空き家の火災保険とは?住宅物件と一般物件の違いと、加入前に確かめる5つの点

人が住まなくなった家は、火災保険の扱いが住んでいたときと変わることがあります。住宅物件と一般物件の違い、知らせないと困る理由、地震保険や賠償への備えを整理します。
結論
- 空き家の火災保険は、人が住んでいる家とは別の扱いになることが多く、空き家は「一般物件」として引き受けられる場合があります。
- 住まなくなったのに契約を見直さないと、保険法の決まりにより契約を解除され、保険金が払われないおそれがあります。
- 地震保険の対象は居住用の建物と家財です。空き家が対象になるかは、契約先に確かめる必要があります。
- 加入や見直しの前に、建物の使い方・補償の範囲・賠償への備え・管理の状態・通知の決まりの5つを確かめましょう。
「親が住んでいた家の火災保険、そのままで大丈夫だろうか」。相続のあと、こう迷う方は多いはずです。
人が住んでいる家と空き家では、火事やいたずらの起こりやすさが違います。そのため、保険の扱いも変わることがあります。
この記事では、住宅物件と一般物件の違いから、住まなくなったときに知らせる理由、地震保険や賠償への備えまでを順に整理します。保険料の目安は会社や建物によって大きく違うため、ここでは扱いません。
空き家の火災保険とは
空き家でも火災保険は必要か
空き家の火災保険とは、住む人がいない建物の火事や風の被害などに備える保険です。空き家だからといって、入らなくてよいわけではありません。
東京都の空き家の案内では、空き家は定期的に管理していても、人が住む家に比べて火災・風災・盗難のリスクが高くなると説明されています。いつか売る・貸すつもりなら、火災に加えて水災・盗難・水漏れに備える保険も考えるよう勧められています。
火事が起きたときに困ること
建物が焼けると、直す費用や取り壊す費用がかかります。燃えたまま放っておけば、周りへの危険にもなります。保険は、こうしたときの備えです。
保険の言葉の言い換え
- 契約者:保険料を払い、契約を結ぶ人
- 被保険者:補償を受ける人。建物の持ち主であることが多い
- 保険金額:事故のときに支払われる額の上限として決める額
- 約款:契約の細かな決まりを書いた書類
- 特約:基本の補償に追加で付ける補償
- 告知:契約のときに、保険会社が聞いた大事な事柄を正しく伝えること
住宅物件と一般物件の違い
建物の使い方で分かれる
火災保険では、建物の使い方によって「住宅物件」と「一般物件」などに分けて引き受けを決める仕組みがあります。国土交通省のサイトで公表されている空き家管理の事業の報告書にも、調査の時点で空き家の火災保険は住宅物件ではなく一般物件として扱われていた、という記載があります。
| 区分 | どんな建物か | 空き家との関係 |
|---|---|---|
| 住宅物件 | 人が住むための建物 | 住んでいた頃の契約はこちらが多い |
| 一般物件 | 住まい以外の建物(店・事務所など) | 空き家はこちらで引き受ける場合がある |
区分は会社ごとに決まりが違う
どちらの区分になるか、そもそも空き家を引き受けるかは、保険会社や共済ごとに決まりが違います。今の契約先で続けられるか、別の会社を探す必要があるかを、早めに確かめておきましょう。
「空き家」の定義も契約によって違います。家財を置いたままか、たまに泊まるかなど、使い方を正直に伝えて、どの区分になるかを確かめてください。
場面の例
Bさんの母は、ひとり暮らしの家で火災保険に入っていました。母が施設に入り、家は空き家になりました。Bさんは保険会社に連絡し、だれも住んでいないことを伝えたところ、契約の見直しが必要だと案内されました。
住む人が変わる、いなくなる、といった変化は、保険の前提が変わる出来事です。早めに連絡したことで、Bさんは補償が切れたままになるのを防げました。
住まなくなったら知らせる理由
保険法の「告知」と「危険増加」
保険法では、損害保険の契約を結ぶとき、保険会社が求めた大事な事柄について、事実を伝える義務があります(第4条)。これを告知義務といいます。
契約のあとで危険が高くなったときの決まりもあります(第29条)。契約に「変わったら知らせる」と決めてあり、わざと、または大きな不注意で知らせなかった場合、保険会社は契約を解除できます。
解除されると保険金はどうなるか
保険法の第31条では、危険が高くなった時から解除された時までに起きた事故の損害は、保険会社が払わなくてよいとされています。ただし、危険が高くなった原因と関係なく起きた事故は別です。
つまり、「住まなくなった」ことを知らせないまま火事が起きると、保険金が払われないおそれがあります。
ポイント
- 住まなくなったら、まず契約している保険会社に連絡する
- 契約の約款で「知らせる義務」がどう書かれているかを確かめる
- 区分や保険料が変わる場合は、見直しの手続きをする
- 名義人が亡くなった場合は、契約者の変更も必要になる
空き家の火災保険で確かめる5つの点
1. 建物の使い方を正しく伝えているか
だれも住んでいないのか、ときどき泊まるのか、家財を置いているのか。使い方によって区分が変わる場合があります。
2. 補償の範囲は足りているか
火事だけでなく、風・雪・水の被害、水漏れ、盗難やいたずらで壊された場合が対象かを確かめます。空き家は人の目が少ないため、何に備えるかを選ぶことが大切です。
3. 地震保険を付けられるか
財務省の案内では、地震保険の対象は居住用の建物と家財で、工場や事務所だけの建物は対象外です。地震保険は火災保険に付けて入る仕組みで、単独では入れません。
保険金額は、火災保険の保険金額の30%〜50%の範囲で決め、建物は5,000万円、家財は1,000万円が上限です。地震・噴火やそれによる津波が原因の火災・損壊・埋没・流失による被害が対象です。
