住宅宿泊管理業者への委託が必要なときは? 業務の範囲と契約前の確認点

民泊新法では、家主が不在になる場合などに住宅宿泊管理業者への委託が必要です。委託が必要になる条件、任せる業務の範囲、契約前に受ける書面の説明で確かめたいことを、法令にそって整理しました。
結論
- 住宅宿泊管理業者への委託が必要なのは、届出住宅の居室の数が5を超えるときと、宿泊者がいる間に家主が不在になるときです。
- 委託するときは、管理業務の全部を1社の住宅宿泊管理業者にまとめて任せます。
- 住宅宿泊管理業者は、契約の前に、登録番号や報酬、責任と免責、契約の解除などを書いた書面を渡して説明しなければなりません。
民泊の運営を会社に任せるとき、オーナーと住宅宿泊管理業者の間で結ぶのが管理受託契約です。
「委託が必要と言われたけれど、自分の場合も本当に必要なのか」。「契約書のどこを見ればよいのか分からない」。そんな声をよく聞きます。
この記事では、委託が必要になる条件と、契約の前に確かめたいことを、法令とガイドラインにそって説明します。
住宅宿泊管理業者とは
住宅宿泊管理業者とは、民泊のオーナーから委託を受けて、報酬を得て管理業務を行う事業者です。国土交通大臣の登録を受ける必要があり、登録は5年ごとに更新します。
管理業者には、営業所ごとの標識の掲示、従業者への証明書の携帯、帳簿の備え付けなども義務付けられています。
住宅宿泊管理業者への委託が必要になる条件
民泊新法では、次のどちらかに当たると委託が必要です。
- 届出住宅の居室の数が5を超えるとき
- 宿泊者がいる間、家主が不在になるとき
「不在」の考え方
買い物など日常の用事での外出は、一時的な不在として扱われます。ガイドラインでは、その時間は原則1時間です。近くに店がないなどの事情があれば、2時間程度までとされています。
仕事などで続けて長い時間家を空けるのは、一時的な不在に当たりません。
| こんな場合 | 委託の要否 |
|---|---|
| 家族だけが家にいて、オーナー本人がいない | 不在として扱われ、委託が必要 |
| 届け出た人が法人 | 役員や従業員がいても委託が必要 |
| 宿泊者が全員外出していて、家にいない | その間は不在に当たらない |
| オーナーの住まいが同じ建物・敷地内か隣で、自分で管理する居室が5以下 | 委託しなくてよい場合がある |
| オーナー自身が住宅宿泊管理業者の登録を受けている | 委託の義務はない |
表は、住宅宿泊事業法施行規則と観光庁のガイドラインをもとにまとめています。
同じ建物や敷地内でも、敷地が広くて騒音などに気づけないことが明らかな場合は、委託が必要です。
委託が必要かを場面で考える
たとえば、親が住む家の一部屋を民泊にしたいHさんの場合
Hさんは、親が住む実家の空いた部屋を宿泊に使いたいと考えています。届け出るのはHさんで、Hさん自身は別の家に住んでいます。
この場合、家にいるのは家族だけで、届け出たHさん本人はいません。不在として扱われるので、住宅宿泊管理業者への委託が必要です。
たとえば、自宅と同じ敷地の離れを使うIさんの場合
Iさんは、自分が住む母屋と同じ敷地にある離れを宿泊に使います。自分で管理する居室は5以下です。
この場合は、委託しなくてよい場合があります。ただし、敷地が広くて離れの騒音などに気づけないことが明らかなら、委託が必要です。判断に迷うときは、届出先の自治体に相談しましょう。
委託のしかたの決まり
1社に全部を任せる
委託は、届出住宅の管理業務の全部を、1社の住宅宿泊管理業者に契約で任せます。複数の会社に分けることや、一部をオーナーが自分で行うことはできません。
管理業者が別の会社に再委託できるのは、業務の一部だけです。全部を再委託することは、法律で禁じられています。
事前に届出の内容を伝える
委託するときは、委託しようとする管理業者に、あらかじめ届出書と添付書類の内容を伝えます。電子的な方法で伝えることもできます。
