空き家の解体の手続きの流れ。石綿の調査、7日前の届出から滅失登記までの順番

空き家を壊すときは、工事の前と後に法律で決まった手続きがあります。石綿の事前調査、建設リサイクル法の届出、滅失登記までを、だれが・いつ行うかの順番で整理します。
結論
- 空き家の解体は、業者選び、石綿(アスベスト)の事前調査、建設リサイクル法の届出、工事、滅失登記の順に進みます。
- 床面積の合計が80平方メートル以上の建物を壊すときは、発注者(頼む人)が工事に着手する日の7日前までに、都道府県知事に届け出ます(建設リサイクル法第10条)。
- 建物がなくなったら、その日から1か月以内に滅失登記を申請します(不動産登記法第57条)。
- 書類づくりは業者や専門家が手伝うことが多いですが、届出や登記の義務を負うのは持ち主の側です。
「実家を壊すことにしたが、何から始めればいいのか分からない」。「業者に任せれば全部やってくれるのだろうか」。解体を決めた方から、よく聞く声です。
解体は工事そのものより、前後の手続きで迷う方が多くいます。だれが届け出るのかを知らないまま進めると、工事の日程がずれたり、壊した家に税金の通知が届いたりします。
この記事では、空き家の解体の手続きを、始める前から終わったあとまでの順番で説明します。補助金と費用の考え方は「空き家の解体と補助金」にまとめています。
空き家の解体の手続きの全体の流れ
順番の一覧
- 登記を確かめ、壊すことを家族や共有者と決める
- 解体の業者を選び、見積もりを取る
- 元請の業者が石綿の事前調査を行い、結果を書面で説明する
- 業者から分別解体の計画などの説明を受け、契約を書面で結ぶ
- 工事に着手する日の7日前までに、建設リサイクル法の届出をする
- 電気・ガスなどを止め、家財を片付け、近所にあいさつする
- 工事を行う
- 建物がなくなった日から1か月以内に、滅失登記を申請する
だれが行うかの一覧
| 手続き | 行う人 | 期限・決まり | 条文 |
|---|---|---|---|
| 石綿の事前調査と書面での説明 | 元請の業者 | 工事の前 | 大気汚染防止法第18条の15第1項 |
| 調査結果の報告 | 元請の業者 | 調査のあと遅滞なく | 同条第6項 |
| 分別解体の計画などの説明 | 業者 | 契約の前 | 建設リサイクル法第12条第1項 |
| 解体の届出 | 発注者(持ち主など) | 着手の7日前まで | 建設リサイクル法第10条第1項 |
| 滅失登記 | 登記の名義人など | なくなった日から1か月以内 | 不動産登記法第57条 |
解体を始める前の手続き
登記と持ち主を確かめる
まず法務局で建物の登記事項証明書を取り、名義がだれになっているかを見ます。亡くなった親の名義のままなら、相続人のあいだで壊すことを話し合っておきます。
共有の建物なら、共有者全員の考えをそろえておくのが安全です。共有の考え方は「共有名義の不動産の解消」で説明しています。
業者を選ぶ
建設リサイクル法第21条第1項により、解体工事業を営むには、都道府県知事の登録か、土木工事業・建築工事業・解体工事業の建設業の許可が要ります。登録は5年ごとの更新です(同条第2項)。
見積もりを頼むときは、登録や許可の番号を確かめましょう。見積もりの比べ方は、次の点を見ます。
- 建物の解体と、家財や庭木の撤去が分けて書かれているか
- 石綿の調査と、見つかったときの費用の扱いが書かれているか
- 届出や滅失登記の書類づくりを、どこまで手伝うか
- 工事中に近所から苦情が出たときの対応
石綿(アスベスト)の事前調査
大気汚染防止法第18条の15第1項により、元請の業者は、工事の前に設計図などの書面と目で見る方法で、石綿を含む建材の有無を調べます。結果は、発注者に書面で説明しなければなりません。
発注者は、この調査の費用を適正に負担するなど、調査に協力する義務があります(同条第2項)。調査の結果は、元請の業者が都道府県知事に報告し(同条第6項)、工事の現場にも掲示します(同条第5項)。
