民泊の宿泊者名簿とは?記載事項・本人確認・3年保存の決まりを施行規則で整理

民泊の宿泊者名簿は、住宅宿泊事業法8条と施行規則7条で、記載事項と保存の期間が決まっています。この記事では、書く項目、本人確認のしかた、外国人の旅券の扱い、保存の場所と期間を順番に整理します。
結論
- 民泊の宿泊者名簿には、宿泊者の氏名・住所・職業・宿泊日を書き、日本に住所のない外国人は国籍と旅券番号も書きます(住宅宿泊事業法施行規則7条)。
- 名簿は宿泊者全員について書き、代表者だけの記載は認められません。作成の日から3年間保存します。
- 名簿を備えなかったり書かなかったりすると、住宅宿泊事業法76条により30万円以下の罰金の対象になります。
「チェックインの手続きは、代表の人の名前だけでいいのでは」。民泊を始めたばかりのオーナーから、こうした疑問をよく聞きます。名簿は事務作業に見えて、決まりがこまかく、後から直しにくいものです。
名簿の書き方を間違えたまま続けると、自治体から提出を求められたときに困ります。外国人の宿泊者が多い物件では、旅券の扱いでも迷いやすくなります。
この記事では、民泊の宿泊者名簿に絞って、何を書くか、どう本人確認するか、どこにどれだけ保存するかを説明します。届出全体の流れは「民泊の届出の流れ」で整理しています。
民泊の宿泊者名簿とは
民泊の宿泊者名簿とは、住宅宿泊事業者が、泊まった人の氏名や住所などを記録し、備えておく帳簿です。住宅宿泊事業法8条で、備えることが義務になっています。
都道府県知事から求められたときは、名簿を提出しなければなりません。宿泊者も、事業者から求められたら、名簿に書く事項を告げなければならないとされています。
名簿の決まりの根拠
| 決まり | 中身 |
|---|---|
| 住宅宿泊事業法8条 | 名簿を備え、記載し、求めがあれば提出する |
| 施行規則7条 | 作成のしかた、保存の期間、場所、記載事項 |
| 施行要領(ガイドライン) | 本人確認の方法、全員の記載、旅券の写し |
言葉の言い換え
- 住宅宿泊事業者:届出をして民泊を営む人や会社
- 住宅宿泊管理業者:国土交通大臣の登録を受け、民泊の管理を引き受ける会社
- 施行要領:国が示した、法律と規則の運用の目安
- 旅券:パスポートのこと
- 宿泊グループ:一つの予約でいっしょに泊まる人たちのまとまり
- 本人確認:名簿に書く人が、実際に泊まる本人かを確かめること
- 旅券の呈示:パスポートを見せてもらうこと
宿泊者名簿の記載事項
施行規則で決まった項目
施行規則7条3項では、名簿に書く事項を次のように決めています。
- 宿泊者の氏名
- 宿泊者の住所
- 宿泊者の職業
- 宿泊日
- 日本国内に住所のない外国人のときは、国籍と旅券番号
宿泊者全員を書く
施行要領では、名簿には宿泊者全員の氏名や住所などを書く必要があるとしています。代表者だけの記載は認めず、宿泊の契約(宿泊グループ)ごとに、だれが泊まったか分かるように書くとしています。連絡先も書いておくことが望ましいとされています。
紙でも電子でもよい
施行規則7条4項では、記載事項をパソコンなどのファイルに記録し、必要なときに紙に表示できるなら、その記録を名簿に代えることができます。予約サイトの情報を使う場合も、全員分の項目がそろっているかを確かめます。
ポイント
- 書く項目は、氏名・住所・職業・宿泊日。外国人は国籍と旅券番号も
- 代表者だけでなく、宿泊者全員を書く
- 電子の記録でも、紙に表示できれば名簿に代えられる
本人確認のしかた
泊まる前に、一人ずつ確認する
施行規則7条1項では、名簿は正確な記載を確保する措置を講じたうえで作ることになっています。施行要領では、その措置として、宿泊が始まるまでに宿泊者それぞれの本人確認を行う必要があるとしています。