委託する業務の範囲
委託する業務は、法律で住宅宿泊事業者に求められている業務と、届出住宅の維持保全です。
- 宿泊者の衛生の確保(1人あたり3.3㎡以上の床面積、定期的な清掃と換気など)
- 宿泊者の安全の確保(非常用照明、避難経路の表示など)
- 外国人の宿泊者への外国語での案内(設備の使い方、交通、災害時の連絡先)
- 宿泊者名簿の作成と備え付け
- 騒音、ごみ、火の扱いなどについての宿泊者への説明
- 近所からの苦情や問い合わせへの対応
- 台所・浴室・便所・洗面設備や、水道・電気、ドアなどの維持保全
- 空室のときの施錠と鍵の管理
維持保全の範囲は、管理受託契約ではっきり決めておく必要があります。
契約前の書面の説明で確かめること
住宅宿泊管理業者は、契約を結ぶまでに、次のことを書いた書面を渡して説明しなければなりません。
| 書面に書かれること | 確かめたいこと |
|---|---|
| 商号や名称、登録年月日と登録番号 | 登録が有効か、更新されているか |
| 管理業務の対象となる届出住宅 | 所在地、部屋、維持保全する設備の範囲 |
| 業務の内容と実施の方法 | 清掃の回数、緊急時の連絡方法など |
| 報酬と、支払いの時期と方法 | 売上に対する割合か定額か |
| 報酬に含まれない費用 | 清掃費、リネン代、水道光熱費などの負担 |
| 業務の一部の再委託 | 再委託するか、どの業務を誰に |
| 責任と免責 | 事故や設備の破損のときの負担 |
| 契約期間 | 始まりと終わりの日 |
| 契約の更新と解除 | 解約の予告期間、違約金の有無 |
この書面の説明は、条件を確かめるいちばんの機会です。分からない言葉があれば、その場で聞きましょう。
ポイント
- 委託は、居室が5を超えるか、宿泊中に家主が不在になるときに必要
- 管理業務の全部を1社に任せる。再委託できるのは一部だけ
- 契約前の書面で、登録番号、業務の中身、報酬と別費用、責任、解除の条件を確かめる
契約で具体的に決めておきたい4つのこと
1. 苦情への駆けつけ
ガイドラインでは、苦情があったとき、必要に応じて速やかに現地へ行くことが基本です。到着までの時間は30分以内が目安で、交通の事情で時間がかかる場合は60分以内が目安です。
2. 宿泊者に退室を求める権限
注意しても迷惑行為が改善されないときは、宿泊者に退室を求めることもあります。管理業者がこれを行うには、宿泊契約を解除する権限をあらかじめオーナーから受けておく必要があります。
3. 定期報告に使う情報の受け渡し
オーナーは、毎年偶数月の15日までに、前の2か月分の宿泊日数などを自治体に報告します。管理業者から必要な情報を受け取る時期と方法を決めておきます。
4. 管理業者からの報告
管理業者は、オーナーの事業年度が終わった後と、契約期間が満了した後に、報告書を作って説明します。報告書には、業務の実施状況、設備の維持保全の状況、近所からの苦情の発生状況などが書かれます。月ごとの報告があるかも、あわせて聞いておくと安心です。
契約を結ぶときに受け取る書面
契約を結んだときにも、管理業者は遅れることなく書面を渡す決まりです。この書面には、対象の住宅、業務の実施方法、契約期間、報酬、更新や解除の定め、再委託や責任と免責の定め、オーナーへの報告に関することなどが書かれます。
管理業者は、契約ごとに帳簿をつけ、事業年度の終わりに閉じてから5年間保存します。あとで条件を確かめたいときのためにも、受け取った書面は大切に保管しましょう。
契約を結んだ後の手続き
届出のときは、管理業者から契約のときに受け取った書面の写しを添付します。すでに届け出た後で委託を始めたり、管理業者を変えたりする場合は、管理業務を始める日までに、自治体へ変更を届け出ます。
管理業者は、誇大な広告や、契約の判断に関わる大事なことを故意に伝えない勧誘を法律で禁じられています。説明と契約書が違うときは、署名の前に確かめましょう。
