遺産分割調停とは?申立ての方法と費用、調停が成立しないときの審判までの流れ

相続人の話し合いがまとまらないとき、家庭裁判所で話し合う手続きが遺産分割調停です。申立ての先と費用、必要な書類、当日の進み方、成立しないときの審判への移り方を順に説明します。
結論
- 遺産分割調停とは、相続人どうしの話し合いがまとまらないときに、家庭裁判所の調停委員会が間に入って話し合いを進める手続きです。
- 申し立てる先は、相手方のうち1人の住所地の家庭裁判所か、当事者が合意で決めた家庭裁判所です。費用は、亡くなった人1人につき収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手です。
- 合意ができると調書が作られ、確定した審判と同じ効力を持ちます。合意できなければ、自動的に審判の手続きに移ります。
- 相続から10年を過ぎると、生前の贈与や介護の貢献を分け方に反映する決まりが原則として使えなくなります(民法第904条の3)。
「兄が実家に住み続けていて、話し合いに応じてくれない」。「何度話しても、家を売るか残すかで意見が割れる」。相続人どうしの話し合いが止まると、不動産は動かせなくなります。
家庭裁判所に申し立てることは、争いを大きくするようで迷う方もいます。ただ、調停は裁判官と調停委員が間に入る話し合いの場です。
この記事では、遺産分割調停の申し立て方から、当日の進み方、まとまらないときの流れまでを、裁判所の案内と法律の条文をもとに説明します。分け方そのものの考え方は「遺産分割協議で不動産を分ける方法」にまとめています。
遺産分割調停とは
調停の意味
民法第907条第2項により、遺産の分け方について相続人の話し合いがまとまらないとき、またはできないときは、各相続人は家庭裁判所に分けることを求められます。その方法の1つが調停です。
調停とは、裁判所で行う話し合いです。家事事件手続法第248条第1項により、調停委員会は裁判官1人と家事調停委員2人以上で組織されます。
協議・調停・審判の違い
| 手続き | 場所 | 決め方 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 遺産分割協議 | 相続人の間 | 全員の合意 | 遺産分割協議書を作る |
| 遺産分割調停 | 家庭裁判所 | 調停委員会が間に入り、全員が合意 | 調停調書が作られる |
| 遺産分割審判 | 家庭裁判所 | 裁判官が決める | 審判書が作られる |
調停は、あくまで全員の合意で決まります。だれかが反対し続ければ、調停は成立しません。
遺産分割調停の申立て
申し立てられる人
裁判所の案内では、申し立てられるのは共同相続人、包括受遺者(遺言で財産の一定の割合を受け取る人)、相続分を譲り受けた人です。
申し立てる先
家事事件手続法第245条第1項と裁判所の案内により、相手方のうち1人の住所地の家庭裁判所か、当事者が合意で決めた家庭裁判所に申し立てます。相手方が何人もいるときは、そのうちだれか1人の住所地で足ります。
費用
裁判所の案内では、費用は亡くなった人1人につき収入印紙1,200円分と、連絡用の郵便切手です。切手の額は裁判所ごとに違います。
弁護士に代理を頼む場合の報酬は、事務所や事案によって違います。頼む前に見積もりを書面でもらいましょう。
必要な書類
裁判所の案内にある主な書類は次のとおりです。
- 申立書1通と、相手方の人数分の写し
- 事情説明書、進行に関する照会回答書、送達場所等届出書
- 亡くなった人の出生から死亡までの戸籍と、相続人全員の戸籍
- 相続人全員の住民票または戸籍附票
- 不動産の登記事項証明書と固定資産評価証明書、預貯金の残高証明書など
申し立ての前に取れない戸籍は、あとから出せる場合があります。法定相続情報一覧図の写しで戸籍に代えられる場合もあります。
申立書の写しは相手方に送られます。書き方は感情的にならず、事実と希望を分けて書きましょう。
調停の進み方
申し立てから成立までの流れ
