重要事項説明で売主がすることとは?用意する情報・書類と伝え漏れを防ぐ手順

重要事項説明は不動産会社の宅地建物取引士が買主にするものですが、その中身の多くは売主しか知らない情報です。売主が用意する情報と書類、伝え漏れを防ぐ手順、伝えなかったときの責任を整理します。
結論
- 重要事項説明は、宅地建物取引業法第35条により、不動産会社が宅地建物取引士に、契約が成立するまでに買主へ書面を渡して説明させるものです。売主が説明する決まりではありません。
- ただし、建物の不具合、修繕や点検の記録、境界、近隣との取り決めなどは売主しか知りません。売主の役目は、これらを正しく、漏れなく不動産会社に伝えることです。
- 用意するものは、権利の書類、建築確認や検査済証などの建物の書類、修繕と点検の記録、管理規約(マンション)、そして知っている不具合の一覧です。
- 知りながら告げなかった不具合は、責任を負わない特約があっても責任を免れません(民法第572条)。
「重要事項説明の日に、売主も同席するのですか」。「何を準備すればいいのか、不動産会社から言われたものだけで足りますか」。家を売る方から、こうした質問をよく受けます。
重要事項説明は、買主が契約するかどうかを決める大事な説明です。説明するのは不動産会社ですが、材料を出すのは売主です。売主の情報が足りないと、説明も足りなくなります。
この記事では、重要事項説明の中で売主が担う部分を、法律の項目に沿って説明します。準備の手順と、よくある伝え漏れもまとめます。
重要事項説明とは
重要事項説明の意味
重要事項説明とは、不動産会社が、買主や借主に、物件と取引の条件のうち大事な点を、契約の前に書面で説明することです。宅地建物取引業法第35条で、宅地建物取引士にさせること、少なくとも説明する項目が決められています。
説明する人は、宅地建物取引士証を相手に見せなければなりません(同条第4項)。書面には、宅地建物取引士が記名します(同条第5項)。
売主が説明するのではない
法律で説明の義務を負うのは不動産会社です。売主が個人で、不動産会社を通さずに知人に直接売る場合、この説明の決まりは当てはまりません。その場合でも、物件の状態を正しく伝えることは、後で述べる民法の責任から大切です。
売主に求められること
不動産会社は、登記や役所の資料は自分で調べられます。しかし、雨漏りの履歴や、隣の家との口約束は、売主に聞かないと分かりません。宅地建物取引業法第47条は、不動産会社が大事な事実を故意に告げないことを禁じています。会社が正しく説明できるよう、売主が情報を出すことが前提になります。
重要事項説明の項目と売主が出す情報
法律で決まっている主な項目
宅地建物取引業法第35条第1項と同法施行規則第16条の4の3から、建物の売買で説明する主な項目と、売主の出番を整理します。
| 説明する項目 | 主に調べる人 | 売主が出す情報の例 |
|---|---|---|
| 登記された権利(抵当権など) | 不動産会社 | ローンの残り、抹消の予定 |
| 法令による建築などの制限 | 不動産会社 | 増築や用途変更をした履歴 |
| 私道の負担 | 両方 | 私道の持ち分、通行の取り決め |
| 水道・電気・ガス・排水 | 両方 | 配管の位置、浄化槽の有無、故障歴 |
| マンションの規約や管理 | 両方 | 管理規約、使用細則、滞納の有無 |
| 建物状況調査と建物の書類 | 両方 | 調査の報告書、確認済証、検査済証 |
| 造成宅地防災区域・土砂災害警戒区域・津波災害警戒区域 | 不動産会社 | 過去の浸水やがけ崩れの経験 |
| 水害ハザードマップ上の位置 | 不動産会社 | 実際に浸水した時期と範囲 |
| 石綿(アスベスト)の調査記録 | 両方 | 調査をしたかどうか、結果の書類 |
| 耐震診断の内容 | 両方 | 診断を受けたかどうか、報告書 |
| 契約の解除、違約金、手付金 | 不動産会社 | 引き渡しの時期の希望 |