「調査は要らないので安くしてほしい」とは頼めません。調査は法律で決まった手順です。
説明を受けて契約する
床面積80平方メートル以上の解体では、業者は契約の前に、建物の構造や分別解体の計画などを書面で説明します(建設リサイクル法第12条第1項)。契約では、分別解体の方法や解体の費用などを書面に書き、お互いに交付します(同法第13条第1項)。
建設リサイクル法の届出
届出が要る解体
建設リサイクル法施行令第2条第1項第1号により、建物の解体で届出が要るのは、壊す部分の床面積の合計が80平方メートル以上の工事です。都道府県は、条例でこの基準を広げることができます(建設リサイクル法第9条第4項)。地域の基準は、都道府県や市区町村の窓口で確かめましょう。
届け出る人と期限
届け出るのは、工事を頼む発注者です。工事に着手する日の7日前までに、建物の構造、工事の時期、分別解体の計画などを届け出ます(建設リサイクル法第10条第1項)。
書類は業者が用意し、発注者の名前で出すことがよくあります。その場合は委任状などが要るので、だれが出すかを契約の前に決めておきます。
ポイント
- 80平方メートル以上の解体は、着手の7日前までに届出
- 届出の義務を負うのは発注者。書類づくりを業者に頼むなら委任の形を確かめる
- 石綿の事前調査は業者の義務で、発注者は協力する
- 契約の内容は書面にして、お互いに交付する
工事の前後にすること
電気・ガス・水道と家財
工事の前に、電気やガスを止める手続きをします。水道は、工事のほこりを抑えるために使うことがあるので、業者と相談して止める時期を決めます。止め方は「空き家の水道・電気を止める」を参考にしてください。
家財が残っていると、撤去の費用が増えることがあります。形見や書類は先に取り出しましょう。片付けの進め方は「空き家の片付けと遺品整理」で説明しています。
近所へのあいさつ
解体では音やほこり、車の出入りが続きます。工事の前に、業者と一緒に両隣と向かいの家へ、期間と連絡先を伝えておくと安心です。
場面の例
Bさんは、父が亡くなってから空き家だった木造2階建ての実家を壊すことにしました。床面積は100平方メートルほどで、届出が要る広さでした。
業者からは、石綿の調査の結果と分別解体の計画を書面で説明されました。届出は業者が書類を作り、Bさんが委任して出しました。工事のあと、土地家屋調査士に頼んで、1か月以内に滅失登記を済ませました。
届出と登記を業者や専門家に頼むとき
頼める範囲と、自分に残る責任
届出の書類づくりは業者、滅失登記は土地家屋調査士に頼むことができます。ただし、届出の義務を負うのは発注者、登記の義務を負うのは名義人などです。頼んだあとも、出したかどうかを自分で確かめましょう。
- 届出を出した日と、出した先の控えをもらう
- 滅失登記が終わったら、登記事項証明書で建物の登記がなくなったかを見る
- 委任状に書く内容と、印鑑を押す書類の数を先に聞いておく
名義が亡くなった親のままのとき
名義人が亡くなっている建物では、相続人が手続きを進めることになります。だれが発注者になり、だれが登記を申請するかを、相続人の間で先に決めておくと迷いません。相続のあとの段取りは「空き家を相続したら最初にやること」を参考にしてください。
日程は着手の日から逆算する
組み立ての例
解体の日程は、工事に着手する日を先に決め、そこから前の手続きを並べると組みやすくなります。
- 着手の日を、業者と仮に決める
- 届出の期限(着手の7日前)に間に合うよう、届出の書類の準備日を決める
- その前に、石綿の調査と書面での説明、契約を終える
- 電気・ガスを止める日と、家財を片付ける日を、着手の前に入れる
- 工事が終わる見込みの日から、滅失登記の期限(1か月)を書き込む
遠くに住んでいて立ち会えないとき
