シェアハウスを女性専用にするには?決める前の考え方と防犯・ルールの整え方

シェアハウスを女性専用にするかどうかを決める前の考え方と、女性専用にしたときに整えたい防犯とルールを整理します。国の防犯の設計指針や、防犯カメラの扱いもあわせて説明します。
結論
- シェアハウスを女性専用にするかどうかは、物件の立地や間取り、運営の体制を見て決める運営方針の1つです。
- 女性専用にするなら、入居者が安心できる仕組みとして、鍵と窓の防犯、来客と立ち入りのルール、防犯カメラの扱いの3つを整えます。
- 国土交通省の「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針」は、見通し・帰属意識・接近の制御・破られにくさの4つの原則を示しており、改修の考え方の参考になります。
「女性専用にしたほうが、入居者が集まりやすいのではないか」。シェアハウスへの転用を考えるオーナーから、よく出る相談です。
ただ、女性専用は、看板を掲げるだけでは成り立ちません。入居者が求めるのは「女性だけ」という条件より、その条件が守られ、安心して暮らせることです。仕組みが伴わないと、かえって不満やトラブルのもとになります。
この記事では、女性専用にするかどうかの考え方と、女性専用にしたときに整える防犯とルールを順番に説明します。
シェアハウスの女性専用とは
シェアハウスの女性専用とは、入居者を女性に限って募集し、運営するシェアハウスのことです。建物の構造や法律上の用途が変わるわけではなく、募集と運営の条件の1つです。
女性専用・男女共用・フロア分けの違い
| 形 | 中身 | 向く場面 |
|---|---|---|
| 女性専用 | 入居者を女性に限る | 浴室や洗面所の共用が多い間取り |
| 男女共用 | 性別を問わず募集する | 部屋数が多く、募集の幅を広げたいとき |
| フロア・区画分け | 階や区画ごとに分ける | 水回りが階ごとに分かれている建物 |
女性専用にするか決める前の考え方
女性専用にするかどうかは、次の点を見て決めます。
判断の分かれ道
- 間取り:浴室・洗面所・トイレが1か所に集まっているなら、女性専用のほうが入居者の気兼ねが少ない
- 立地:駅からの道の明るさや人通りは、入居者が気にする点。夜の様子も見ておく
- 部屋数:部屋が少ないと、入居者の条件を絞っても運営への影響は小さいことがある
- 運営の体制:ルールが守られているかを見回り、問い合わせにすぐ応える体制があるか
募集の幅との関係
入居者を女性に限ると、募集の対象は狭くなります。その分、空室の期間が長くなることもあります。女性専用にすると家賃を高くできる、と言える公的な統計は見当たりません。地域や物件によって違うため、運営会社と募集状況を見て判断しましょう。
サブリースで任せる場合
サブリースで任せる場合は、会社が入居者と契約します。国土交通省の特定賃貸借標準契約書では、会社が入居者と結ぶ契約の条件として、どのような入居者に貸すかを決めておく欄があり、例として「学生限定」が挙げられています。女性専用にしたいなら、この欄で条件として決めておきましょう。
女性専用で整えたい防犯の考え方
国の設計指針の4つの原則
国土交通省の「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針」は、防犯の考え方として次の4つの原則を示しています。指針は共同住宅を対象にしたもので、所有者に義務を負わせるものではありません。戸建てのシェアハウスでも、改修の考え方として参考になります。
- 周りからの見通しを確保する(監視性の確保)
- 住む人の帰属意識を高め、コミュニティ形成を促す(領域性の強化)
- 侵入しようとする人の動きを限り、近づきにくくする(接近の制御)
- 扉や窓などを破られにくくする(被害対象の強化・回避)
鍵と窓の対策
指針では、地面に接する階などの住戸の玄関扉に、破壊やピッキングが難しい錠を付けるとしています。窓には、補助錠や面格子など、侵入を防ぐのに有効な措置をとるとしています。
