地(さらち):建物が無く、すぐに使える状態の土地
- 更地渡し:契約のあとに売主が家を壊し、更地にしてから引き渡す約束
- 現況渡し:今ある状態のまま、手を加えずに引き渡すこと
- 滅失登記(めっしつとうき):家が無くなったことを登記に反映させる手続き
古家付き土地と更地渡しの違い
比較表
| 比べる点 | 古家付きで売る | 更地にして売る・更地渡し |
|---|---|---|
| 解体費 | 売主は払わない(買主が負担する前提) | 売主が負担する |
| 売り出すまでの早さ | すぐに売り出せる | 解体の手配と工事の期間が要る |
| 買主の選び方 | 建物を使いたい人も、建て直したい人も対象 | 新しく建てたい人に伝わりやすい |
| 固定資産税 | 住宅が建っているため、住宅用地の特例が続く | 1月1日に家が無いと、特例が外れることがある |
| 引き渡し後の心配 | 建物の不具合の扱いを契約で決める | 地中に残った物の扱いを契約で決める |
どちらが高く売れるかは、立地や土地の形、買い手の層によって違います。会社や物件によって判断が分かれるため、売り出す前に両方の見込みを聞いておくのが近道です。
「更地にして売る」と「更地渡し」は別もの
似た言葉ですが、時期が違います。更地にして売るのは、売り出す前に壊す方法です。更地渡しは、買主が決まって契約したあとに壊す方法です。
更地渡しなら、買主が決まる前に解体費を払う必要がありません。そのかわり、引き渡しの日までに解体と滅失登記を済ませる段取りが要ります。
古家付きで売るメリットと注意点
メリット
- 解体費を先に用意しなくてよい
- 家を直して使いたい人、古い家を好む人にも検討してもらえる
- 住宅が建っている間は、固定資産税の住宅用地の特例が続く
- 買主が決まってから、解体するかどうかを話し合える
注意点
古家付きでも、売ったあとの責任が無くなるわけではありません。民法では、引き渡した物が契約の内容に合わないとき、買主は修理などの追完を求められると定めています(民法562条)。
そのため、「建物には価値がない前提で売る」「建物の不具合について責任を負わない」といった約束を、契約書にはっきり書いておくことが大切です。
責任を負わない特約を結んでも、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れません(民法572条)。雨漏りやシロアリの跡など、知っていることは書面で伝えておきましょう。
更地にして売るメリットと注意点
メリット
- 土地の広さや形が見て分かり、買主が建てる家を想像しやすい
- 建物の傷みや不具合を説明する手間が減る
- 古い家が近所に与える心配(倒れる・荒れる)が無くなる
注意点
解体費は売主の持ち出しになります。費用は建物の大きさや造り、道の広さなどで大きく変わります。複数の会社に見積もりを取ってから決めましょう。
また、地面の下から古い基礎や浄化槽、ごみなどが出てくることがあります。見つかったときにどちらが費用を持つのかを、契約で決めておくと安心です。
解体のタイミングはいつがいい?
1月1日をまたぐかどうかを見る
固定資産税は、1月1日(賦課期日)の状況をもとに、その年度の税額が決まります。総務省の説明では、住宅の敷地(住宅用地)は、200㎡以下の部分の課税標準額が価格の6分の1、200㎡を超える部分は3分の1に軽くなります。
家を壊して1月1日に住宅が無い状態になると、その年度はこの特例の対象から外れることがあります。秋から冬に解体を考えるときは、年内に壊すか、年明けに壊すかで税額が変わらないか、市区町村の税の窓口で確かめましょう。
相続した家なら、3,000万円控除の期限と要件を見る
相続した空き家を売るときは、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例があります。国税庁によると、昭和56年5月31日以前に建てられた家であることなどが条件です。相続人が3人以上の場合、令和6年1月1日以後の譲渡では2,000万円までになります。
この特例は、家を壊してから土地を売る場合にも使えます。令和6年1月1日以後の譲渡では、売った年の翌年2月15日までに家の取り壊しなどが行われた場合も対象になりました。くわしくは「空き家の3,000万円特別控除」で整理しています。
特例は、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、売却代金が1億円以下であることなどが条件です。解体の時期を決める前に、期限から逆算しておきましょう。
解体するときの手続きの流れ
- 解体会社に現地を見てもらい、見積もりを取る
- 家の中の荷物を片付け、電気・ガス・水道の止め方を決める
- 床面積80㎡以上の解体では、発注者が工事着手の7日前までに都道府県知事へ届け出る(建設リサイクル法)
- 近所へあいさつをして、工事を始める
- 工事のあと、建物が無くなった日から1か月以内に滅失登記を申請する(不動産登記法57条)
- 更地の状態を確かめ、売買の引き渡しに進む
