家賃相場の調べ方|公的な統計と募集事例でオーナーが適正な家賃を見きわめる手順

家賃相場は、国の統計で地域の大きな流れをつかみ、近くの募集事例で自分の部屋の位置を確かめる、の2段で調べると迷いにくくなります。統計の読み方、募集事例の比べ方、よくある読み違いを順に説明します。
結論
- 家賃相場の調べ方は、①国の統計で地域の全体の水準と流れをつかむ、②近くの似た部屋の募集事例で自分の部屋の位置を確かめる、の2段で進めるのが基本です。
- 国の統計(総務省の住宅・土地統計調査など)は、いま住んでいる人の家賃の平均で、これから募集する家賃とは性格が違います。統計は「流れ」、募集事例は「いまの値段」を見るために使います。
- 最後は、問い合わせや内見の反応、管理会社の成約の情報と合わせて決めます。
「うちの部屋の家賃は、高いのか安いのか分からない」。空室が続いたり、更新や入れ替えの時期が来たりすると、こう迷うオーナーは多いと思います。
家賃を下げすぎると、手残りが減ります。高すぎると、問い合わせが来ません。どちらも、相場の見方が合っていないことが原因になりがちです。
この記事では、家賃相場を自分で調べる手順を、公的な統計の使い方と、募集事例の比べ方に分けて説明します。
家賃相場とは
意味を一言で
家賃相場とは、同じような地域・広さ・条件の部屋が、だいたいどれくらいの家賃で貸し借りされているかの目安です。一つの正解の数字があるわけではなく、幅のある目安として見ます。
相場には3つの顔がある
「相場」と言っても、見ている数字によって意味が違います。混ぜて比べると判断を誤るので、先に区別しておきます。
| 種類 | 何の数字か | 主に分かること |
|---|---|---|
| 公的な統計の家賃 | いま住んでいる人が払っている家賃の平均 | 地域の水準と、年ごとの流れ |
| 募集中の家賃 | いま空いている部屋の希望家賃 | 競合の部屋の値付け |
| 成約した家賃 | 実際に契約が決まった家賃 | 実際に借り手がついた値段 |
成約した家賃は、仲介会社や管理会社が持っている情報です。オーナーが自分で見られるのは、主に公的な統計と、募集中の家賃です。
公的な統計で家賃相場の全体をつかむ
住宅・土地統計調査とは
住宅・土地統計調査は、総務省統計局が5年ごとに行っている、住まいについての国の調査です。いちばん新しいのは、2023年(令和5年)10月1日時点の調査です。
調べる項目には、住んでいる住宅の家賃や間代も含まれています。結果は統計局のページや、政府の統計の窓口である e-Stat で公開されています。
2023年調査で分かる家賃の水準
2023年調査の基本集計の結果では、借家(専用住宅)の1か月当たり家賃は全国で59,656円で、2018年と比べて7.1%増えたとされています。
| 借家の種類 | 1か月当たり家賃(全国・2023年) | 2018年からの増え方 |
|---|---|---|
| 借家(専用住宅)全体 | 59,656円 | 7.1%増 |
| 民営借家(木造) | 54,409円 | 4.5%増 |
| 民営借家(非木造) | 68,548円 | 7.0%増 |
広さをそろえて比べるための「1畳当たり家賃」も出ています。借家(専用住宅)全体で3,403円、民営借家(非木造)が4,151円で、種類の中でいちばん高いとされています。
統計の数字の読み方
この数字は、全国の平均です。都市と地方、駅の近くと遠く、新しい建物と古い建物がすべて混ざっています。自分の部屋の家賃を、そのまま全国平均と比べても意味はありません。
統計から読み取るとよいのは、次のようなことです。
- 自分の地域の家賃の水準が、全国や近くの地域と比べてどうか
- 前の調査と比べて、家賃が上がる流れか、横ばいか
- 木造と非木造、民営と公営など、建物の種類による差