シェアハウスでは、建物の玄関に加えて、各部屋の扉にも鍵を付けるのが基本です。入居者が入れ替わるたびに、鍵をどう扱うかも決めておきます。
見通しと明かり
玄関の周りや庭に、植木や物置で死角ができていないかを確かめます。夜に玄関の周りが暗いなら、照明を見直します。見通しを良くすることは、指針の1つめの原則にあたります。
ポイント
- 女性専用は「条件」より「守られる仕組み」で選ばれる
- 建物の玄関と各部屋の扉の両方に鍵を付ける
- 地面に近い窓は、補助錠や面格子で侵入を防ぐ
- 玄関の周りの死角と暗がりをなくす
来客と立ち入りのルール
女性専用で、いちばんもめやすいのが、入居者以外の出入りです。
ルールに入れておきたい項目
- 入居者以外の人を、建物に入れてよいか、入れてよい場所と時間
- 入居者以外の宿泊を認めるか
- 修理の業者や運営の担当者が入るときの事前の連絡のしかた
- 共用部分での入居者以外の滞在の扱い
- ルールを守らないときの注意と、契約上の扱い
ルールを契約に結びつける
ルールは、口頭で伝えるだけでは守られにくくなります。契約書や入居時に渡すルールの書面に書き、入居者に説明してから署名してもらいましょう。ルールの作り方は「シェアハウスのルールと契約」で詳しく説明しています。
業者が入るときの流れ
- 作業の日時と場所を、前もって入居者に知らせる
- 作業する人の会社名と人数を伝える
- 当日は、運営の担当者が立ち会うか、入る場所を限る
- 終わったら、作業が終わったことを知らせる
防犯カメラを付けるときの注意
防犯カメラは安心につながりますが、入居者の暮らしを映すものでもあります。
個人情報としての扱い
個人情報保護委員会のQ&Aでは、特定の個人を見分けられる画像を撮ると、個人情報を扱うことになるとしています。利用目的をできる限り特定し、その範囲で使う必要があります。
設置の状況から防犯の目的が明らかなら、利用目的の通知や公表は要らないと考えられるとしています(個人情報保護法21条4項4号)。ただし、カメラで撮られていることが分かりにくい場合は、作動中であることを掲示するなどの措置が要るとしています。
シェアハウスで決めておくこと
- カメラを付ける場所(玄関の外や入口など)と、付けない場所
- 映像を見られる人と、見る場面
- 映像を残す期間と、消すしかた
- 入居者への説明と、契約書やルールへの記載
浴室や脱衣所、各部屋の中など、入居者の私的な場所を映すような付け方はしないでください。
たとえば、戸建てを女性専用にした場合
たとえば、浴室と洗面所が1か所しかない戸建てを、シェアハウスにするFさん。間取りを見て、女性専用にすると決めました。
Fさんは、1階の窓に補助錠を付け、玄関の植木を低く刈り込みました。来客は共用のリビングまで、宿泊は認めないとルールに書き、入居前の面談で説明しました。業者が入るときは前の日までに知らせる流れも決め、入居者からの問い合わせが減りました。
フロア分けにする場合
2階建てで、各階に浴室とトイレがある建物なら、階ごとに分ける形も考えられます。この場合は、階の間の行き来をどこまで認めるか、共用のキッチンやリビングをだれが使うかを、ルールに書いておきます。
分け方があいまいだと、「女性専用の階」と思って入った人が不安を感じます。案内には、どこが分かれていて、どこが共用かを図で示すと伝わりやすくなります。
入居前の面談で伝えること
女性専用のシェアハウスでは、入居前の面談で、守ってほしいことを具体的に伝えます。
- 来客を入れてよい場所と時間、宿泊の扱い
- 業者や運営の担当者が入るときの知らせ方
- 鍵の扱い(合鍵を作らない、なくしたときの連絡先)
- 防犯カメラの場所と、映像の扱い
- 困ったときや不審な人を見かけたときの連絡先
面談で同じ説明をすべての入居者にすることで、ルールへの納得がそろいます。
不審なことがあったときの対応の流れ
