リースバックのデメリットと注意点|国交省ガイドブックで確かめる仕組み

リースバックは、自宅を売って現金を得たあとも、家賃を払って住み続けられる仕組みです。この記事では、国土交通省のガイドブックをもとに、仕組みとデメリット、契約前に確かめたい点を説明します。
結論
- リースバックとは、住宅を売って現金を得て、売却後は毎月家賃を払って同じ家に住み続ける仕組みです。
- デメリットは、毎月の家賃がかかること、家が自分の物でなくなること、契約によっては望む期間住めないこと、買い戻しの条件に注意が要ることです。
- 国土交通省のガイドブックは、家賃を払い続けられるかの計算と、複数の会社への相談をすすめています。
「老後の資金が心配。でも住み慣れた家は離れたくない」。そんなときに知られるようになったのが、リースバックです。
便利に見える一方で、契約したあとに「思っていた話と違う」という相談も増えています。この記事では、国土交通省が令和4年6月に公表した「住宅のリースバックに関するガイドブック」をもとに、仕組みと注意点を整理します。
リースバックの仕組み
リースバックとは
国土交通省のガイドブックは、リースバックを次のように定義しています。住宅を売却して現金を得て、売却後は毎月賃料を支払うことで、住んでいた住宅に引き続き住むサービスです。
お金と契約の流れ
リースバックでは、売買契約と賃貸借契約の2つを結びます。
- 自宅を事業者に売る(売買契約)
- 事業者から代金を一括で受け取る
- 同じ家を事業者から借りる(賃貸借契約)
- 毎月、家賃を払って住み続ける
- 退去したあとは、事業者が家を売るなどして処分する
ポイント
- リースバックは「売る契約」と「借りる契約」の組み合わせ
- 売ったあとは、自分は持ち主ではなく借りる人になる
- 借りる契約の中身で、住み続けられる期間が決まる
リースバックのメリットとデメリット
国土交通省のガイドブックは、リースバックの主な特徴を4つにまとめています。表で整理します。
| 特徴 | よい面 | 気をつけたい面 |
|---|---|---|
| まとまった資金 | 住み続けながら一括で資金を受け取れる | 通常の売却や融資などと比べて検討することが大切 |
| お金の負担 | 固定資産税などの負担は不要になる | 毎月の家賃の支払いが生じる |
| 住まいの自由 | 引っ越さずに暮らしを続けられる | 設備を自由に変えたり付けたりできない。契約によっては望む期間住めない |
| 買い戻し | 条件次第で買い戻せることもある | 買い戻しの条件や価格に注意が要る |
いちばんのデメリットは「住み続けられる保証がない」こと
借りる契約の種類によっては、望む期間住み続けられないことがあります。2026年10月に国土交通省が出したガイドラインでも、賃貸借が普通借家か定期借家かは、相手に伝えるべき大切な事項とされています。
定期借家は、決めた期間が終わると更新されずに終わる契約です(借地借家法38条)。再契約には貸主との合意が要ります。「ずっと住める」と思い込まず、契約書で確かめましょう。
ほかの方法との違い
ガイドブックは、通常の売却や融資などとも比べて検討するようすすめています。主な違いを整理します。
| 方法 | 住まい | 家の持ち主 | 毎月の負担 |
|---|---|---|---|
| リースバック | 同じ家に住み続ける | 事業者に移る | 家賃 |
| 通常の売却 | 引っ越しが必要 | 買主に移る | 新しい住まいの費用 |
| 家を担保にした融資 | 同じ家に住み続ける | 自分のまま | 返済の条件は金融機関による |
どれが合うかは、必要な金額、住みたい期間、家族の考えで変わります。一つの会社の話だけで決めないことが大切です。
リースバックが合う人・合わない人の分かれ道
- 引っ越しは避けたいが、まとまった資金がすぐ要るなら、リースバックを候補に入れて比べる
