シェアハウスの定期借家契約とは?普通借家との違い・手続き・生活ルール

シェアハウスでは、期間が終われば更新されずに終わる定期借家契約が多く使われます。普通借家との違い、契約の手続きと通知の期限、トラブルを防ぐ生活ルールの作り方をまとめました。
結論
- シェアハウスでは、期間が終われば更新されずに終わる「定期借家契約」が多く使われます。
- 定期借家は書面で契約し、契約の前に「更新がない」ことを別の書面で説明しないと、更新がない定めは無効になります。
- 期間が1年以上なら、満了の1年前から6か月前までに、契約が終わることを入居者に通知します。
- トラブルを防ぐには、契約の形、生活ルール、入居前の面談の3つをそろえることが基本です。
シェアハウスは、他人どうしが台所や浴室を共有する住まいです。騒音、共用部分の汚れ、無断の来客、ごみの放置など、普通の賃貸より入居者どうしのトラブルが起きやすい面があります。
「ルールを守らない入居者がいたら、どうすればよいのか」。オーナーにとって大きな不安です。こうしたトラブルは、契約の形と生活ルールを最初に整えておくことで、かなり防ぎやすくなります。
この記事では、借地借家法の条文と国土交通省のシェアハウスガイドブックをもとに、定期借家契約の使い方とルールづくりを整理します。
定期借家契約とは
定期借家契約とは、契約の期間が終われば更新されずに終わる建物の賃貸借です。借地借家法38条で決められていて、「定期建物賃貸借」とも呼ばれます。
ガイドブックでは、入居者との契約には普通の建物賃貸借と定期建物賃貸借の2種類があり、シェアハウスでは定期建物賃貸借が多く使われていると説明しています。
普通借家と定期借家の違い
| 比べる点 | 普通借家 | 定期借家 |
|---|---|---|
| 契約の方法 | 合意で成立(実務では契約書を使う) | 書面に限る。事前に別の書面で説明が要る |
| 更新 | 正当な理由がない限り更新される | 期間が満了すれば終わる(再契約はできる) |
| 1年未満の契約 | 期間の定めがないものとみなされる | できる |
| 賃料の特約 | 増額しない特約は有効、減額しない特約は無効 | 増額しない・減額しない特約のどちらも有効 |
| 入居者からの中途解約 | 特約があればそれに従う | 200㎡未満の住まいでやむを得ない事情があればできる |
定期借家契約の手続き
借地借家法では、次の順番で手続きをします。
- 契約の期間を決める(1年未満でもよい)
- 契約の前に、「更新がなく、期間の満了で終わる」ことを書いた書面を渡して説明する
- 契約書に、更新がないことをはっきり書いて契約を結ぶ
- 期間が1年以上なら、満了の1年前から6か月前までに、期間の満了で終わることを通知する
- お互いが望めば、新しく再契約を結ぶ
契約は書面に限られますが、内容を記録した電子データで契約した場合も書面とみなされます。事前説明の書面も、入居者の承諾を得れば電子データで渡せます。
契約前の説明をしなかった場合、更新がないという定めは無効になります。普通借家と同じ扱いになるため、説明書面は必ず用意しましょう。
通知が遅れたとき
1年前から6か月前までの通知を忘れると、期間の満了で終わることを入居者に主張できません。ただし、その後に通知をすれば、通知の日から6か月が過ぎたあとは主張できます。
入居者からの中途解約
床面積200㎡未満の住まいでは、転勤、療養、親族の介護などやむを得ない事情があれば、入居者は特約がなくても解約を申し入れられます。申し入れの日から1か月で契約は終わります。これを入居者に不利に変える特約は無効です。
賃料の特約
定期借家で賃料の改定について特約を決めた場合は、賃料の増減を求める借地借家法の規定は適用されません。「一定期間は賃料を変えない」などの特約を決めやすい形です。
普通借家と定期借家の選び方
- 共同生活の秩序を重く見るなら、定期借家