耐震診断の項目は、昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手した建物は対象から外れます(同規則第16条の4の3第5号)。
建物状況調査は1年以内のもの
建物状況調査とは、建築士で国の講習を修了した人が、建物の構造の主な部分や雨水の入りやすい部分を調べることです(同規則第15条の8)。重要事項説明では、調査をしているかどうかと結果の概要を説明します(法第35条第1項第6号の2イ)。
対象は、実施から1年を過ぎていない調査です。鉄筋コンクリート造などの共同住宅等は2年です(同規則第16条の2の2)。調査の流れは「売却前のインスペクション」で説明しています。
保存しているかを聞かれる書類
同規則第16条の2の3は、保存の状況を説明する書類を挙げています。売主は、手元にあるかどうかを確かめておきます。
- 建築確認の申請書と確認済証
- 検査済証
- 建物状況調査の報告書
- 既存住宅の建設住宅性能評価書
- 昭和56年5月31日以前に工事を始めた住宅の、耐震性が分かる書類(耐震診断の報告書など)
書類が無くても売ることはできます。「無い」ことも説明の内容になるため、探した結果をそのまま伝えます。
ポイント
- 重要事項説明をするのは不動産会社。売主の役目は材料を出すこと
- 登記や役所の資料は会社が調べる。不具合や履歴は売主にしか分からない
- 書類は「有る・無い」をはっきりさせる。無いことも説明の内容になる
- 知っている不具合は書面で伝える
売主が準備する手順
売り出し前から説明の日まで
- 売却を頼む不動産会社を決め、媒介契約を結ぶ
- 権利証(登記識別情報)、固定資産税の通知書、建物の書類を集める
- 知っている不具合、修繕の履歴、近隣との取り決めを書き出す
- 不動産会社が用意する物件の状況を書く書面に記入する
- 必要に応じて建物状況調査や境界の確認をする
- 買主が決まったら、重要事項説明書の案を見せてもらい、売主の情報と食い違いがないか確かめる
- 説明と契約の当日は、聞かれたことに答えられるよう同席するか、連絡が取れるようにする
必要な書類の全体は「売却の必要書類」、売却全体の段取りは「不動産売却の流れ」にまとめています。
書き出しておきたいこと
- 雨漏り、水漏れ、シロアリの被害と、直した時期
- 給湯器やエアコンなど、残していく設備と故障の有無
- 増築やリフォームの内容と時期
- 境界の目印の有無、隣地との塀の持ち主
- 隣の家や自治会との取り決め(通行、排水管の通り道など)
- 過去に浸水した経験
境界については「境界確定測量と売却」、心理的な事情を伝えるかどうかは「心理的瑕疵の告知」をご覧ください。
伝えなかったときの売主の責任
契約不適合責任
契約不適合責任とは、引き渡した物件が、種類や品質の面で契約の内容に合わないときに売主が負う責任です。民法第562条により、買主は修理などを求めることができます。
特約があっても免れないこと
古い家では「現状のまま引き渡し、売主は責任を負わない」という特約を付けることがあります。しかし民法第572条により、売主が知りながら告げなかった事実については、責任を免れません。
買主が知ってから1年
民法第566条により、買主は品質の不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しないと、原則として責任を問えなくなります。ただし、売主が引き渡しの時に知っていた、または重大な過失で知らなかったときは、この制限はありません。詳しくは「契約不適合責任と売主」で説明しています。
「聞かれなかったから言わなかった」は通りにくい考え方です。迷う事実は、不動産会社に伝えたうえで、書くかどうかを相談しましょう。
マンションを売るときに加わること
管理組合から取り寄せるもの
マンションの重要事項説明では、敷地の権利、共用部分の規約、管理の状況などを説明します(法第35条第1項第6号)。管理規約、使用細則、長期修繕計画、修繕積立金の額や滞納の状況は、管理組合や管理会社から取り寄せます。取り寄せには日数がかかることがあるため、早めに不動産会社と段取りを決めます。