対面か、対面と同じ程度のICT
本人確認は、対面か、次の2つをどちらも満たすICT(情報通信技術)を使う方法で行います。
- 宿泊者の顔と旅券が、画像ではっきり確認できること
- その画像が、届出住宅の中や近く、事業者などの営業所から送られていると確認できること
施行要領は、届出住宅に置いたテレビ電話やタブレット端末を使う方法を例に挙げています。
本人確認のために室内にカメラを置く場合、施行要領は、チェックインのとき以外は通信や記録をしないなど、プライバシーを侵害しない対応を取ることが望ましいとしています。
外国人の宿泊者と旅券の写し
施行要領では、日本に住所のない外国人の宿泊者には、旅券の呈示を求め、旅券の写しを名簿とともに保存するとしています。写しを保存すれば、名簿の氏名・国籍・旅券番号の欄への記載に代えてもよいとされています。
呈示を拒まれたときは、国の指導による措置だと説明して改めて求めます。それでも拒む場合は、旅券を持っていない可能性があるとして、最寄りの警察署に連絡するなどの対応を取るとされています。
長く泊まる人の確認
施行要領は、宿泊の契約が7日以上の場合には、定期的な面会(オンラインを含む)や電話などで、本人確認をしていない人が泊まっていないかを確かめることが望ましいとしています。
名簿の保存の場所と期間
作成の日から3年間
施行規則7条1項では、名簿は作成の日から3年間保存します。宿泊の日からではなく、名簿を作った日から数える点に気をつけます。
備える場所
施行規則7条2項では、名簿を備える場所は、届出住宅か、住宅宿泊事業者の営業所または事務所のどちらかです。
管理を委託している場合
住宅宿泊管理業者に管理を委託している民泊では、名簿の備付けなどは管理業者が行います(住宅宿泊事業法11条2項・36条)。この場合、名簿は管理業者の営業所または事務所に備えます。施行要領は、本人確認の方法を、管理受託契約で明確に決めておく必要があるとしています。委託の考え方は「住宅宿泊管理業者への委託」で説明しています。
警察から閲覧を求められたとき
施行要領では、警察官から職務上名簿の閲覧を求められた場合、捜査関係事項照会書の交付の有無にかかわらず、職務の目的に必要な範囲で協力するとしています。この提供は個人情報保護法にもとづく適正な措置で、本人の同意は要らないと解されるとしています。
チェックインから保存までの手順
名簿の決まりを、毎回の手順に落とし込むと漏れが減ります。家主が対面で受け付ける場合の例です。
- 予約のときに、宿泊者全員の氏名・住所・職業を入力してもらう
- チェックインのときに、一人ずつ顔と身分証を見て本人確認をする
- 日本に住所のない外国人には、旅券の呈示を求めて写しを取る
- 名簿に宿泊日を書き、空欄がないかをその場で確かめる
- 名簿と旅券の写しを、作成の日が分かるようにまとめて保存する
- 3年間たったものは、個人情報として安全な方法で処分する
名簿の書式の作り方
施行要領は、名簿の推奨様式は別に定めるとしています。自分で書式を作る場合は、宿泊グループごとに欄を分け、全員の行を設けると書き漏らしを防げます。連絡先の欄も設けておくと、忘れ物や緊急時の連絡に役立ちます。
個人情報としての扱い
名簿には、氏名や住所、旅券の情報が集まります。紙なら鍵のかかる場所に、電子なら見られる人を限って保管します。名簿の情報を、宿泊の管理と関係のない目的に使わないようにしましょう。
管理業者や代行会社に任せるときの確認点
名簿の作成を任せる場合も、事業者として中身を知っておくことが大切です。契約の前に、次の点を確かめます。
- 本人確認を、対面とICTのどちらで行うか
- 宿泊者全員の項目を、だれがどこで集めるか
- 外国人の旅券の写しを、どこに保存するか
- 名簿を、どの営業所や事務所に備えるか
- 自治体から提出を求められたとき、どう対応するか