- 長く住んでもらうことを重く見るなら、普通借家も選べる。ただし更新を断るには正当な理由が要る
- 定期借家でも、問題のない入居者とは再契約して住み続けてもらえる
- 期間を短くしすぎると再契約の手続きが増えるため、運営の手間と合わせて期間を決める
再契約の進め方
再契約は、前の契約の続きではなく、新しい契約です。そのため、定期借家として再契約する場合も、あらためて事前説明の書面を渡し、契約書を交わします。
家賃や生活ルールを見直したいときは、再契約の前に入居者へ伝えておくと話し合いがしやすくなります。問題のない入居者には、早めに再契約の意向を確かめておくと、急な空室も防ぎやすくなります。
シェアハウスで定期借家が使われる理由
ほかの入居者に迷惑をかけ続ける人がいても、普通借家では、貸主の側から契約を終わらせるのは簡単ではありません。更新を断るには正当な理由が必要だからです。
ガイドブックは、共同生活の秩序を大きく乱し、住み続けることが難しいと判断されるケースでは、定期借家なら契約の条件にもとづき再契約しないなどの対応が考えられるとしています。
ポイント
- 定期借家は期間が満了すれば終わり、再契約するかを選べる
- 契約前の説明書面がないと、更新がない定めは無効になる
- 1年以上の契約は、満了の1年前から6か月前までに通知する
- 入居者のやむを得ない事情による中途解約は、特約がなくても認められる
入居前の面談でトラブルを減らす
ガイドブックでは、内覧や面談のときに、入居の動機、ほかのシェアハウスに住んだ経験、仕事や生活のリズムなどを確かめることが大切だとしています。入居後の暮らし方や生活ルールを具体的に伝え、お互いの理解を深めてから契約します。
申し込みの段階では、本人確認書類(免許証の写し、外国人の場合は在留カードなど)や、必要に応じて連帯保証人の同意書、所得証明などを用意してもらいます。このとき契約条件を前もって説明し、生活ルールを読み合わせておくと、トラブルの予防に役立ちます。
生活ルールの作り方
ガイドブックでは、生活ルールの例として次の項目を挙げています。
- ごみ出しと共用部分の清掃、その役割分担
- テレビの音量や話し声など生活音への配慮、共用部分を使える時間帯
- 共用部分に私物を置かないこと、設備を長く占有しないこと
- 来客や宿泊(よいか、時間帯、追加料金)、ペットの飼育
- 玄関や個室の施錠、喫煙、石油ストーブなど火気の使用
- 火災など災害時の対応と緊急連絡先
ルールを契約に結びつける
ガイドブックは、国土交通省の「定期賃貸住宅標準契約書」などを使ったうえで、シェアハウス向けの特約を加えることを勧めています。例えば「別紙の生活ルールを守らなければならない」「入居者どうしのトラブルは当事者間で解決する」といった特約です。契約書の頭書きには、専用部分と共用部分をそれぞれ書いておきます。
敷金・礼金・共益費の決め方
ガイドブックによると、家賃と共益費以外のお金(敷金・デポジット、礼金)や、連帯保証人・保証会社の要否には決まった扱いがなく、運営会社や物件ごとに違います。共益費には、共用部分の消耗品の購入と補充、共用部分と個室の水道光熱費などをまとめて含めるのが一般的です。何を共益費に含めるかは、契約書にはっきり書いておきましょう。
共用部分の原状回復も決めておく
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、シェアハウスの共用部分の原状回復の考え方は示していません。共用部分の傷や汚れは誰の責任か分かりにくいため、補修の扱いを契約書で別に決めておくと、退去時のもめごとを防ぎやすくなります。
たとえば、夜遅い来客が続いたDさんの物件の場合
たとえば、Dさんのシェアハウスで、ある入居者の夜遅い来客が続き、ほかの入居者から苦情が出たとします。生活ルールには来客の時間帯を書いていましたが、本人は「知らなかった」と言いました。
