部分サブリースとは?一部の部屋だけ借上げる形の考え方と契約で決める5つの点

アパートの全部屋ではなく、一部の部屋だけをサブリース会社に借上げてもらう形があります。この記事では、部分サブリースの考え方、全部の借上げや管理委託との違い、契約で決めておく点を整理します。
結論
- 部分サブリースとは、建物の全部屋ではなく、一部の部屋だけをサブリース会社に借上げてもらう形です。残りの部屋は、オーナーが自分で貸すか、管理会社に管理を任せます。
- 賃貸住宅管理業法では、マンションの一室のような「家屋の部分」も賃貸住宅にあたります。一部の部屋の借上げでも、契約前の書面での説明(法30条)などのルールが同じようにかかります。
- 1つの建物に2つの形が混ざるので、どの部屋を借上げるか、共用部分の手入れや募集をだれが受け持つかを、契約で部屋番号まで決めておくことが大切です。
「全部をサブリースにすると手取りが減りすぎる。でも空室の心配は少し減らしたい」。そう考えたときに出てくるのが、一部の部屋だけを借上げてもらう形です。
ただ、部分サブリースは、決まった商品の名前ではありません。扱うかどうか、どんな条件にするかは、会社や物件によって違います。
この記事では、一部の部屋だけを借上げる形をどう考えればよいか、どこで迷いやすいかを説明します。サブリース全体の仕組みは「サブリースの仕組み」、借上げの契約そのものは「マスターリースとは」で整理しています。
部分サブリースとは
定義
部分サブリースとは、1つの建物のうち、契約で決めた部屋だけをサブリース会社が借上げ、入居者に又貸しする形です。借上げの対象にならない部屋は、オーナーが貸主のままです。
賃貸住宅管理業法2条1項は、賃貸住宅を「家屋又は家屋の部分」と定めています。国土交通省の解釈・運用の考え方では、「家屋の部分」はマンションの一室のような家屋の一部をいうとしています。つまり、部屋単位で借上げても、法律上の「特定賃貸借契約」にあたりえます。
言葉の言い換え
- 借上げ:サブリース会社がオーナーから部屋を借りること
- 特定賃貸借契約:法律での借上げの契約の呼び名。マスターリース契約とも言う
- 管理委託:オーナーが貸主のまま、管理だけを会社に任せること
- 共用部分:廊下・階段・ごみ置き場など、入居者が一緒に使う場所
全部の借上げ・部分の借上げ・管理委託の違い
| 項目 | 全部の借上げ | 部分の借上げ | 管理委託のみ |
|---|---|---|---|
| 入居者の貸主 | サブリース会社 | 借上げた部屋は会社、残りはオーナー | オーナー |
| 空室のときの収入 | 契約の家賃が入る(免責期間などを除く) | 借上げた部屋は契約の家賃、残りは入らない | 入らない |
| 手取りの考え方 | 会社が払う家賃 | 2つの合計 | 家賃から管理の報酬を引いた額 |
| 契約の数 | 借上げの契約1本 | 借上げの契約と、残りの部屋の契約 | 管理受託契約1本 |
| 契約前の説明 | 法30条 | 法30条と、管理を任せるなら法13条 | 法13条 |
規模が小さくても法律のルールはかかる
国土交通省の賃貸住宅管理業法のよくある質問では、営利の目的で繰り返し又貸しをするなら、規模によらずサブリース会社への規制がかかるとしています。借上げが2〜3室でも、誇大な広告の禁止(法28条)、不当な勧誘の禁止(法29条)、契約前の説明(法30条)、契約時の書面(法31条)は同じです。
一部の部屋だけ借上げるときに考えること
どの部屋を借上げてもらうか
会社が借上げを望むのは、借り手がつきやすい部屋かもしれません。オーナーが借上げてほしいのは、空きやすい部屋かもしれません。ここで考えが食い違いやすいので、部屋ごとの空室の記録を持って話し合います。
募集がぶつからないか
1つの建物で、会社が募集する部屋と、オーナー側が募集する部屋が並ぶことになります。家賃や条件が違うと、入居希望者が迷ったり、片方の部屋だけが埋まったりします。募集の窓口を一本にするか、条件をそろえるかを先に決めます。
