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相続

家族信託で不動産を管理する仕組みとは?向く場面・登記・税金と注意点を整理

オーナー収益革命 編集部

家族信託で不動産を管理する仕組みとは?向く場面・登記・税金と注意点を整理

家族信託は、親の不動産の管理や売却を、元気なうちに子どもなどへ任せておく仕組みです。信託法の決まりをもとに、登場人物と登記、税金のかかり方、向く場面と向かない場面を順に説明します。

結論

  • 家族信託とは、不動産などの持ち主(委託者)が、信頼できる家族(受託者)に財産の管理や処分を任せ、そこから生まれる利益を決めた人(受益者)が受け取る仕組みです。
  • 不動産を信託すると、登記の名義は受託者に移り、信託の登記をします。委託者が自分を受益者にする形が多く使われます。
  • 委託者から受託者へ名義を移す登記の登録免許税と、不動産取得税は、法律でかからないとされています。信託の登記には別に登録免許税がかかります。
  • 向くかどうかは、家族の事情や財産の中身で大きく変わります。契約の前に、司法書士・弁護士・税理士などの専門家に相談しましょう。

「父が元気なうちはいいけれど、もし判断がむずかしくなったら、アパートの修繕や売却はどうなるのだろう」。親の不動産について、こう心配する方は少なくありません。

その備えとして、最近よく耳にするのが「家族信託」です。ただ、名前は知っていても、何がどう変わるのか、ほかの方法とどう違うのかは分かりにくいものです。

この記事では、信託法などの決まりをもとに、家族信託の仕組みと登記、税金のかかり方、向く場面と注意点を整理します。家族信託が合うかどうかは家族ごとに違うため、ここでは判断の材料をそろえることを目的にしています。

家族信託とは

意味を一言で

家族信託とは、家族の間で結ぶ「信託」の呼び名です。「家族信託」という言葉は法律にはなく、信託法の信託を、家族を受託者にして使う形を指します。

信託法第2条は、信託を、特定の人が一定の目的に従って財産の管理や処分などをすべきものとすること、と定めています。

3人の登場人物

役割どんな人か不動産の例
委託者財産を預ける人アパートを持つ父
受託者財産を預かり、管理や処分をする人長男
受益者財産から生まれる利益を受け取る人父(家賃を受け取る)

委託者と受益者が同じ人になる形を「自益信託」と呼びます。父が自分を受益者にすれば、家賃は今までどおり父のものになり、管理の手間と決める役割だけが長男に移ります。

言葉の言い換え

  • 信託財産:受託者が預かって管理する財産。信託したアパートや土地など
  • 信託契約:委託者と受託者が、信託の目的や管理の方法を決めて結ぶ契約
  • 自益信託:委託者が自分を受益者にする信託
  • 信託目録:登記官が、信託の中身を明らかにするために作る記録
  • 帰属権利者:信託が終わったあとに財産を受け取る人として決めておく人

信託の始め方

信託法第3条は、信託をする方法として、契約、遺言、自分を受託者にする意思表示(自己信託)の3つを定めています。家族信託では、親と子が「信託契約」を結ぶ形が多く使われます。

不動産を信託すると何が変わるか

名義は受託者に移る

信託した不動産は、受託者の財産として扱われ、登記の名義も受託者に移ります。ただし、受託者が自由に使ってよい財産になるわけではありません。決めた目的のために管理する財産です。

信託の登記

信託法第14条は、登記をしなければ権利の移転を第三者に主張できない財産について、信託の登記をしないと信託財産であることを第三者に主張できないと定めています。

不動産登記法では、信託の登記は、所有権の移転の登記と同時に申請し、受託者が単独で申請できるとされています(第98条)。登記には、委託者・受託者・受益者の氏名と住所、信託の目的、管理の方法、信託が終わる事由などが記録されます(第97条)。