名簿と定期報告のつながり
住宅宿泊事業法14条では、事業者は人を泊めた日数などを、定期的に都道府県知事に報告します。名簿の宿泊日が正しく残っていれば、報告の日数を数えるときの土台になります。名簿と報告の数字が合っているかも、ときどき見直しましょう。
名簿を備えないとどうなるか
住宅宿泊事業法76条では、8条1項に違反した者は30万円以下の罰金の対象です。名簿を備えない、書くべき事項を書かないといった場合が考えられます。
あわせて、都道府県知事は業務の改善を命じることができ(15条)、法令に違反したときは1年以内の期間を定めて業務の停止を命じることもできます(16条)。
運用の分かれ道と場面の例
自分で確認するか、任せるか
家主が住みながら民泊をする場合は、対面で本人確認をしやすくなります。家主が不在の物件では、ICTを使うか、管理業者に任せるかを決めます。任せる場合も、名簿の項目がそろっているかは自分でも確かめておきます。運営を任せる会社の選び方は「民泊の運営代行の選び方」で説明しています。
たとえば、家族連れを泊めたMさん
Mさんは、自宅の一部で民泊をしています。4人の家族連れが泊まりに来たとき、最初は予約した父親の名前だけを名簿に書いていました。
決まりを読み直し、宿泊者全員の氏名と住所を書く必要があると知りました。Mさんは名簿の書式を見直し、グループごとに全員の欄を設けました。チェックインのときに、一人ずつ確認する手順も決めました。
たとえば、海外からの宿泊者が多いNさん
Nさんの物件には、海外からの宿泊者が多く泊まります。Nさんは、チェックインのときに旅券の呈示を求め、写しを名簿と一緒に保存しています。
旅券の写しと名簿は、作成の日から3年間たつまで取り出せるように、月ごとにまとめています。
よくある失敗とチェックリスト
よくある失敗
- 代表者の名前だけを名簿に書いていた
- 予約サイトの情報に、同行者の住所が入っていなかった
- 外国人の宿泊者の旅券番号を書き漏らした
- 保存の期間を、宿泊日から数えていた
名簿のチェックリスト
- 宿泊者全員の氏名・住所・職業・宿泊日がそろっている
- 日本に住所のない外国人の国籍と旅券番号、または旅券の写しがある
- 宿泊が始まるまでに、一人ずつ本人確認をした
- 名簿を、届出住宅か営業所・事務所に備えている
- 作成の日から3年間、取り出せる形で保存している
よくある質問
- 民泊の宿泊者名簿には、何を書けばよいですか?
- 宿泊者の氏名・住所・職業・宿泊日です。日本に住所のない外国人のときは、国籍と旅券番号も書きます。
- 代表者の名前だけでもよいですか?
- よくありません。施行要領では、宿泊者全員を書く必要があり、代表者だけの記載は認めないとしています。
- 宿泊者名簿は何年保存しますか?
- 作成の日から3年間です。届出住宅か、事業者の営業所または事務所に備えます。
- 名簿は電子データでもよいですか?
- パソコンなどのファイルに記録し、必要なときに紙に表示できれば、名簿に代えることができます。
- 外国人の旅券のコピーは必要ですか?
- 施行要領では、日本に住所のない外国人には旅券の呈示を求め、写しを名簿とともに保存するとしています。
関係する記事と相談先
民泊を始める全体の流れは「民泊の始め方」、近隣への配慮は「民泊の近隣苦情への対応」で説明しています。名簿の管理や本人確認を任せたいときは民泊の会社一覧から探すか、まとめて相談することもできます。
まとめ
- 名簿は住宅宿泊事業法8条で義務になっている
- 書く項目は氏名・住所・職業・宿泊日、外国人は国籍と旅券番号も
- 宿泊者全員を書き、泊まる前に一人ずつ本人確認する
- 作成の日から3年間、届出住宅か営業所・事務所に保存する
- 名簿の義務に違反すると、30万円以下の罰金の対象になる




