空き家を店舗に転用するには?用途地域と用途変更200㎡の確認手順

空き家を店舗に転用できるかは、まず用途地域で決まり、広さによっては用途変更の確認申請が必要です。この記事では、用途地域ごとの目安と、200㎡の基準、転用までの手順を整理します。
結論
- 空き家を店舗に転用できるかは、まず「用途地域」で決まります。たとえば第一種低層住居専用地域では、店舗だけの建物は原則として建てられず、住まいと兼ねる小さな店(店の部分が50㎡以下など)に限られます。
- 店舗の部分の床面積が200㎡を超える場合は、建築基準法の「用途変更」の確認申請が必要です。200㎡以下でも、法律の基準に合わせる必要はあります。
- 飲食店なら保健所の営業許可、消防設備の確認も必要です。工事の前に、役所・保健所・消防署に事前相談するのが近道です。
「使っていない実家を、カフェや雑貨店にできないか」。空き家の活用を考える方から、よく出てくるアイデアです。住宅街の一軒家に店を開く例を見かけると、自分の家でもできそうに思えます。
ただ、住宅を店舗に変えるには、建物の場所と広さによって、守るべきルールが変わります。確かめずに改装を始めると、営業できない、工事をやり直す、といったことになりかねません。
この記事では、空き家の店舗への転用で確かめることを、用途地域、用途変更、営業の許可、消防の順に整理します。最後に、転用までの手順と、よくある失敗をまとめます。
空き家の店舗への転用とは
空き家の店舗への転用とは、住宅として建てられた建物を、物を売る店や飲食店などとして使えるように変えることです。建築基準法では、建物の使い道を変えることを「用途変更」と呼びます。
転用には、建物を店だけにする方法と、住まいの一部を店にする「兼用住宅」の方法があります。どちらが選べるかは、次の用途地域で決まります。
用途地域で決まる「店にできるか」
用途地域とは、都市計画で定める土地の使い方の区分です。都市計画法では13種類が定められ、建築基準法で、それぞれに建てられる建物が決まっています。用途を変える場合にも、このルールは当てはまります。
| 用途地域 | 店舗の扱いの目安 |
|---|---|
| 第一種低層住居専用地域 | 住まいと兼ねる店で、延べ面積の半分以上が住まい、店の部分が50㎡以下のものなどに限られる |
| 第二種低層住居専用地域 | 日用品の店や食堂・喫茶店などで、店の部分が150㎡以内、2階以下のもの |
| 第一種中高層住居専用地域 | 物品販売の店や飲食店などで、店の部分が500㎡以内、2階以下のもの |
| そのほかの住居系・商業系などの地域 | 店の種類や広さに応じて、より幅広く認められる |
表は建築基準法の別表第二と施行令の要点です。店の種類ごとに細かな条件があり、特定行政庁(建築の許可を出す役所)の許可で認められる場合もあります。必ず役所で確かめてください。
用途地域の調べ方
用途地域は、市区町村の都市計画の担当窓口で確かめられます。インターネットで都市計画図を公開している自治体も多くあります。
市街化調整区域は別の許可が要る
都市計画法では、市街化調整区域のうち開発許可を受けていない区域で建物の用途を変えるには、都道府県知事などの許可が必要です。郊外の空き家では、この点を先に確かめましょう。
用途変更の確認申請が必要になる200㎡の基準
建築基準法では、物品販売の店や飲食店などの「特殊建築物」に用途を変える場合で、その部分の床面積が200㎡を超えるときは、確認申請が必要です。工事が終わったら、建築主事などへの届け出も要ります。
| 店の部分の床面積 | 手続き |
|---|---|
| 200㎡を超える | 用途変更の確認申請が必要。工事のあとに届け出 |
| 200㎡以下 | 確認申請は不要。ただし建築基準法の基準には合わせる必要がある |
200㎡以下でも気を抜かない