共用部分の手入れをだれが受け持つか
廊下の電球、ごみ置き場、植え込みなどは、借上げた部屋の入居者も、そうでない部屋の入居者も使います。全部の借上げなら会社が受け持つことが多いですが、部分の借上げでは線引きがあいまいになりがちです。
共用部分の手入れの分担を決めないと、苦情の窓口が二つに割れます。入居者から見て「どこに連絡すればよいか」が一つで分かる形にしておきましょう。
契約で決めておく5つの点
国土交通省の解釈・運用の考え方では、借上げの対象となる賃貸住宅について、住戸部分(部屋番号)やその他の部分(廊下・階段など)、設備を書いて説明するよう求めています。部分の借上げでは、ここがとくに大事です。
- 対象の部屋:部屋番号で書く。入れ替えができるか、その条件も書く
- 家賃と見直し:部屋ごとか、まとめてか。見直しの時期と方法
- 共用部分と設備:清掃・点検・修繕を、だれがどこまで受け持つか
- 募集の条件:会社の部屋とオーナーの部屋で、家賃や広告をどうそろえるか
- 終わり方:一部の部屋だけ外せるか。終わったとき入居者と敷金をどう引き継ぐか
家賃の見直しは部屋が少なくても起こる
借上げの契約にも、借地借家法32条1項の借賃増減請求権が働きます。税金などの負担、建物の価格や経済事情の変化、近くの同じような建物の家賃と比べて不相当になったときは、契約の条件にかかわらず、家賃の増減を求めることができます。部屋の数が少なくても同じです。減額の考え方は「サブリースの賃料減額」で扱っています。
オーナーからの終わらせ方
借上げの契約も建物の賃貸借なので、オーナーから更新しないときは、期間が終わる1年前から6か月前までに通知します(借地借家法26条1項)。そのうえで、正当の事由が要ります(同法28条)。一部の部屋だけ借上げから外したいときも、契約の定めと話し合いが基本です。
残りの部屋をどう管理するか
自分で管理するか、管理会社に任せるか
借上げない部屋は、オーナーが貸主です。募集、家賃の集金、入居者の対応を、自分でするか、管理会社に任せるかを決めます。違いは「賃貸管理と自主管理の違い」で整理しています。
管理を任せる会社が賃貸住宅管理業者なら、管理受託契約を結ぶ前に、法13条の書面での説明を受けます。なお、管理の戸数が200戸未満の会社は、登録の義務がありません(法3条1項・施行規則3条)。登録があるかどうかも確かめておきましょう。
同じ会社に両方を任せる場合
借上げと、残りの部屋の管理を同じ会社に任せる形もあります。窓口が一本になり、募集もそろえやすくなります。ただし、契約は「借上げの契約」と「管理受託契約」の2本で、説明もそれぞれ受けます。
手取りを比べる考え方
3つの形を同じ物差しで並べる
部分サブリースを選ぶかどうかは、「全部の借上げ」「部分の借上げ」「全部の管理委託」の3つで、1年間の手取りを並べると判断しやすくなります。料金や家賃の水準は会社や物件によって違うので、必ず自分の物件の見積もりで比べます。
- 部屋ごとに、満室のときの家賃と、過去の空室の月数を書き出す
- 借上げの見積もりで、部屋ごとの借上げの家賃と、免責期間の有無を確かめる
- 管理委託の見積もりで、管理の報酬と、募集のときの費用の決まりを確かめる
- 満室の年と、空室が多かった年の2通りで、3つの形の手取りを計算する
- 手取りの差と、手間や連絡の窓口の違いを並べて決める
比べるときに落としやすい費用
- 借上げの部屋の修繕を、オーナーと会社のどちらが持つか
- 管理委託の部屋で、入居者が決まったときにかかる費用
- 共用部分の清掃や点検の費用を、どちらの契約で払うか
- 家賃が見直されたときの手取りの変わり方
会社に聞いておきたい質問
- 一部の部屋だけの借上げを扱っているか。扱うなら、部屋の選び方の考え方は
- 借上げの家賃は部屋ごとに決めるのか、まとめて決めるのか
- 借上げていない部屋の募集や管理も、一緒に受けられるか
- 借上げる部屋を入れ替えたり、減らしたりするときの条件は