- 必要な書類をそろえ、家庭裁判所に申立書を出す
- 裁判所から、相続人全員に期日の呼出しが届く
- 期日に、調停委員が当事者から交互に事情と希望を聴く
- 遺産の範囲と評価、分け方を順に話し合う。必要に応じて資料の提出や鑑定がある
- 調停委員会が解決案を示したり、助言したりする
- 全員が合意すると、調停調書が作られて成立する
呼出しには出席する
家事事件手続法第258条第1項で準用する第51条により、呼び出された人は期日に出頭しなければなりません。正当な理由なく出頭しないと、5万円以下の過料の対象になります(同法第51条第3項)。
遠くに住んでいて出席が難しい人のために、調停条項の案を書面で受け入れる方法もあります(同法第270条)。
不動産の話し合いで出やすい論点
- 不動産をいくらと見るか(評価)
- だれが不動産を取得し、ほかの人にお金を払うか
- 売ってお金で分けるか
- 住み続けている相続人の扱い
お金で調整する分け方は「代償分割」、法律で決まった割合は「法定相続分」で説明しています。
ポイント
- 調停は家庭裁判所で行う話し合いで、全員の合意で決まる
- 申立ては相手方1人の住所地の家庭裁判所か、合意で決めた家庭裁判所
- 費用は亡くなった人1人につき収入印紙1,200円分と郵便切手
- 呼び出されたら出頭する。正当な理由なく欠席すると過料の対象
申し立てる前に整理すること
準備のチェックリスト
- 相続人がだれで、何人いるかを戸籍で確かめた
- 不動産、預貯金など、分ける財産の一覧を作った
- 不動産の評価の資料(固定資産評価証明書など)をそろえた
- 自分の希望と、ゆずれる点・ゆずれない点を書き出した
- 生前の贈与や介護など、主張したい事情の資料を集めた
希望を紙に書いておくと、期日で調停委員に伝えやすくなります。感情のこもった出来事と、分け方の希望は分けて書くのがこつです。
自分で進めるか、弁護士に頼むか
| 進め方 | 向いている場合 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 自分で申し立てる | 争う点が少なく、書類を自分で集められる | 書面の作り方や主張の整理に時間がかかる |
| 弁護士に頼む | 財産が多い、主張が対立している、相手に代理人がいる | 報酬は事務所や事案で違うので、先に見積もりを取る |
どちらを選んでも、期日には本人が呼び出されることがあります。弁護士に頼む場合も、事情を一番知っているのは自分だと考えて準備しましょう。
期日で気をつけること
- 相手の悪口ではなく、事実と希望を順に話す
- 分からないことは、その場で答えずに次の期日までに調べると伝える
- 調停委員から出された宿題(資料の提出など)は、期限までに出す
- 期日のたびに、決まったことと次にすることをメモに残す
調停委員は、どちらかの味方ではありません。双方の話を聴いて、合意できる点を探す役目です。言い分が通らなくても、感情的にならずに資料で示すことが大切です。
不動産の評価がまとまらないとき
不動産をいくらと見るかで意見が分かれると、話し合いが止まりがちです。裁判所の案内にあるとおり、調停では必要に応じて遺産の鑑定が行われることがあります。鑑定の費用の分担も含めて、調停委員と相談しながら進めます。
調停が成立したとき・しないとき
成立したとき
家事事件手続法第268条第1項により、合意を調書に書くと調停が成立し、その内容は確定した審判と同じ効力を持ちます。調書の内容にそって、不動産の名義を変える登記の手続きに進みます。
不動産登記法第76条の2第1項により、相続で不動産を取得した人は、取得を知った日から3年以内に登記を申請します。先に法定相続分で登記したあとに遺産分割があった場合は、分割の日から3年以内に登記が要ります(同条第2項)。くわしくは「相続登記の義務化」をご覧ください。
成立しないとき
調停委員会が合意の見込みがないと判断すると、調停は不成立で終わります(家事事件手続法第272条第1項)。このとき、調停を申し立てた時に審判の申立てがあったものとみなされ(同条第4項)、裁判官が分け方を決める審判に移ります。