空き家が遠くにあると、何度も現地に行くのは大変です。次の点を業者と先に決めておくと、行き来を減らせます。
- 鍵の受け渡しの方法と、返してもらう時期
- 工事の前後の写真を送ってもらうこと
- 届出や登記の書類を、郵送でやり取りできるか
- 近所へのあいさつを、だれがいつ行うか
手続きのチェックリスト
- 登記の名義と、相続人や共有者の考えを確かめた
- 業者の登録または建設業の許可の番号を確かめた
- 石綿の調査の結果を、書面で説明してもらった
- 分別解体の計画などの説明を受け、契約を書面で結んだ
- 着手の7日前までに、届出を出した
- 取り壊しを証明する書類を受け取った
- 1か月以内に滅失登記を申請した
解体のあとの手続き
滅失登記は1か月以内
不動産登記法第57条により、建物がなくなったときは、登記の名義人などがその日から1か月以内に滅失登記を申請します。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になります(同法第164条第1項)。
業者から、取り壊しを証明する書類を受け取っておきます。自分で申請するか、土地家屋調査士に頼むかを、工事の前に決めておくとスムーズです。
固定資産税の変わり方
地方税法第359条により、固定資産税は毎年1月1日の状態で決まります。年の途中で壊しても、その年の税額は変わりません。
住宅が建っている土地の税を軽くする特例は、建物がなくなると使えなくなります。くわしくは「住宅用地特例」と「固定資産税のしくみ」をご覧ください。
壊したあとの土地の見回り
建物がなくなっても、土地の管理は続きます。草が伸びたり、ごみを捨てられたりしないよう、壊したあとも定期的に見回りましょう。境界の目印が工事で動いていないかも、最初の見回りで確かめておくと安心です。
よくある失敗
- 届出をだれが出すか決めず、工事の着手が遅れた
- 石綿の調査の費用が見積もりに入っておらず、あとから追加になった
- 形見を取り出す前に家財の撤去が始まった
- 滅失登記を忘れ、ない建物に固定資産税の通知が届いた
よくある質問
- 空き家の解体の届出は、だれが出しますか?
- 工事を頼む発注者が、着手の7日前までに都道府県知事に出します。書類づくりは業者が手伝うことが多いので、契約の前に分担を決めましょう。
- 小さな物置の解体でも届出は要りますか?
- 建物の解体で届出が要るのは、床面積の合計が80平方メートル以上の工事です。都道府県が条例で基準を広げていることがあるので、窓口で確かめましょう。
- 石綿の調査は省けますか?
- 省けません。大気汚染防止法で元請の業者の義務とされ、発注者は費用を適正に負担するなど協力する義務があります。
- 滅失登記をしないとどうなりますか?
- 建物がなくなった日から1か月以内の申請が義務で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。登記が残ると、売るときにも手間が増えます。
- 解体すると固定資産税は上がりますか?
- 住宅が建っている土地の特例が使えなくなり、上がることがあります。税額は1月1日の状態で決まるので、壊す時期もあわせて考えましょう。
壊したあとの使い方を考えるときに
建物を残して売る方法は「古家付き土地の売却」、空き家の使い道の比べ方は「空き家の活用方法の比較」で説明しています。土地の売却を手がける会社は売買の会社の一覧から探せます。
壊すか、残して売るか迷うときは、一括相談の使い方をご覧のうえ、まとめて相談してみてください。
まとめ
- 解体は、業者選び、石綿の調査、届出、工事、滅失登記の順に進む
- 80平方メートル以上の解体は、発注者が着手の7日前までに届け出る
- 石綿の事前調査は元請の業者の義務で、発注者は協力する
- 建物がなくなった日から1か月以内に滅失登記を申請する
- 固定資産税は1月1日の状態で決まり、壊すと特例が使えなくなる




