空き家の水道・電気・ガスは止める?残す?判断の分かれ道と中止・再開の手続き

空き家の水道や電気は、止めれば料金や事故の心配が減り、残せば見回りや売却の準備がしやすくなります。どちらが合うかを決める分かれ道と、止めるとき・使い直すときの手続きを順に説明します。
結論
- 空き家の水道・電気・ガスを止めるか残すかに、決まった正解はありません。見回りの回数、季節と地域、これから売る・貸す・解体するかで決めます。
- よく使われる組み合わせは、ガスは閉栓、水道と電気は見回りや防犯で使うなら残し、使わないなら中止の届けを出す形です。
- 東京都水道局は、長く留守にするときは中止の届けを出すよう案内しており、届けがないと水を使っていなくても基本料金がかかります。
- 国の空家法の指針は、冬の間に給水管の元栓を閉めることを、日常的な管理の1つとして挙げています。
「だれも住んでいないのに、毎月の基本料金を払い続けるのはもったいない」。一方で、「止めてしまうと、掃除や見回りのときに困るのでは」。空き家の水道や電気は、多くの持ち主が迷うところです。
止めるか残すかで、料金だけでなく、水漏れや火事の心配、見回りのしやすさ、売るときの準備まで変わります。
この記事では、水道・電気・ガスのそれぞれについて、止める場合と残す場合の違いを比べます。そのうえで、判断の分かれ道と、止めるとき・使い直すときの手続きを順に説明します。
空き家の水道・電気を「止める」とは
言葉の言い換え
- 中止(解約):水道局や電力会社・ガス会社との契約を止めること。料金の請求も止まる
- 閉栓:ガスや水道の栓を閉めて、使えないようにすること
- 元栓:家に入る水道やガスを、まとめて止める栓
- 給水装置:水道メーターの前後の管や蛇口など、家に水を届ける設備
- 封水:排水口の奥にたまって、下水のにおいや虫を止める水
契約を止めることと、栓を閉めることは別
「止める」には、契約を止める(料金が止まる)ことと、栓を閉める(物理的に使えなくする)ことの2つがあります。たとえば水道の契約は残したまま、冬だけ元栓を閉める、という組み合わせもできます。
水道・電気・ガスを止める場合と残す場合の比較
| 設備 | 残すと助かること | 残すと気をつけること | 止めると助かること | 止めると困ること |
|---|---|---|---|---|
| 水道 | 掃除・通水・草木の水やりができる | 漏水・凍結で水が出続けるおそれ | 漏水の心配が減り、料金が止まる | 通水や掃除の水を持って行く必要がある |
| 電気 | 照明・換気扇・防犯機器・掃除機が使える | 古い配線や機器からの出火の心配 | 漏電や電気火災の心配が減る | 暗い中での点検になる。防犯機器は電池式に限られる |
| ガス | 管理ではほとんど使わない | 使わないのに料金がかかることがある | 使わない設備の心配が減る | 再開には開栓の手続きが要る |
水道を残すときの注意
東京都水道局の案内では、給水装置は水道メーターを除いてお客さまの財産とされています。メーターから蛇口までの間の漏水は、お客さまの負担で修理するよう求められています。
だれも住んでいない家で漏水が起きると、気づくまで水が出続けます。水道を残す場合は、見回りのたびに、蛇口を全部閉めた状態で水道メーターが動いていないかを確かめましょう。
電気を残すときの注意
消防白書(令和2年版)は、地震で長く停電したあと、電気が戻ったときに火が出る「通電火災」を紹介しています。倒れた家具で傷んだ配線や、可燃物に触れた暖房器具に電気が流れて火が出るものです。
人がいない空き家では、こうした火に気づく人がいません。電気を残すなら、使わない家電のコンセントを抜き、配線の傷みを点検しておきます。消防白書は、事前の対策として感震ブレーカー(大きな揺れを感じると自動で電気を止める器具)を付けることも挙げています。
電気を止めると、防犯のためのセンサーライトや録画式のカメラが使えなくなります。防犯の機器を使うかどうかも、止める前に決めておきましょう。
判断の分かれ道:止めるか残すかを決める5つの問い
1. どれくらいの間隔で見回るか
月に何度も通うなら、水道と電気がある方が掃除も点検も楽です。年に数回しか行けないなら、漏水や漏電の心配を減らすために止める考え方もあります。
2. 冬に水道管が凍る地域か
東京都水道局は、気温が下がると屋外の露出した水道管の中の水が凍り、断水したり破損したりすることがあるとして、保温材を巻くなどの備えを勧めています。
国の空家法の基本指針も、日常的な管理として、冬の間に給水管の元栓を閉めることを挙げています。寒い地域では、水道の契約を残す場合でも、冬は元栓を閉めて水抜きをしておく考え方が合います。
3. 近く売る・貸す・解体する予定があるか
- 売る予定:内見や片づけ、建物の調査で、電気と水道があると進めやすい
- 貸す予定:リフォームの工事や掃除で使うことが多い
- 解体する予定:解体の前に、電気の引き込み線やガスの配管の撤去を、それぞれの会社に頼む必要がある
使い道がまだ決まっていない場合は、空き家の活用方法で選択肢を比べてから決めると、二度手間を防げます。
4. 防犯の機器を使うか
センサーライトや録画式のカメラを家の電気で動かすなら、電気は残します。
5. 家の設備が古くないか
古い配線や給湯器、水まわりの劣化が気になる家ほど、使わない設備は止めておく方が安心です。
ポイント
- 見回りが多いなら水道と電気を残し、少ないなら止める考え方もある
- 寒い地域は、冬は元栓を閉めて水抜きをする
- 売る・貸す予定があるなら、準備の間は残す方が進めやすい
- ガスは管理でほとんど使わないため、閉栓することが多い