入居者から「知らない人が建物の周りにいた」「窓が開けられた跡がある」と連絡があったときの流れも、決めておきます。
- 入居者の安全を先に確かめ、危険が迫っているときは警察への通報を勧める
- いつ、どこで、何があったかを、入居者から聞き取って記録する
- 鍵や窓、玄関の周りに異常がないかを確かめる
- ほかの入居者に、事実と注意点を知らせる(不確かなうわさは広げない)
- 必要に応じて、鍵の交換や照明の追加などの対策をとる
連絡先は、昼と夜で同じとは限りません。夜や休日にだれが受けるかを、運営会社と決めておきましょう。
入居者が入れ替わるとき
入居者が退去するときは、防犯の面でも確かめることがあります。
- 渡していた鍵がすべて返ってきたかを確かめる
- 鍵を交換するか、交換しない場合の理由を記録する
- 共用部分の暗証番号などがあれば、変える
- 新しい入居者に、ルールを改めて説明する
女性専用で出てくる言葉の言い換え
- 監視性:周りの目が届き、見通しが良いこと
- 領域性:住む人が「自分たちの場所」と感じ、管理が行き届いていること
- 接近の制御:侵入しようとする人が近づきにくい作りにすること
- 補助錠:もとの鍵に加えて付ける、もう1つの鍵
- 面格子:窓の外側に付ける格子
よくある失敗
- 女性専用と掲げただけで、来客のルールを決めていなかった
- 各部屋に鍵がなく、入居者が不安を感じて退去した
- 業者が事前の連絡なく入り、入居者から苦情が出た
- 防犯カメラの映像を見る人を決めず、入居者が不信感を持った
- 夜の立地を見ずに決め、内見のあとに申し込みが入らなかった
女性専用にする前のチェックリスト
- 間取り・立地・部屋数・運営の体制を見て、女性専用にする理由を説明できる
- 建物の玄関と各部屋の扉に鍵がある
- 地面に近い窓に、侵入を防ぐ措置をとった
- 玄関の周りの死角と暗がりを確かめた
- 来客・宿泊・業者の立ち入りのルールを書面にした
- 防犯カメラの場所・見る人・残す期間を決め、入居者に説明する準備をした
- サブリースの場合、入居者の条件を契約の欄で決めた
よくある質問
- 女性専用にすると入居者は集まりやすい?
- 集まりやすさを示す公的な統計は見当たりません。間取りや立地によって違うため、運営会社と近くの募集状況を見て判断してください。
- 女性専用にするのに届出は要る?
- 女性専用にすること自体は、募集と運営の条件です。シェアハウスへの転用で必要な建築や消防の確認は、男女共用の場合と同じように行います。
- 防犯カメラは付けたほうがいい?
- 付けるなら、場所・見る人・残す期間を決め、入居者に説明してください。撮られていることが分かりにくい場合は、作動中の掲示などが要ります。
- 家族や友人の来訪は断れる?
- 来訪を認める範囲は、ルールで決められます。入居前に書面で説明し、同意したうえで契約してもらいましょう。
- 鍵は入居者が替わるたびに交換すべき?
- 交換するかどうかと費用の負担を、あらかじめ決めておくことが大切です。考え方は鍵の交換費用の記事で説明しています。
関係する記事と相談先
シェアハウスへの転用の全体像は「戸建てをシェアハウスに」、改修の建築・消防の確認は「シェアハウス改修の建物・消防」で説明しています。募集と面談は「シェアハウスの入居者募集」、鍵の扱いは「鍵の交換費用はだれが払う」、もめごとの予防は「シェアハウスのトラブルと予防策」をご覧ください。
運営を任せる会社は、シェアハウスの運営会社の一覧で比べられます。一括相談なら、物件の条件をまとめて伝えて相談できます。
まとめ
- 女性専用は、間取り・立地・部屋数・運営の体制を見て決める運営方針
- 安心は「女性だけ」という条件より、守られる仕組みでつくる
- 国の設計指針の4つの原則を、鍵・窓・見通しの改修に生かす
- 来客・宿泊・業者の立ち入りのルールを書面にして説明する
- 防犯カメラは、場所・見る人・残す期間を決めて入居者に伝える




