特定空家とは?4つの状態と判断の基準、助言・指導から代執行までの流れ

特定空家とは、放置すると周りに大きな悪影響を与えると市区町村が認めた空き家です。空家法の定義と国土交通省のガイドラインをもとに、判断の基準と措置の流れ、指定を避けるためにできることを説明します。
結論
- 特定空家とは、空家法第2条第2項に定める「そのまま放置すると周りの生活環境に大きな悪影響を与える状態」の空き家です。
- 状態は「保安上危険」「衛生上有害」「景観を損なう」「周りの生活環境に不適切」の4つで、市区町村が国土交通省のガイドラインを参考に総合的に判断します。
- 措置は、助言・指導→勧告→命令→代執行の順に進みます。勧告で住宅用地特例が外れ、命令違反は50万円以下の過料です。
- 助言や指導の段階で直せば、勧告より先には進みません。
「市役所から、空き家のことで通知が来た」「近所の人に、特定空家になるよと言われた」。そんなとき、まず知りたいのは「特定空家とは何で、何をされるのか」でしょう。
特定空家は、ある日突然決まるものではありません。法律とガイドラインで、判断の考え方と手続きの順番が決められています。
この記事では、定義、判断の基準、措置の流れを順に整理します。持ち主として、どの段階で何ができるかも説明します。
特定空家とは
法律の定義
空家法第2条第2項では、特定空家等を次のいずれかの状態にあると認められる空き家と定めています。
- そのまま放置すれば倒壊など著しく保安上危険となるおそれのある状態
- そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われず、著しく景観を損なっている状態
- その他、周りの生活環境を守るために放置するのが不適切な状態
空き家・管理不全空家との違い
空き家(空家等)とは、おおむね年間を通して使われていないなど、使われないことが常態になっている建物とその敷地です。
管理不全空家は、そのままにすると特定空家になるおそれがある空き家で、特定空家の一歩手前にあたります。特定空家は、周りへの悪影響がさらに大きく、危険などの差し迫り方も高い状態です。
| 区分 | 根拠 | 市区町村の措置 |
|---|---|---|
| 管理不全空家 | 空家法第13条 | 指導、勧告 |
| 特定空家 | 空家法第22条 | 助言・指導、勧告、命令、代執行 |
特定空家の判断基準(国土交通省ガイドライン)
4つの状態の例
国土交通省のガイドラインは、状態ごとに、特定空家と管理不全空家の例を並べています。主な例は次のとおりです。
| 状態 | 特定空家の例 | 管理不全空家の例 |
|---|---|---|
| 保安上危険 | 倒壊のおそれがあるほどの建物の傾き、屋根材や外装材のはがれ落ち | 構造部材の破損・腐朽、屋根材などの破損 |
| 衛生上有害 | 排水設備からの汚水の流出、害虫の大量発生 | 排水設備の破損、腐ったごみや水たまりが続く |
| 景観悪化 | 屋根や外壁の著しい色あせ・破損・汚れ | 補修がされていない破損や汚れ |
| 生活環境 | 不法侵入の形跡、通行をさまたげる枝のはみ出し | 窓や戸の破損、剪定されない枝のはみ出し |
3つの判断の考え方
ガイドラインでは、状態の例に当てはまるかに加えて、次の点を合わせて判断するとされています。
- 周りの状況:倒れたり落ちたりしたとき、その範囲に隣の家や通行人がいるか
- 空き家の状況:悪影響の大きさが、世の中の常識で許される範囲を超えるか
- 危険の切迫性:特定空家は、管理不全空家より危険などが差し迫っているか
たとえば、密集した住宅地や人通りの多い道沿いにある空き家は、必要性が高いと判断されやすくなります。周りに家や道がない場所なら、必要性は低いと考えられています。
判断はだれがするか
判断するのは市区町村です。ガイドラインは参考の基準で、地域の事情も考えて総合的に判断するとされています。雪の多い地域や、景観のルールがある地区では、早めに措置が必要とされることもあります。
ポイント