- 1畳当たりで見たとき、広さの割に高いか安いか
統計の家賃は、何年も前に契約した人の家賃も含みます。これから募集する部屋の家賃は、統計の平均より高くなることも低くなることもあります。統計の数字で、募集家賃を決めないようにします。
統計を調べる手順
- 総務省統計局の「住宅・土地統計調査」のページを開く
- いちばん新しい調査(2023年)の結果の概要で、全国の流れを読む
- e-Stat の統計表で、自分の都道府県や市区町村の家賃の表を探す
- 借家の種類(民営の木造・非木造など)を、自分の物件に合わせて見る
- 前の調査と比べ、上がっているか下がっているかを確かめる
ポイント
- 統計は地域の「水準」と「流れ」を見るために使う
- 全国平均と自分の部屋を、そのまま比べない
- 建物の種類と、1畳当たりの家賃でそろえて見る
- 統計は5年ごとなので、最新の動きは募集事例で補う
募集事例で自分の部屋の家賃の位置を確かめる
似た部屋の条件をそろえる
統計で全体をつかんだら、次は近くで募集している似た部屋と比べます。比べるときは、条件をできるだけそろえることが大切です。
| そろえる条件 | 見るところ |
|---|---|
| 場所 | 最寄り駅と駅からの歩く時間 |
| 広さと間取り | 専有面積、ワンルームか1Kか2LDKかなど |
| 建物 | 築年数、木造か鉄筋コンクリート造か |
| 設備 | オートロック、宅配ボックス、独立洗面台など |
| 条件 | 敷金・礼金、更新料、ペット可かどうか |
募集事例を集める手順
- 賃貸の住まい探しのサイトで、自分の部屋と同じ駅・同じ間取りで探す
- 駅からの歩く時間と築年数が近い部屋を、5〜10件ほど選ぶ
- 家賃に管理費・共益費を足した「月々の支払い」でそろえる
- 1㎡当たりの家賃も出して、広さの違いをならす
- 長く募集が続いている部屋と、すぐ消えた部屋を分けて見る
長く掲載されたままの部屋は、家賃が高すぎるか、条件に弱みがある可能性があります。すぐ掲載が消えた部屋は、決まった可能性があります。この差が、いまの値段の手がかりになります。
敷金・礼金などの初期費用も比べる
月々の家賃が同じでも、礼金がない部屋や、入居してしばらく家賃がかからない部屋は、借りる人から見ると安く感じます。家賃だけでなく、入居時にかかるお金の合計でも比べます。
家賃のかからない期間をつける方法は「フリーレントのメリットと注意点」で整理しています。
家賃相場を調べるときのよくある読み違い
読み違い1:募集家賃を成約家賃と思い込む
募集中の家賃は、オーナーの希望の値段です。実際には、交渉で下がって決まることもあります。募集家賃だけを見て「この地域はこれくらいで貸せる」と考えると、高めに見積もりがちです。
読み違い2:築年数や設備の違いを無視する
同じ駅・同じ間取りでも、新しい建物と古い建物では家賃の水準が違います。自分の部屋より条件がよい部屋の家賃に合わせても、問い合わせは増えません。
読み違い3:統計の平均を目標にする
統計の平均は、さまざまな部屋をならした数字です。「全国平均より安いから上げられる」とは言えません。地域と建物の種類をそろえて初めて、比べる意味が出ます。
読み違い4:一度調べて終わりにする
家賃の水準は、時期や周りの新しい建物の数によって変わります。入居者の入れ替えのたびに、募集事例を見直す習慣をつけると、判断がぶれにくくなります。
調べた相場を家賃の見直しに生かす
管理会社に確かめること
オーナーが自分で集めた情報だけでは、成約した家賃は分かりません。管理会社や仲介会社に、次のことを聞いてみます。
- 近くの似た部屋が、最近いくらで決まったか
- 問い合わせや内見が、家賃のどこで止まっているか
- 家賃を下げる以外に、条件や設備で補える方法があるか
- 募集の時期によって、反応が変わるか
家賃を下げる前に考えること