確認申請が要らないことと、ルールを守らなくてよいことは別の話です。用途地域の制限は、確認申請の有無にかかわらず当てはまります。避難や防火の基準も、建築士に確かめてもらいましょう。
ポイント
- 店にできるかは、まず用途地域で決まる
- 店の部分が200㎡を超えると、用途変更の確認申請が要る
- 200㎡以下でも、用途地域や防火の基準は守る
- 市街化調整区域では、別に知事などの許可が要る
営業の許可と消防の確認
飲食店は保健所の営業許可
食品衛生法では、飲食店などの営業をするには、都道府県知事などの許可を受けることとしています。施設の基準は都道府県の条例で決まるため、台所や手洗いの設備は、改装の前に保健所に相談しましょう。
消防設備の確認
消防法では、飲食店や百貨店などの防火対象物の関係者に、消火や避難のための設備を基準に合わせて設けることを求めています。住宅のときには要らなかった設備が必要になることがあるため、管轄の消防署に事前相談しましょう。
空き家を店舗に転用するまでの手順
- 市区町村で、用途地域と、市街化調整区域かどうかを確かめる
- 開きたい店の種類と、店の部分の広さを決める
- 建築士に、建物の現況と、用途変更の手続きの要否を見てもらう
- 役所(建築)・保健所・消防署に、図面を持って事前相談する
- 200㎡を超える場合は、確認申請をして確認済証を受ける
- 改装の工事をする
- 工事が終わったら、必要な届け出と、保健所・消防の検査を受ける
- 営業の許可を受け、開業する
自分で開くか、借り手に貸すか
自分で店を開くほか、店を開きたい人に建物を貸す方法もあります。貸す場合も、用途地域と用途変更の確認はオーナー側で先に済ませておくと、借り手が見つかりやすくなります。
空家等活用促進区域を確かめる
空家特措法では、市町村が「空家等活用促進区域」を定め、空き家を店舗などに活かしやすくする特例を設けられるようになりました。お住まいの市町村が定めているかを、空き家の担当窓口に問い合わせてみましょう。
よくある失敗
- 改装を先に始めて、あとから用途地域で店が開けないと分かる
- 200㎡以下だからと、防火や避難の基準を確かめない
- 飲食店の設備を、保健所に相談しないまま作ってしまう
- 古い建物で、建てたときの図面や確認の書類が見つからない
- 店の部分の広さを、増築や物置の分を含めずに少なく見積もってしまう
失敗の多くは、順番を逆にしたことから起きます。「調べる・相談する・工事する」の順を守るだけで、やり直しの多くは防げます。特に、工事の見積もりを取る前に役所へ相談しておくと、必要な工事の範囲がはっきりし、見積もりの比べ方も分かりやすくなります。
たとえば、住宅街の実家をカフェにする場合
たとえば、第一種低層住居専用地域にある実家で、カフェを開きたいFさん。用途地域を調べると、店だけの建物にはできないと分かりました。
そこでFさんは、自分が住みながら1階の一部をカフェにする兼用住宅を考えました。延べ面積の半分以上を住まいにし、店の部分を50㎡以下にする計画です。保健所と消防署にも、図面を持って相談することにしました。
店の種類で変わる確認点
同じ「店舗」でも、何の店を開くかで、確かめることが変わります。
| 店の種類 | 主に確かめること |
|---|---|
| 雑貨・服などの物販店 | 用途地域で認められる店か、店の部分の広さ |
| カフェ・飲食店 | 用途地域、保健所の営業許可、台所と手洗いの設備、消防設備 |
| 美容院・教室など | 用途地域で認められるサービス業か、店の部分の広さ |
| 事務所 | 用途地域で認められるか。住まいと兼ねる場合は広さの条件 |
改装前に用意したい資料
- 建てたときの確認済証や検査済証、図面
- 登記事項証明書(建物の持ち主と広さが分かる書類)
- 店の部分と住まいの部分の広さが分かる、おおまかな間取り図
- 開きたい店の内容と、席の数や営業時間の予定