裁判官が、調停に代わる審判をすることもあります(同法第284条第1項)。これに対しては、当事者が異議を申し立てられます(同法第286条第1項)。
10年の区切りに気をつける
民法第904条の3により、相続から10年を過ぎた分け方では、生前の贈与(特別受益)や介護などの貢献(寄与分)を反映する決まりが、原則として使えなくなります。10年がたつ前に家庭裁判所に分けることを求めた場合などは例外です。
また、相続から10年を過ぎたあとに調停の申立てを取り下げるには、相手方の同意が要ります(家事事件手続法第273条第2項)。
場面の例
Cさんは、母が亡くなったあと、実家に住む兄と分け方で意見が合いませんでした。何度話しても進まないため、兄の住所地の家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てました。
期日では、調停委員が兄とCさんから交互に話を聴きました。実家の評価について資料を出し合い、兄が実家を取得してCさんにお金を払う形で合意し、調書が作られました。
申し立てる前にもう一度話すか
調停の前に、手紙で希望を伝えたり、第三者を交えて話したりして、まとまることもあります。ただ、何度話しても進まない、相手が話し合いに応じないといった場合は、早めに申し立てたほうが、10年の区切りや登記の期限にも余裕を持てます。家と土地を早く売りたい事情があるなら、そのことも期日で伝えましょう。
よくある失敗
- 戸籍を集めきれず、申し立てまでに何か月もかかった
- 実家の評価の資料を用意せず、話し合いが進まなかった
- 呼出しを無視し、相手の言い分だけが先に伝わった
- 10年の区切りを知らず、贈与の主張がしにくくなった
言葉の言い換え
- 期日(きじつ):裁判所で調停が開かれる日
- 調停委員:裁判官と一緒に話を聴く、民間から選ばれた人
- 調停調書:合意した内容を裁判所が書き記した書類
- 審判:話し合いでなく、裁判官が分け方を決める手続き
- 相手方:申し立てた人以外の、手続きに加わる相続人など
よくある質問
- 遺産分割調停の費用はいくらですか?
- 裁判所の案内では、亡くなった人1人につき収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手です。弁護士に頼む場合の報酬は、事務所や事案によって違います。
- 遺産分割調停はどこの家庭裁判所に申し立てますか?
- 相手方のうち1人の住所地の家庭裁判所か、当事者が合意で決めた家庭裁判所です。
- 相手が調停に来ないとどうなりますか?
- 呼び出された人は出頭しなければならず、正当な理由なく出頭しないと5万円以下の過料の対象です。合意の見込みがなければ調停は終わり、審判に移ります。
- 調停で決まった内容には従わなければなりませんか?
- 成立した調停の調書は、確定した審判と同じ効力を持ちます(家事事件手続法第268条第1項)。調書の内容にそって、不動産の登記の手続きに進みます。
- 調停が成立しないとどうなりますか?
- 調停を申し立てた時に審判の申立てがあったものとみなされ、裁判官が分け方を決める審判に移ります。
相続した不動産のこれからを考えるときに
相続した実家を売る流れは「相続した実家の売却の流れ」、相続税の申告は「相続税の申告の流れ」で説明しています。売却を手がける会社は売買の会社の一覧から探せます。
分けたあとの不動産を売るか貸すか迷うときは、一括相談の使い方をご覧のうえ、まとめて相談してみてください。
まとめ
- 遺産分割調停は、家庭裁判所の調停委員会が間に入る話し合いの手続き
- 申立先は相手方1人の住所地の家庭裁判所か、合意で決めた家庭裁判所
- 費用は亡くなった人1人につき収入印紙1,200円分と郵便切手
- 成立すれば調書が確定した審判と同じ効力を持ち、成立しなければ審判に移る
- 相続から10年を過ぎると、贈与や貢献を反映する決まりが原則使えなくなる