委託でよくある失敗
清掃会社とだけ契約してしまう
委託が必要な家で、清掃会社とだけ契約しても、法律の決まりは満たせません。管理業務の全部を任せる相手は、登録を受けた住宅宿泊管理業者です。
退室を求める権限を渡していない
迷惑行為が続いても、権限がなければ管理業者は宿泊契約を解除できません。夜中にオーナーへ連絡がつかないと、対応が遅れます。権限を渡すかどうかは、契約のときに決めておきます。
報酬に含まれない費用を見落とす
報酬の額だけを見て決めると、清掃費や水道光熱費の負担で手元に残る額が変わります。契約前の書面の「報酬に含まれない費用」を、必ず読みましょう。
変更の届出を忘れる
管理業者を変えたのに自治体へ届け出ていないと、記録と実態がずれます。新しい管理業者が業務を始める日までに、変更を届け出ます。
受け取った書面をなくす
契約前の書面や契約のときの書面は、後で条件を確かめるときの手がかりです。届出にも写しを添付します。受け取った書面は、契約書と一緒にまとめて保管しましょう。
署名の前のチェックリスト
- 登録番号と登録年月日を確かめたか
- 対象の住宅と、維持保全する設備の範囲が書かれているか
- 報酬と、報酬に含まれない費用が分かるか
- 再委託する業務と相手が書かれているか
- 苦情のときの駆けつけと、退室を求める権限を決めたか
- 定期報告に使う情報の受け渡し方を決めたか
- 解約の予告期間と違約金の有無を確かめたか
委託で出てくる言葉の言い換え
- 住宅宿泊事業者:民泊新法で届け出て、民泊を営むオーナーのこと
- 住宅宿泊管理業者:オーナーから委託を受けて、管理業務を行う国の登録業者
- 管理受託契約:オーナーと管理業者の間で、管理業務を任せるために結ぶ契約
- 維持保全:設備や建物の状態を保ち、壊れたら直すこと
- 再委託:管理業者が、任された業務の一部をさらに別の会社に頼むこと
- 免責:事故などのときに、管理業者が責任を負わない範囲のこと
よくある質問
- 住宅宿泊管理業者への委託はどんなときに必要ですか?
- 居室の数が5を超えるときと、宿泊者がいる間に家主が不在になるときです。届け出た人が法人なら、原則として委託が必要です。
- 清掃だけを別の会社に任せることはできますか?
- 委託が必要な場合は、管理業務の全部を1社の住宅宿泊管理業者に任せます。その管理業者が、清掃などの一部を再委託することは認められています。
- 住宅宿泊管理業者の登録はどう確かめますか?
- 契約前の書面に登録年月日と登録番号が書かれます。営業所の標識や、従業者の証明書でも確かめられます。
- 管理業者が業務を丸ごと別の会社に任せることはありますか?
- 業務の全部を再委託することは、法律で禁じられています。再委託できるのは一部だけで、その内容は契約前の書面で示されます。
- 管理業者を途中で変えられますか?
- 契約の解除の条件に沿って変えられます。新しい管理業者に委託するときは、業務を始める日までに自治体へ変更を届け出ます。
- 管理業者からはどんな報告を受けられますか?
- 事業年度の終わりと契約の満了の後に、業務の実施状況や苦情の発生状況などの報告書を受け取ります。
委託先を探す
民泊を扱う会社は民泊の不動産会社一覧で探せます。会社の比べ方と面談で使える質問は「民泊の運営代行会社の選び方」、届出の手順は「民泊の届出の流れ」をご覧ください。
まとめ
- 居室が5を超えるか、宿泊中に家主が不在になるなら、住宅宿泊管理業者への委託が必要
- 家族だけが家にいる場合や、届け出た人が法人の場合も、委託の対象になる
- 管理業務の全部を1社にまとめて任せる。再委託できるのは一部だけ
- 契約前の書面で、登録番号、業務の中身、報酬と別費用、責任、解除の条件を確かめる
- 駆けつけ、退室を求める権限、情報の受け渡し、報告の方法は契約で具体的に決める