受託者の主な義務

  • 善良な管理者の注意をもって、信託の事務をする(第29条)
  • 受益者のために忠実に事務をする(第30条)
  • 信託財産を自分の財産と分けて管理する。不動産は信託の登記で分ける(第34条)
  • 帳簿を作り、毎年1回、貸借対照表などの書類を作って受益者に報告する(第37条)

第37条では、作った書類を10年間保存することも定められています。受託者は「名義を預かるだけ」ではなく、記録と報告の責任を負う役です。

ポイント

  • 家族信託は、委託者・受託者・受益者の3人で考える
  • 不動産の名義は受託者に移り、信託の登記をする
  • 委託者が受益者を兼ねれば、家賃などの利益は今までどおり親のもの
  • 受託者には、分けて管理し、記録し、報告する義務がある

家族信託が向く場面・向かない場面

向くことが多い場面

  • 親が持つアパートや貸家の、修繕・入居者の募集・契約の更新を、子が代わりに進めたい
  • 親が施設に入ったあと、空き家になる実家を売ることも視野に入れておきたい
  • 親が亡くなったあと、その財産をだれに渡すかも契約で決めておきたい

成年後見との違い

民法では、判断する力を欠く常況にある人について、家庭裁判所が後見開始の審判をできるとされています(第7条)。成年後見人が、本人の住む建物やその敷地を売ったり貸したりするには、家庭裁判所の許可が必要です(第859条の3)。

比べる点家族信託成年後見
始めるとき親と子が契約を結ぶ家庭裁判所の審判による
任せる範囲契約で決めた財産と目的本人の財産全体を、本人のために管理
自宅の売却など契約で決めた範囲で受託者が行う家庭裁判所の許可が要る

信託は契約なので、親が内容を理解して結べる時期に準備する必要があります。成年後見とどちらがよいかではなく、それぞれの役割を知ったうえで、専門家と組み合わせを考えましょう。

向かないことがある場面

  • 任せられる家族がいない、または受託者の役を引き受けられる人がいない
  • 家族の間で、財産の分け方について意見が大きく割れている
  • 信託する財産が少なく、手続きの手間に見合わない

家族信託は、相続の分け方の争いをなくす道具ではありません。家族の間の話し合いを前提に、専門家と内容を詰めることが大切です。

家族信託と税金

名義を移すときの税金

登録免許税法第7条は、委託者から受託者に信託のために財産を移す場合の移転の登記には、登録免許税をかけないと定めています。地方税法第73条の7も、委託者から受託者に信託財産を移す場合の不動産の取得には、不動産取得税をかけられないと定めています。

一方で、信託の登記そのものには登録免許税がかかります。登録免許税法の別表では、所有権の信託の登記は、不動産の価額の1,000分の4です。土地には期間を限って税率を下げる特例が設けられてきたため、登記の時点の税率を法務局や税務署で確かめてください。

贈与税とのかかわり

相続税法第9条の2は、適正な対価を払わずに信託の受益者になった人は、委託者から贈与を受けたものとみなすと定めています。

親が自分を受益者にする自益信託なら、受益者は親のままです。一方、最初から子を受益者にする形などでは、贈与税の問題が出ます。だれを受益者にするかは、税理士に相談して決めましょう。

家賃の所得はだれのものか

所得税法第13条では、信託の受益者が信託財産を持っているものとみなし、そこから生まれる収益と費用も受益者のものとして扱います。自益信託なら、アパートの家賃は今までどおり親の不動産所得になります。不動産所得の申告は不動産所得の確定申告で説明しています。

信託の不動産の赤字に注意

租税特別措置法第41条の4の2では、信託から生じる不動産所得の損失は、所得税の計算上なかったものとみなされます。信託したアパートの赤字は、ほかの所得と差し引きできない点に注意が必要です。

受託者が出す書類

国税庁の手続きの案内では、信託の受託者は「信託の計算書」を翌年1月31日までに税務署に出すとされています(所得税法第227条)。受益者が変わったときなどに出す「信託に関する受益者別(委託者別)調書」もあり、その事由が生じた月の翌月末日までが期限です(相続税法第59条第3項)。