相場より高いと分かっても、すぐに家賃を下げる必要があるとは限りません。写真や募集の文、設備、入居の条件を見直すことで、反応が変わることもあります。
入居者の条件を広げる方法としては、ペットを受け入れる、法人契約を受け入れる、家具家電を付けるといった選択肢もあります。法人契約の進め方は「法人契約の審査と書類」、入居の審査の考え方は「入居審査のポイント」で整理しています。
見直しのチェックリスト
- 統計で、地域の水準と流れを確かめた
- 募集事例を、条件をそろえて5〜10件集めた
- 月々の支払いと、1㎡当たりの家賃でそろえた
- 初期費用の合計でも比べた
- 管理会社に、最近の成約の情報を聞いた
- 家賃以外に直せる点がないかを見た
場面別:家賃相場の見方の例
築年数がたった木造アパートの場合
駅から少し離れた、築年数のたった木造アパートの1Kを考えます。同じ駅の1Kで探すと、新しい鉄筋の建物ばかりが目に入り、家賃が高く見えがちです。
この場合は、木造で築年数が近い部屋だけを選び直して比べます。統計でも、民営借家は木造と非木造で家賃の水準が分かれています。建物の種類をそろえるだけで、比べる相手が大きく変わります。
駅に近いワンルームマンションの場合
駅に近いワンルームは、同じ条件の募集が多く、比べる相手に困りません。そのぶん、家賃が少し高いだけで候補から外されやすくなります。
この場合は、月々の支払いだけでなく、1㎡当たりの家賃と初期費用の合計でも並べます。同じ家賃でも、礼金の有無や設備の差で、借りる人の受け止め方が変わるからです。
相続した実家を貸すか迷っている場合
戸建ての募集事例は、アパートやマンションより少ないことが多く、相場がつかみにくくなります。近くの駅に加えて、となりの駅や同じ市区町村まで広げて探し、広さと築年数の近い戸建てを集めます。
貸すか売るかで迷っているときは、家賃の見込みと売った場合の見込みを並べて考えます。考え方は「実家は売るか貸すか」で整理しています。
よく出てくる言葉の言い換え
- 専有面積:自分だけが使える部屋の広さ。共用の廊下や階段は含まない
- 管理費・共益費:共用部分の清掃や電気代などにあてるお金。家賃と合わせて見る
- 成約:入居者が決まり、契約が結ばれたこと
- 反響:募集に対する問い合わせや内見の申し込み
よくある質問
- 家賃相場は無料で調べられますか?
- 調べられます。国の統計は総務省統計局や e-Stat で公開されており、募集事例は住まい探しのサイトで見られます。
- 住宅・土地統計調査の家賃は、募集家賃の目安になりますか?
- そのままの目安にはなりません。いま住んでいる人の家賃の平均なので、地域の水準や流れをつかむために使います。
- 統計はどれくらいの間隔で新しくなりますか?
- 住宅・土地統計調査は5年ごとの調査で、いちばん新しいのは2023年10月1日時点のものです。間の動きは募集事例で補います。
- 募集事例は何件くらい比べればいいですか?
- 決まった数はありませんが、条件の近い部屋を5〜10件ほど集めると、家賃の幅がつかみやすくなります。
- 相場より高いときは、すぐに家賃を下げるべきですか?
- すぐに下げる必要があるとは限りません。写真や募集の文、条件や設備を見直してから、家賃を考える順番がおすすめです。
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まとめ
- 家賃相場は、公的な統計と近くの募集事例の2段で調べる
- 統計は、いま住んでいる人の家賃の平均で、地域の水準と流れを見るために使う
- 2023年調査では、借家(専用住宅)の1か月当たり家賃は全国で59,656円
- 募集事例は、場所・広さ・築年数・設備をそろえて比べる
- 家賃を下げる前に、管理会社に成約の情報を聞き、条件や設備も見直す