入居前にルールを読み合わせた記録は、残っていませんでした。Dさんはその後、面談でルールを読み合わせ、入居者に確認の署名をもらうようにしました。
トラブルが起きたときの流れ
ガイドブックでは、入居者どうしのトラブルは、まず生活ルールにもとづいて当事者で解決し、難しい場合にオーナーや運営会社が対応する流れが示されています。
- 生活ルールにもとづき、当事者どうしで話し合う
- 解決しなければ、オーナーや運営会社が注意の呼びかけや個別の面談をする
- ルール違反が続く場合は、契約の条件に沿って対応する
- 共同生活が難しい場合は、定期借家なら再契約をしない
| よくあるトラブル | 主な備え |
|---|---|
| 家賃の滞納 | 連帯保証人、家賃債務保証会社の利用 |
| 無断の又貸し・民泊としての利用・友人の同居 | 定期借家の活用、ルールの事前説明、遵守の特約 |
| 騒音・無断の来客・共用部分の汚れ | 生活ルールの設定と事前説明、清掃の分担 |
| 火災や急な体調の変化 | 避難経路の周知、緊急連絡先の設定 |
定期借家でよくある失敗と避け方
契約書だけで説明をすませる
更新がないことの説明は、契約書とは別の書面で行います。契約書に書いてあるだけでは足りないため、説明の書面を独立して用意しましょう。
終了の通知を忘れる
期間が1年以上の契約には、通知をする期間があります。入居者ごとに満了日と通知の時期を一覧にし、管理の担当者と共有しておきます。
ルールを口頭だけで伝える
口頭だけでは、言った・言わないの争いになりがちです。ルールは書面にし、契約書の特約で守ることを約束してもらいます。
契約の前に確かめるチェックリスト
- 契約書に「更新がない」ことを書いたか
- 契約書とは別に、事前説明の書面を用意したか
- 契約期間と、終了の通知をする時期を決めたか
- 生活ルールを別紙にし、守ることを特約にしたか
- 共益費に含めるもの、敷金や保証の扱いを書いたか
- 共用部分の原状回復の扱いを決めたか
よくある質問
- シェアハウスは定期借家でないと運営できませんか?
- 普通借家でも運営できます。ただ、共同生活の秩序を保つために、更新のない定期借家が多く使われています。
- 定期借家は1年未満の契約でもよいですか?
- よいです。普通借家では1年未満の期間は期間の定めがないものとみなされますが、定期借家ではその扱いになりません。
- 定期借家の入居者は途中で解約できますか?
- 200㎡未満の住まいで、転勤や療養などやむを得ない事情があれば、申し入れから1か月で解約できます。それ以外は契約の中途解約の定めによります。
- ルールを守らない入居者と再契約しないことはできますか?
- 定期借家なら、期間の満了で契約は終わるため、再契約しない対応がとれます。期間1年以上の場合は、決められた期間内の通知を忘れないようにしましょう。
- 定期借家は電子契約でもよいですか?
- 契約の内容を記録した電子データによる契約は、書面による契約とみなされます。事前説明の書面も、入居者の承諾があれば電子データで渡せます。
- 定期借家の再契約で、家賃を変えられますか?
- 再契約は新しい契約のため、家賃などの条件はあらためて話し合って決めます。入居者が条件に応じなければ、再契約は成立しません。
運営を任せる会社の比べ方は「シェアハウス運営会社の選び方」、建物の決まりは「シェアハウスの用途変更とは?」で解説しています。シェアハウスを扱う会社はシェアハウスの不動産会社一覧で探せます。
まとめ
- シェアハウスでは、期間満了で終わる定期借家契約が多く使われる
- 定期借家は書面で契約し、契約前に別の書面で更新がないことを説明する
- 1年以上の契約は、満了の1年前から6か月前までに終了を通知する
- 生活ルールは特約で契約に結びつけ、入居前に読み合わせる
- トラブルは当事者の話し合いから始め、続く場合は契約に沿って対応する