- 特定空家かどうかは、市区町村がガイドラインを参考に総合的に判断する
- 見られるのは「建物の状態」「周りに被害が及ぶか」「危険の差し迫り方」
- 同じ傷みでも、場所によって判断が変わることがある
特定空家に対する措置の流れ
措置は順番に進む
ガイドラインでは、特定空家への措置は、助言・指導、勧告、命令、代執行の順を経て行う必要があるとされています。
- 調査:市区町村が持ち主を調べ、必要に応じて立入調査をする。立ち入る5日前までに持ち主へ通知する
- 助言・指導:修繕や伐採など、必要な対応をお願いされる
- 勧告:改善されないと、相当の猶予期限をつけて書面で勧告される。この時点で住宅用地特例が外れる
- 命令:正当な理由なく勧告に従わず、特に必要があると認められると命令が出る。命令の前に意見書を出す機会がある
- 代執行:命令に従わないと、市区町村が取り壊しなどを行い、かかった費用を持ち主から徴収する
立入調査とは
立入調査とは、市区町村の職員などが空き家の敷地に入り、状態を確かめることです。空家法第9条では、立ち入る5日前までに持ち主へ通知することとされています(通知が難しい場合を除く)。調査する人は身分を示す証明書を持ち、求められれば見せなければなりません。
調査の通知が来たら、立ち会いができるか窓口に相談しましょう。家の事情を直接伝えられる機会にもなります。
管理不全空家から特定空家に進んだとき
管理不全空家として指導や勧告を受けたあと、状態が悪くなって特定空家になった場合も、特定空家としての措置は助言・指導からやり直すとされています。ただし、管理不全空家として受けた勧告は、撤回されない限り効力が続き、住宅用地特例も外れたままです。
言葉の言い換え
- 助言・指導:「直してください」というお願い
- 勧告:正式な改善の求め。税の軽減が外れる
- 命令:従う義務が生じる処分。違反すると50万円以下の過料
- 代執行:持ち主の代わりに市区町村が行い、費用を請求すること
例外となる2つの代執行
持ち主が見つからないときは、事前の公告をしたうえで行う略式代執行があります。また、災害などで危険が差し迫り、命令を出すいとまがないときは、命令を経ずに行う緊急代執行も認められています。
命令が出ると、標識の設置などでその旨が公示されます。立入調査を拒んだ場合も、20万円以下の過料の定めがあります。
特定空家に指定されたらどうなる?
税と費用への影響
勧告を受けると、その敷地は固定資産税などの住宅用地特例の対象から外れます。代執行の費用は、作業員の賃金や資材費など実際にかかった額で、国税の滞納処分の例により強制的に徴収されることがあります。
相続や売却で持ち主が変わったとき
ガイドラインでは、相続や売買で持ち主が変わると、新しい持ち主には改めて助言・指導から手続きを行うとされています。ただし、勧告や命令を知って引き継いだ場合は、猶予期限が短くなることもありえます。
場面の例
Bさんの実家は、屋根の一部がはがれ、裏庭の木が隣家側へ傾いていました。市から助言の通知が届いたBさんは、すぐ窓口に連絡し、修理の時期を伝えました。屋根を直し、木を切った写真を送ったことで、勧告には進みませんでした。
通知は「終わり」ではなく「直すための合図」です。黙っていることが、いちばん状況を悪くします。
直したあとの扱い
ガイドラインでは、求められた措置が行われたと確認されると、その建物は特定空家ではなくなるとされています。勧告や命令は撤回され、住宅用地特例の要件を満たす敷地は、再び特例の対象になります。
市区町村によっては、措置が終わったことの届出を受け、その写しを返すなどして、特定空家でなくなったことを示す扱いも考えられるとされています。直した日付と内容は、写真と一緒に残しておきましょう。
持ち主が複数いるとき
相続で共有になっている空き家は、市区町村が把握している持ち主全員に勧告が行われます。だれか一人が動かないと、全員が影響を受けることになります。共有者で窓口役を決め、費用の分け方も話し合っておくと動きやすくなります。
特定空家にしないためにできること