家族信託を始める流れ

  1. 家族で、何のために、どの不動産を、だれに任せたいかを話し合う
  2. 専門家に相談し、信託が合うか、ほかの方法がよいかを確かめる
  3. 信託の目的、受託者の権限、受益者、信託が終わるときと終わったあとの財産の行き先を決める
  4. 信託契約を結ぶ。公正証書にするかも専門家と相談する
  5. 所有権の移転の登記と信託の登記を申請する
  6. 信託の財産用の口座を分け、帳簿をつけ始める
  7. 毎年、書類を作って受益者に報告し、税務署への書類も出す

決めておきたいこと

  • 受託者が病気になったときなどの、次の受託者
  • 受託者が売却や借り入れをしてよい範囲
  • 賃貸の管理を会社に任せるか、自分たちでするか
  • 信託が終わる事由と、終わったあとにだれが財産を受け取るか

信託法第163条は、信託の目的を達成したときや、受託者が欠けて新しい受託者が就かない状態が1年間続いたときなどに、信託が終わると定めています。次の受託者を決めておくことは、信託を続けるうえで大切です。

共有の不動産や相続登記が済んでいない不動産

共有名義の不動産や、前の代の相続登記が済んでいない不動産は、信託の前に名義を整える必要が出ることがあります。共有名義の解消や相続登記の義務化もあわせてご覧ください。

よくある失敗

  • 信託の口座を作らず、親の口座で家賃を受け取り続け、分けて管理できていない
  • 次の受託者を決めておらず、受託者が病気になって手続きが止まる
  • 受託者が売却や借り入れをしてよいかが契約に書かれておらず、いざというときに動けない
  • 家族の一部だけで決めてしまい、ほかの家族の理解を得ていない

場面の例

Eさんの父は、アパートを1棟持っています。最近は入居者とのやり取りが負担になり、「いずれ売るかどうかも含めて、長男に任せたい」と話すようになりました。

家族で話し合い、司法書士と税理士に相談したうえで、父を委託者と受益者、Eさんを受託者とする信託契約を結びました。家賃は今までどおり父が受け取り、修繕や管理会社との契約はEさんが進めます。父が亡くなったときにアパートをだれが受け取るかも、契約で決めました。

よくある質問

家族信託で不動産の名義は変わりますか?
変わります。登記の名義は受託者に移り、信託の登記をします。ただし受託者が自由に使える財産になるわけではありません。
家族信託をすると贈与税はかかりますか?
委託者が自分を受益者にする自益信託では、受益者は委託者のままです。対価を払わずに別の人が受益者になると、贈与とみなされます。
家族信託の登記に税金はかかりますか?
名義を移す登記は非課税ですが、信託の登記に登録免許税がかかります。所有権の信託の登記は、原則として不動産の価額の1,000分の4です。
親が認知症になってからでも家族信託はできますか?
信託は契約なので、親が内容を理解して結べることが前提です。判断の力に不安が出てきたら、早めに専門家に相談しましょう。
家族信託をすれば成年後見はいらなくなりますか?
信託できるのは契約で決めた財産だけです。それ以外の財産や手続きのために、成年後見が必要になることもあります。

次に読みたい記事と相談先

相続のあとの名義の手続きは「相続登記の義務化」、相続した実家を売るときの流れは「相続した実家の売却」で説明しています。信託したアパートの管理を任せる会社の見直しは「管理会社の変更」をご覧ください。売却も視野に入れるなら売買の会社から探せます。どこに相談すればよいか迷う方は一括相談をご利用ください。

まとめ

  • 家族信託は、委託者・受託者・受益者の3人で財産の管理を分ける仕組みです
  • 不動産の名義は受託者に移り、信託の登記をします
  • 名義を移す登記と不動産取得税はかかりませんが、信託の登記には登録免許税がかかります
  • 受益者をだれにするかで、贈与税の扱いが変わります
  • 信託したアパートの赤字は、ほかの所得と差し引きできません
  • 契約なので、親が元気なうちに、専門家と一緒に準備します

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