建てたときの書類が見つからない場合は、早めに建築士に相談しましょう。役所で、建てたときの確認の記録を調べられることもあります。
判断の分かれ道
- 用途地域で店が認められない:住まいと兼ねる形にできるか、別の使い道にするかを考える
- 店の部分が200㎡を超えそう:確認申請の手間と費用を見込み、広さを絞る案とも比べる
- 建物が古く傷みが大きい:改装より、解体して土地を活かす道も比べる。解体の支援は「空き家の解体と補助金」で説明しています
店舗として貸すときに決めておくこと
自分で店を開かず、借り手に貸す場合は、建物の手続きと契約の両方で決めておくことがあります。
工事の範囲と費用をだれが持つか
店の内装や設備の工事を、オーナーが行うのか、借り手が行うのかを決めます。借り手が工事をする場合は、どこまで変えてよいか、退去のときに元に戻すかを契約に書いておきましょう。
契約の種類を選ぶ
店舗の賃貸借も、建物の賃貸借なので借地借家法が適用されます。期間を区切りたい場合は、更新のない定期借家の契約を選ぶ方法があります。違いは「定期借家と普通借家の違い」で確かめてください。
近所への配慮
住宅街の店は、人の出入りや音、においが近所の気になることがあります。営業時間や、客の車をどこに停めるかを、借り手と事前に話し合っておくと安心です。
借り手を探す前のチェックリスト
- 用途地域で、貸したい店の種類が認められるか確かめた
- 店の部分の広さと、確認申請の要否を確かめた
- 建てたときの書類と図面をそろえた
- 工事の範囲と、退去のときの扱いを決めた
- 営業時間や駐車の扱いについて、考えをまとめた
言葉の言い換え
- 用途変更:建物の使い道を、住宅から店舗などに変えること
- 特殊建築物:店舗や飲食店、共同住宅など、多くの人が使うため建築基準法で特別な基準がある建物
- 確認申請:工事の計画が法律に合っているかを、役所や指定確認検査機関に確かめてもらう手続き
- 兼用住宅:住まいと店や事務所を、1つの建物の中で兼ねるもの
- 特定行政庁:建築の許可などを出す、都道府県や市などの役所
言葉が分かると、役所や建築士との相談がぐっと進めやすくなります。分からない言葉は、その場で遠慮なく聞きましょう。
よくある質問
- 空き家を店舗にするには、必ず確認申請が必要ですか?
- 必ずではありません。物品販売の店や飲食店などで、その部分が200㎡を超える場合に必要です。200㎡以下でも基準には合わせます。
- 住宅街の空き家でも店舗にできますか?
- 用途地域によります。第一種低層住居専用地域では、住まいと兼ねる小さな店などに限られます。
- 古民家をカフェにする場合も同じですか?
- 基本の考え方は同じです。古民家ならではの点は「古民家の活用」で説明しています。
- 用途地域はどこで調べられますか?
- 市区町村の都市計画の担当窓口で確かめられます。都市計画図をインターネットで公開している自治体もあります。
- 店舗に貸す場合、オーナーが手続きをしますか?
- 建物の用途変更は建物に関わるため、オーナーと借り手で役割を決めておきましょう。営業の許可は、店を営む人が受けるのが普通です。
関係する記事と相談先
古民家を店にする場合は「古民家の活用方法」、ほかの活かし方との比べ方は「空き家の活用方法」で説明しています。宿泊施設への転用なら「民泊・旅館業・特区民泊の違い」も参考になります。活用の提案ができる会社は会社一覧から探せるほか、まとめて相談することもできます。
まとめ
- 空き家を店舗にできるかは、まず用途地域で決まる
- 第一種低層住居専用地域では、住まいと兼ねる小さな店などに限られる
- 店の部分が200㎡を超えると、用途変更の確認申請が必要
- 飲食店は保健所の営業許可、消防設備の確認も必要
- 工事の前に、役所・保健所・消防署に図面を持って事前相談する