指定を避ける管理
ガイドラインは、特定空家の状態にならないための管理の例も示しています。一定の頻度で屋根材、排水設備、立木を点検し、補修や伐採をすることです。
遠方で通えない場合は、空き家の見回りを任せる方法があります。市区町村によっては、空家法にもとづく空家等管理活用支援法人を指定し、持ち主の相談に乗ったり、委託を受けて見回りをしたりする仕組みを設けています。お住まいの市区町村の案内で確かめましょう。
場所ごとの手入れの目安
| 場所 | 見るところ | 手入れの例 |
|---|---|---|
| 屋根・外壁 | はがれ、ずれ、ひび | 部分的な補修、固定 |
| 排水設備 | 破損、においの発生 | 修理、通水 |
| 庭木 | 傾き、腐朽、はみ出し | 剪定、伐採 |
| 窓・戸 | 割れ、鍵の不具合 | 交換、板でふさぐ |
通知が届いたときの対応
- 通知を開き、求められている内容と期限を確かめる
- 市区町村の窓口に連絡し、直す予定を伝える
- 修理や伐採を手配し、終わったら写真で報告する
- 直すのに時間がかかるなら、理由と予定を説明する
よくある失敗
- 通知を放っておき、勧告まで進んでしまう
- 屋根だけ直し、指摘された庭木をそのままにする
- 相続人どうしで押し付け合い、だれも窓口に連絡しない
自分の空き家を確かめるチェックリスト
ガイドラインの例をもとに、外から見て確かめられる点をまとめました。当てはまる項目が多いほど、早めの手当てが必要です。
- 屋根材や外壁に、はがれや浮き、ずれがある
- 雨どい、手すり、看板などが外れかけている
- ブロック塀や門、擁壁にひびや傾きがある
- 窓ガラスが割れている、戸が閉まらない
- 庭木の枝が、隣の敷地や道路にはみ出している
- ごみや水たまりがあり、においや虫が出ている
- 動物がすみついている形跡がある
- 雪の多い地域で、雪下ろしや雪止めの手入れをしていない
直すか、手放すかの分かれ道
傷みが一部なら、修理と手入れで指定を避けられることが多いはずです。傷みが建物全体に及び、直しても使う予定がないなら、売る・取り壊すも含めて考えます。直す費用と、その後に使う見込みを並べて比べると、判断しやすくなります。
よくある質問
- 特定空家とは何ですか?
- 放置すると倒壊や衛生上の害など、周りの生活環境に大きな悪影響を与えると市区町村が認めた空き家です。空家法第2条第2項に定められています。
- 特定空家に指定されると固定資産税はどうなりますか?
- 勧告を受けると、土地の住宅用地特例が外れます。指定や助言・指導の段階では、まだ外れません。
- 特定空家に罰則はありますか?
- 命令に違反すると50万円以下の過料、立入調査を拒むと20万円以下の過料の定めがあります。
- 特定空家と管理不全空家の違いは何ですか?
- 管理不全空家は特定空家になるおそれがある一歩手前の段階です。措置は指導と勧告までで、命令や代執行はありません。
- 特定空家の指定は解除できますか?
- 求められた措置を行ったと確認されれば、特定空家ではなくなり、勧告や命令は撤回されます。直したら窓口に連絡しましょう。
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勧告で税が外れる仕組みは「管理不全空家と固定資産税」、取り壊しの補助は「空き家の解体と補助金」、見回りの方法は「空き家の管理方法」をご覧ください。売却の相談先は売買の会社、地域の会社は会社一覧から探せます。まとめて相談したい方は一括相談をご利用ください。
まとめ
- 特定空家とは、放置すると周りに大きな悪影響を与える状態の空き家です
- 状態は保安上危険・衛生上有害・景観悪化・生活環境の4つです
- 市区町村がガイドラインを参考に、場所や危険の差し迫り方も見て判断します
- 措置は助言・指導→勧告→命令→代執行の順に進みます
- 勧告で住宅用地特例が外れ、命令違反は50万円以下の過料です
- 通知が来たら放置せず、窓口に連絡して直す予定を伝えましょう