建設リサイクル法の届出は発注者の義務ですが、書類づくりを解体会社が手伝うこともあります。だれが準備するのかを、見積もりの段階で確かめておきましょう。解体の補助金がある市区町村もあるので、「空き家の解体と補助金」も参考にしてください。
古家付き土地を売り出すときの伝え方
広告と説明で伝えること
古家付きで売るときは、「建物は価値が無い前提」なのか「直せば使える」なのかを、広告と説明ではっきりさせます。買主が思い描く使い方と食い違うと、内見のあとに話が進みにくくなるためです。
- 建物の築年数と、分かっている不具合
- 解体する場合は買主の負担になること
- 更地渡しにも応じられるか
- 境界の目印があるか、隣との取り決めがあるか
更地渡しを条件にするときの決めごと
更地渡しにするなら、契約書に「いつまでに壊すか」「滅失登記をだれが申請するか」「解体中に近所から苦情が出たときの対応」を書いておきます。解体が遅れると引き渡しの日もずれるため、工事の期間に余裕を持たせましょう。
古家付きか更地か、判断の分かれ道
場面の例
たとえば、郊外にある築50年の木造の家を相続したAさん。家は雨漏りがあり、住める状態ではありません。Aさんは解体費を先に払う余裕がなく、まず古家付きで売り出しました。
その結果、建て替えを考える買主が見つかり、「売主が壊して引き渡す」という更地渡しの条件で契約しました。解体の費用は売買代金から払えたため、先に大きなお金を用意せずに済みました。
一方、駅に近い土地を持つBさんは、古い家があると土地の広さが伝わりにくいと仲介会社から助言を受けました。年明けに解体してから売り出す段取りにして、1月1日をまたいでから工事を始めました。
判断のめやす
- 解体費を先に用意しにくいなら、古家付きで売り出す
- 建物を直して使いたい買主もいそうなら、古家付きを残す
- 建物が倒れそう・荒れていて近所に心配をかけているなら、早めの解体も考える
- 売る時期が決まっているなら、1月1日と特例の期限から逆算して解体の月を決める
ポイント
- 解体は元に戻せない。まず古家付きで反応を見るのが、出費の読み違いを減らす
- 固定資産税は1月1日の状況で決まる。年をまたぐ前に壊すかは市区町村で確かめる
- 相続した家なら、3,000万円控除の期限と要件を先に確かめる
- 更地渡しにするなら、解体と滅失登記を引き渡しの日までに終える段取りを組む
よくある失敗とチェックリスト
よくある失敗
- 売り出す前に壊したが、買い手が見つからず、固定資産税だけが上がった
- 契約書に「建物の責任を負わない」と書かず、引き渡し後に不具合の相談を受けた
- 地中から古い基礎が出て、だれが費用を持つかでもめた
- 滅失登記を忘れ、無い家に固定資産税の通知が届いた
売り出す前のチェックリスト
- 家が建った年(昭和56年5月31日以前か)を登記や書類で確かめた
- 相続登記を済ませ、売る人の名義になっている
- 古家付きと更地の両方で、売れる見込みを聞いた
- 解体の見積もりを複数取った
- 解体する月と1月1日の関係を確かめた
- 建物の不具合と地中の物の扱いを、契約書の案で確かめた
よくある質問
- 古家付き土地の売却で、解体費はだれが払いますか?
- 古家付きで売る場合は、買主が解体する前提で値段を決めるのが一般的です。更地渡しの約束をした場合は、売主が解体費を負担します。
- 古家を壊してから売ると、固定資産税は上がりますか?
- 上がることがあります。固定資産税は1月1日の状況で決まり、住宅が無い土地は住宅用地の特例から外れることがあるためです。
- 古家付き土地でも、相続した空き家の3,000万円控除は使えますか?
- 要件に合えば使えます。家を壊してから売る場合や、令和6年1月1日以後の譲渡で翌年2月15日までに取り壊しなどが行われた場合も対象です。
- 古家付き土地は、売ったあとに責任を問われますか?
- 契約の内容に合わない点があれば問われることがあります。建物の扱いを契約書に書き、知っている不具合は伝えておきましょう。
- 解体したら、何か届け出は要りますか?
- 床面積80㎡以上の解体は、発注者が工事着手の7日前までに都道府県知事へ届け出ます。工事のあとは1か月以内に滅失登記を申請します。
売却の相談先
古家付きで売るか更地で売るかは、売却を任せる会社と一緒に決めていきます。会社は売買の会社一覧から比べられます。会社の選び方は売却の会社の選び方、査定の受け方は査定の種類、税金は売却の税金で紹介しています。相続した家なら相続した実家の売却の流れも参考になります。複数の会社にまとめて聞きたい方は、一括相談をご利用いただけます。
まとめ
- 古家付き土地の売却は、家を建てたまま土地として売る方法で、解体費を先に払わずに済みます
- 更地渡しは、契約のあとに売主が壊して引き渡す方法です
- 固定資産税は1月1日の状況で決まるため、解体の月は年をまたぐかで考えます
- 相続した家なら、3,000万円控除の期限と要件から逆算します
- 床面積80㎡以上の解体は届出が要り、工事のあとは1か月以内に滅失登記をします
- 建物の不具合と地中の物の扱いは、契約書で決めておきます