聞いた答えは、重要事項説明書と契約書に同じ内容が書かれているかで確かめます。口頭の説明だけで決めないことが大切です。
部分サブリースが合う場面・合わない場面
合いやすい場面
- 空きやすい部屋が決まっていて、その部屋の収入を安定させたい
- 全部を借上げると手取りが減りすぎるが、少しは空室の心配を減らしたい
- 借上げと管理を同じ会社にまとめ、窓口を一つにできる
合いにくい場面
- 部屋ごとの家賃や条件がばらばらで、募集をそろえにくい
- 共用部分の手入れの分担を決めきれない
- 将来、建物ごと売る予定があり、契約の形を単純にしておきたい
たとえば、10室のうち2室が空きやすいBさん
Bさんのアパートは10室あり、1階の北側の2室だけが空きやすい状態でした。Bさんは、その2室を借上げてもらい、残り8室は管理会社に任せる形を考えました。
話し合いでは、会社は空きやすい2室だけの借上げには、家賃を低めにする条件を出しました。Bさんは、2室分の借上げの家賃と、8室を管理委託した場合の手取りを並べて、全部の管理委託と比べてから決めることにしました。
たとえば、相続した6室のアパートを持つEさん
Eさんは、遠くに住んだまま6室のアパートを相続しました。全部の借上げの見積もりは手取りが少なく、全部の管理委託では空室の月が心配でした。
そこでEさんは、角部屋2室を借上げにし、残り4室を同じ会社に管理委託する案を出してもらいました。部屋番号、共用部分の清掃の分担、募集の条件を表にしてもらい、3つの形の手取りと並べてから決めることにしました。
売るときの見え方
部分の借上げのまま建物を売ると、買主は借上げの契約と、残りの部屋の入居者との契約を両方引き継ぎます。契約が混ざっていると、買主が確かめることが増えます。将来売る予定があるなら、売り方も合わせて考えておきます。
よくある失敗と、決める前のチェックリスト
よくある失敗
- 「部屋番号」を契約に書かず、どの部屋が借上げか分からなくなる
- 共用部分の清掃を、お互いに相手がやると思い込む
- 会社の部屋だけ家賃を下げて募集され、オーナーの部屋が空く
- 売るときに、買主が2つの契約を引き継ぐことを嫌がる
チェックリスト
ポイント
- 借上げる部屋を、部屋番号で契約に書いた
- 共用部分・設備の手入れの分担を表にした
- 募集の窓口と条件を、どうそろえるか決めた
- 一部の部屋だけ外すときの条件を確かめた
- 全部の借上げ・管理委託と、手取りを並べて比べた
よくある質問
- 一部の部屋だけのサブリースはできますか?
- 法律上は部屋単位の借上げもありえます。ただ、扱うかどうかや条件は会社によって違うので、個別に確かめます。
- 部屋が少なくても、重要事項の説明はありますか?
- あります。営利の目的で繰り返し又貸しをする会社なら、規模によらず法30条の書面での説明が要ります。
- 借上げない部屋の入居者は、だれと契約しますか?
- オーナーと契約します。管理会社に任せる場合も、貸主はオーナーです。
- あとから借上げの部屋を増やしたり減らしたりできますか?
- 契約の定めと話し合いによります。入れ替えの条件を、最初の契約で決めておくのが安全です。
- 部分サブリースでも家賃は減額されますか?
- されることがあります。借上げの契約にも借地借家法32条1項の増減請求が働きます。
関係する記事と相談先
サブリースの得失は「サブリースのメリット」と「サブリースの注意点」、家賃保証との違いは「家賃保証とサブリースの違い」で説明しています。借上げや管理を任せる会社の候補は会社一覧から探せます。借上げと管理委託を並べて比べたいときは、まとめて相談することもできます。
まとめ
- 部分サブリースは、一部の部屋だけを借上げてもらう形で、決まった商品名ではない
- 「家屋の部分」も賃貸住宅にあたり、部屋が少なくても法30条の説明などが要る
- 対象の部屋は部屋番号で、共用部分の分担や募集の条件まで契約で決める
- 借上げの家賃は、部屋が少なくても借地借家法32条で見直されることがある
- 全部の借上げ・管理委託と、手取りを並べて比べてから決める