部屋の中で売主が伝えること
- 専有部分のリフォームの内容(床材の変更など規約に関わるもの)
- ペットの飼育や楽器の使用など、規約と合わない使い方をしていないか
- 上下階との騒音や漏水のやりとり
マンション特有の注意点は「マンション売却の注意点」にまとめています。
場面で考える売主の準備
場面の例
Aさんは、相続した築40年の木造の家を売ることにしました。父が生前に浴室の水漏れを直したことを覚えていましたが、書類はありません。Aさんは、覚えている時期と場所を書き出して不動産会社に渡しました。重要事項説明と物件の状況を書く書面に、その内容が載りました。
判断の分かれ道
| 迷う場面 | 考え方 |
|---|---|
| 直した不具合も伝えるか | 伝えておくのが安全。直した時期と内容も添える |
| 記憶があいまい | 分かる範囲と「確かでない」ことを分けて書く |
| 書類が見つからない | 「見つからない」と伝える。役所で取れるものは会社に相談 |
| 近所の口約束 | 内容と相手を書き出し、引き継ぐかを決める |
よくある失敗
- 重要事項説明書の案を見ずに当日を迎え、事実と違う記載に気づかない
- リフォームの時期を勘違いしたまま伝える
- 設備の故障を「使えば動く」として書かない
- マンションの書類の取り寄せが遅れ、契約の日がずれる
説明書の案を見るときのチェックリスト
- 所在地、面積、建物の構造が、登記や手元の書類と合っているか
- 残していく設備と、撤去する設備の区別が正しいか
- 伝えた不具合や修繕の履歴が、抜けずに載っているか
- 引き渡しの時期と、ローンの抵当権を消す段取りが合っているか
- 「不明」となっている項目に、売主が分かることが残っていないか
案を見て気づいたことは、当日ではなく前もって不動産会社に伝えます。当日に直すと、買主に説明をし直す手間がかかるためです。抵当権を消す手続きは「抵当権の抹消」で説明しています。
言葉の言い換え
- 宅地建物取引士:重要事項説明をする国家資格を持つ人
- 登記された権利:登記簿に書かれた所有権や抵当権など
- 検査済証:建物が完成したときの検査に合格したことを示す書類
- 管理規約:マンションの住み方や管理のルールをまとめたもの
よくある質問
- 重要事項説明は売主がするのですか?
- しません。宅地建物取引業法第35条により、不動産会社が宅地建物取引士に説明させます。売主は、説明の材料となる情報と書類を出します。
- 売主は重要事項説明に同席する必要がありますか?
- 法律で同席の決まりはありません。買主から物件のことを聞かれる場合に備え、同席するか、連絡が取れるようにしておくと安心です。
- 個人どうしで直接売るときも重要事項説明は必要ですか?
- 宅地建物取引業法の説明の義務は不動産会社に課されたものなので、会社を通さない取引には当てはまりません。ただし、知っている不具合を伝える大切さは同じです。
- 昔の不具合で、もう直したものも伝えるべきですか?
- 伝えておくのが安全です。直した時期と内容、工事の書類があれば一緒に渡しましょう。
- 建築確認の書類がないと売れませんか?
- 売ることはできます。保存の状況は説明する項目なので、「無い」ことをそのまま伝えます。
準備に迷ったら
売却を頼む会社の選び方は「売却の会社の選び方」で説明しています。地域の会社は売買を手がける会社の一覧から探せます。どの会社に任せるか迷うときは、一括相談の使い方をご覧のうえ、まとめて相談してみてください。
まとめ
- 重要事項説明は、不動産会社が宅地建物取引士に、契約までに書面で説明させるもの
- 売主の役目は、不具合・修繕の履歴・取り決めなど、自分しか知らない情報を出すこと
- 建物の書類は「有る・無い」をはっきりさせる。建物状況調査は原則1年以内のものが対象
- 知りながら告げなかった不具合は、責任を負わない特約があっても責任を免れない
- 説明書の案を事前に見て、売主の情報と食い違いがないか確かめる