- 長く住み続けたいなら、家賃の合計と住める期間の条件を特に慎重に確かめる
- 住み替えてもよいなら、通常の売却の方が手元に残る金額を比べやすい
- 家を手放したくない気持ちが強いなら、家を担保にした融資なども含めて比べる
リースバックは、「住み続けたい」と「資金が要る」の両方があるときに検討される方法です。どちらか一方だけなら、ほかの方法の方が合うこともあります。
国交省ガイドブックが示すトラブルの例
ガイドブックは、次のようなトラブルの例を挙げています。
- 強引な勧誘で契約し、あとで解約を申し出たら高額な違約金を求められた
- 支払った家賃の合計が、数年で売却価格を超えることに後から気づいた
- 市場での取引価格より著しく低い代金で売ってしまった
- 最初に聞いた話と実際の賃貸の条件が違い、住み続けられなくなった
ガイドライン(2026年10月)の脚注では、全国の消費生活センター等へのリースバックの相談件数を示しています。令和4年度116件、令和5年度227件、令和6年度242件、令和7年度214件です。
「今日決めてくれれば」と急がせる勧誘には応じないでください。契約するかを判断する時間を与えないことは、宅地建物取引業法47条の2で禁じられている行為の一つです。
契約前に確かめたい7つのポイント
ガイドブックが示す「利用する際のポイント」を、確かめる順に並べます。
- 複数の不動産会社や金融機関に相談し、通常の売却や融資なども含めて比べる
- 営業の話をうのみにせず、契約の条件と中身を理解し、家族や親族と相談して決める
- 住み続けたい期間、毎月の家賃を払い続けられるかを一度計算する
- 提示された売却価格について、複数の事業者の意見を聞く
- 買い戻しを考えるなら、「いつまでに」「いくらで」などの条件を契約前に確かめる
- 望む期間住み続けられるか、更新や再契約の条件を契約書で確かめる
- 住んでいる間に設備が壊れたとき、修繕費を払うのは自分か事業者か、新しい設備を付けられるかを確かめる
例:老後の資金のために検討する場合
たとえば、子が独立し、夫婦2人で持ち家に住んでいるとします。老後の資金に備えたいが、引っ越しはしたくない。こうした場合にリースバックが候補に挙がります。
まず、通常の売却や融資の場合と比べてみます。次に、家族と一緒に契約書の案を読み、住める期間と家賃の見直しの条件を確かめます。
家賃の合計を計算してみる
たとえば、住み続けたい年数に毎月の家賃と12か月を掛けると、払う家賃の合計が分かります。これを受け取る売却代金と比べてみてください。住む期間が長いほど、家賃の合計は大きくなります。
あわせて、収入が年金などに変わったあとも払えるかを考えます。家賃が見直される条件があるなら、上がった場合の合計も計算しておきましょう。
リースバックでよくある失敗と避け方
1社の話だけで決めてしまった
最初に話を聞いた会社の提示だけで、その場で決めてしまう例です。売却価格や家賃が妥当か、比べるものがないまま判断することになります。ガイドブックのすすめどおり、複数の会社に相談し、通常の売却とも比べましょう。
借りる契約の中身を読まずに署名した
売却価格ばかりに目が向き、賃貸の契約期間や更新の条件を確かめない例です。定期借家なら、期間が終わると更新されません。売る契約と借りる契約の両方を、同じ重みで読みましょう。
家族に知らせずに契約した
本人だけで決め、あとから家族が知って驚く例です。相続のときに家が残らないことなど、家族にも関わる話です。契約書の案は、家族と一緒に読む時間を取りましょう。
家族が遠くに住んでいる場合は、書面の写しを送って意見を聞く方法もあります。急がされても、家族の返事を待ってから決めて構いません。
事業者に書面でもらいたいもの
- 売買契約書と賃貸借契約書の案
- 家賃の額と、見直しの条件が分かる書面
- 契約期間と、更新・再契約の条件が分かる書面
- 修繕費用の負担の分け方が分かる書面