空き家が居住用として扱われるかは、契約先に確かめましょう。
4. 人に迷惑をかけたときの備えがあるか
空き家の屋根材が飛んで車を傷つけた、塀が倒れて人がけがをした、といった場合に備えるには、賠償責任の補償が必要です。火災保険の特約で付けられる場合があります。
5. 管理の状態はどうか
傷んだまま放っておくと、事故が起きやすくなります。保険は、管理の代わりにはなりません。見回りの方法は空き家の管理方法で詳しく紹介しています。
もらい火と失火責任法
隣の火事で燃えても、賠償を受けられないことがある
瀬戸内市の空き家の手引きでは、失火責任法の定めにより、火事の原因となった人から賠償を受けられないことがあると注意されています。失火責任法は、火事を出した人に重大な過失がない限り、民法の不法行為の責任を問わないという法律です。
重大な過失の例として、天ぷら油の鍋を火にかけたまま離れて火事になった場合が挙げられています。
だから自分の建物は自分の保険で守る
隣の家から燃え移っても、相手から賠償を受けられるとは限りません。自分の建物は、自分の火災保険で備えるのが基本です。
空き家を貸すときの保険
借りる人にも保険に入ってもらう
瀬戸内市の手引きでは、空き家を貸す場合、借りる人の家財保険や、借りた建物に損害を与えたときに備える借家人賠償責任保険が紹介されています。借家人賠償責任保険は、家財保険の特約として付けるのが一般的で、単体では入れないとされています。
貸し方によって区分が変わる
人が住むために貸すのか、民泊やシェアハウスとして使うのかで、建物の使い方は変わります。使い方を変えるときは、そのたびに保険会社へ相談しましょう。民泊については空き家を民泊に、シェアハウスについては戸建てをシェアハウスにで詳しく扱っています。
相続した家の火災保険を見直す流れ
- 今の保険証券を探し、契約者・被保険者・保険会社・満期を確かめる
- 保険会社または代理店に連絡し、住む人がいなくなったことを伝える
- 区分が変わるか、契約を続けられるかを確かめる
- 相続人のだれが契約を引き継ぐかを決め、名義変更の手続きをする
- 補償の範囲(風・水・盗難・賠償)と、地震保険の扱いを見直す
- 書類の送り先を、管理する人の住所に変える
家財を残している場合
空き家に家具や家電を残しているなら、建物とは別に家財をどう扱うかも決めます。売る・貸すときに処分する予定なら、補償をどこまで付けるかを考えておきましょう。
場面の例:住むか迷っている間
Fさんは、相続した実家に将来住むかどうか、まだ決めていません。月に何度か泊まりに行き、家財もそのまま残しています。保険会社に使い方をそのまま伝えたところ、泊まる頻度や家財の有無によって扱いが変わると説明を受けました。
迷っている間ほど、「今どう使っているか」を正直に伝えることが大切です。
空き家の火災保険でよくある失敗
親の名義の契約が残ったまま
契約者や被保険者が亡くなったまま、手続きをしていない例です。相続人のだれが契約を引き継ぐかを決め、保険会社に届け出ます。
満期の案内に気づかない
空き家の郵便受けに満期の案内が届き、だれも見ないまま期限が切れてしまう例があります。送り先を自分の住所に変えておきましょう。
補償の中身を見ずに更新する
住んでいた頃と同じ補償のまま、何年も更新を続ける例です。空き家になると、気をつけたい事故の種類が変わります。更新のたびに、風・水・盗難・賠償の補償が今の使い方に合っているかを見直しましょう。
解体や売却の後も払い続ける
建物を壊したり売ったりした後は、保険をやめる手続きが必要です。解体の流れは空き家の解体と補助金をご覧ください。
よくある質問
- 空き家でも火災保険に入れますか?
- 空き家でも入れる保険はありますが、住む人がいる家とは別の区分で引き受けられることがあります。引き受けの決まりは保険会社や共済ごとに違うため、契約先に確かめましょう。
- 空き家になったことを保険会社に知らせないとどうなりますか?
- 契約で知らせる決まりがあるのに、わざと、または大きな不注意で知らせないと、保険法により契約を解除されることがあります。その場合、危険が高くなった後の事故の保険金が払われないおそれがあります。
- 空き家に地震保険は付けられますか?
- 地震保険の対象は居住用の建物と家財です。空き家が居住用として扱われるかは契約によるため、保険会社に確かめてください。
- 空き家の火災保険料はいくらですか?
- 保険会社・建物の構造や地域・補償の範囲によって違います。複数社の見積もりで、補償の中身まで並べて比べましょう。
- 相続した家の火災保険は名義を変える必要がありますか?
- 契約者や被保険者が亡くなった場合は、相続人への変更などの手続きが必要です。早めに保険会社へ連絡しましょう。
空き家の活かし方の相談先
保険を見直すのは、空き家をこれからどうするかを考えるよい機会です。売るか貸すかで迷う方は実家は売るか貸すかを、地域の会社を探す方は会社一覧をご覧ください。複数の会社にまとめて聞きたい方は、一括相談をご利用いただけます。
まとめ
- 空き家は、人が住む家とは別の区分(一般物件など)で引き受けられる場合があります
- 住まなくなったら、まず保険会社に連絡し、契約の見直しを確かめます
- 知らせる決まりを守らないと、保険法により解除され、保険金が払われないおそれがあります
- 地震保険の対象は居住用の建物と家財。空き家が対象かは契約先に確かめます
- もらい火では賠償を受けられないことがあるため、自分の建物は自分の保険で備えます
- 保険は管理の代わりにならない。見回りと手入れを続けましょう