- 買い戻しの特約があるなら、その期限と価格の決め方
- 売却代金と家賃の算定の根拠の説明
書面で受け取れば、家族や専門家に見てもらえます。口頭の説明だけで判断しないことが、いちばんの備えです。
契約したあとで困ったとき
説明と違う、解約で高い違約金を求められたなど、契約のあとで困ることもあります。そのときは一人で抱えず、消費生活センターなどの公的な相談窓口に早めに相談しましょう。ガイドラインが示すとおり、相談は各地のセンターに寄せられています。契約書や受け取った書面、やり取りのメモを持って行くと、話が早く進みます。
2026年10月のガイドラインで変わったこと
国土交通省は「住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」を定め、令和8年10月1日から施行しました。リースバックを扱う宅地建物取引業者に向けたものです。
事業者が伝えるべき事項
ガイドラインは、売買の中身だけでなく、借りる契約の中身も、売主の判断に大きく影響する事項だとしています。故意に伝えないと、宅地建物取引業法47条1号に触れるとしています。主な事項は次のとおりです。
- 家賃の額と、払う時期・方法
- 契約期間と更新に関する事項(定期借家かどうかを含む)
- 契約の解除、違約金に関する事項
- 修繕費用の負担の分け方
- 事業者が家を第三者に売る可能性と、その場合の賃貸への影響
- 買い戻しの特約の有無と中身
事業者に聞いてみたいこと
ガイドラインは、売却代金と家賃の算定の根拠や、売却代金が家賃の何か月分に当たるかを説明することが望ましいとしています。説明がなければ、こちらから聞いてみましょう。
ガイドラインは、伝える事項を書いた書面を渡すことも望ましいとしています。書面で受け取っておくと、家族と相談するときにも役立ちます。
よくある質問
- リースバックをすると、ずっと住み続けられますか?
- 契約の種類と条件しだいです。定期借家の場合は期間が終わると更新されず、再契約には貸主との合意が要ります。
- リースバックの売却価格は相場より安くなりますか?
- 会社や物件によって違います。ガイドブックは、提示された価格について複数の事業者の意見を聞くことをすすめています。
- リースバックで売った家は買い戻せますか?
- 契約で買い戻しの特約がある場合に限られます。いつまでに、いくらで買い戻せるかを契約前に確かめましょう。
- リースバック後の固定資産税は誰が払いますか?
- 家の持ち主が事業者になるため、ガイドブックでは固定資産税などの負担は不要になるとしています。代わりに家賃がかかります。
- 契約を急かされたら断ってもいいですか?
- 断って構いません。判断に必要な時間を与えないことや、断ったあとも勧誘を続けることは、宅地建物取引業法47条の2で禁じられています。
- 家族に相談せずにリースバックを決めてもいいですか?
- ガイドブックは、家族や親族と相談して決めることをすすめています。相続にも関わるので、契約書の案を一緒に読んでおきましょう。
リースバック以外の選択肢も比べる
自宅を資金に変える方法は、リースバックだけではありません。ふつうに売る、住み替える、融資を使うといった方法もあります。
売買の会社の一覧から複数の会社に相談し、条件を比べてみてください。すぐ現金にする方法としては買取の流れ、価格の見方は査定の種類、税金は売却の税金で説明しています。まとめて聞きたい方は一括相談の説明をご覧ください。
まとめ
- リースバックは、家を売って現金を得たあと、家賃を払って住み続ける仕組み
- デメリットは家賃の負担、住まいの自由の制限、住める期間、買い戻しの条件
- 住み続けたい期間の家賃の合計を、売却代金と比べて計算する
- 賃貸が普通借家か定期借家か、更新や再契約の条件を契約書で確かめる
- 複数の会社に相談し、通常の売却や融資とも比べて決める