止めるときの手続きの流れ
水道を止める
- 水道局(市区町村の水道の窓口)の連絡先と、お客さま番号を、検針票や請求書で確かめる
- 中止の日を決めて、前もって連絡する。東京都水道局は3〜4日前までの連絡を求めている
- 最後の料金の精算方法を確かめる
- 寒い地域では、元栓を閉めて水抜きをする
東京都水道局の案内では、家の改築や長く留守にするなどで、一時的に水道を止めたいときも「中止届」を出すとされています。届けがないと、水道を使っていなくても基本料金がかかります。手続きや窓口は水道事業者ごとに違うため、物件のある地域の水道局に確かめましょう。
電気を止める
- 検針票や契約の画面で、契約している電力会社とお客さま番号を確かめる
- 電力会社に解約(使用の停止)を申し込む
- 家の中の分電盤のブレーカーを切っておく
ガスを止める
- 都市ガスかプロパンガスかを確かめる
- 契約しているガス会社に閉栓を申し込む。立ち会いが要るかを確かめる
- プロパンガスの場合は、ボンベの扱いもガス会社に相談する
使い直すときの手続き
再開の手続き
東京都水道局は、もう一度水道を使い始めるときは、使用開始の申し込みをするよう案内しています。電気やガスも、使い直すときは改めて申し込みます。ガスの開栓は、ガス会社の作業が必要です。
売る・貸すと決めてから慌てないよう、内見や工事の予定が決まったら、早めに再開の段取りをしましょう。
相続のあとは名義も確かめる
亡くなった方の名義のままになっている契約は、だれが料金を払い、だれが手続きをするのかが曖昧になりがちです。相続人のだれが窓口になるかを決め、契約の名義や支払い方法を確かめておきます。不動産そのものの名義は相続登記の義務化で説明しています。
使用の状況は「空き家かどうか」の判断にも使われる
国の指針の考え方
空家法の基本指針では、市区町村が空き家かどうかを判断するとき、建物の用途や人の出入りに加えて、電気・ガス・水道の使用状況や、使える状態にあるかどうかも見るとされています。おおむね年間を通して使われていないことが、1つの基準になります。
国土交通省のガイドラインでは、市区町村が持ち主を探すとき、水道・電気・ガスの供給事業者が持つ情報を確かめることがある、とも書かれています。
止めることが悪いわけではない
ライフラインを止めても、それだけで問題になるわけではありません。大切なのは、止めても残しても、見回りと手入れを続けることです。管理が行き届かないと、市区町村から指導や勧告を受けることもあります。詳しくは管理不全空家と固定資産税をご覧ください。
よくある失敗と場面の例
よくある失敗
- 水道を止めたのに、元栓を閉めずに冬を越し、屋外の管が傷む
- 電気を止めたため、防犯のセンサーライトが使えなくなる
- 水道を止めたあと、排水口の封水が乾いて家じゅうに下水のにおいがこもる
- 解体の直前になって、電気やガスの撤去の手配を忘れていたと気づく
国の基本指針は、排水口の封水切れを点検の対象とし、定期的に封水を注ぐことを挙げています。水道を止めている場合は、見回りのときに水を持って行き、排水口に注ぎましょう。
水道・電気を止めている家の見回りの持ち物
- 排水口に注ぐ水と、掃除に使う水
- 懐中電灯(電池の残りも確かめる)
- 家の鍵と、分電盤やメーターの場所のメモ
- 水道局・電力会社・ガス会社のお客さま番号と連絡先のメモ
- 前回の見回りの記録と、写真を撮るためのスマートフォン
判断の早見
- 毎月通う、近く売る・貸す:水道と電気を残し、ガスは閉栓
- 年に数回しか行けない:水道と電気も止め、見回りの日だけ水を持って行く
- 雪や凍結の心配がある:冬は元栓を閉めて水抜きをし、春に戻す
場面の例
Dさんの実家は、雪の多い地域にあります。春から秋は月に一度見回り、掃除と草取りに水道と電気を使います。冬は見回りが難しいため、雪が降る前に元栓を閉めて水抜きをし、ブレーカーも切ることにしました。
ガスは管理で使わないため、相続のあとすぐに閉栓しました。来年売るかどうかを決めたら、内見に合わせて水道と電気をどうするか見直す予定です。
よくある質問
- 空き家の水道は止めた方がいいですか?
- 見回りや掃除で使うなら残し、ほとんど行けないなら止める考え方があります。寒い地域では、契約を残しても冬は元栓を閉めて水抜きをします。
- 使っていなくても水道の基本料金はかかりますか?
- 東京都水道局の案内では、中止の届けがないと、水を使っていなくても基本料金がかかります。ほかの地域も、物件のある水道局に確かめましょう。
- 空き家の電気を止めるデメリットは何ですか?
- 照明や換気扇、防犯の機器が使えなくなることです。点検は明るい時間に行い、防犯の機器は電池式を選ぶなどの工夫が必要です。
- ガスは止めてもいいですか?
- 管理でガスを使うことはほとんどないため、閉栓することが多い設備です。閉栓や開栓の手続きは、契約しているガス会社に確かめます。
- 売るまでの間はどうすればいいですか?
- 内見や片づけ、建物の調査で使うことが多いため、水道と電気は残すか、予定に合わせて早めに再開するのが進めやすい方法です。
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まとめ
- 水道・電気・ガスを止めるか残すかは、見回り・季節・次の使い道で決めます
- 水道は、届けを出さないと使っていなくても基本料金がかかることがあります
- 寒い地域では、冬は元栓を閉めて水抜きをするのが国の指針にも沿った管理です
- 電気を残すなら、使わない家電のコンセントを抜き、配線の傷みを点検します
- ガスは管理でほとんど使わないため、閉栓することが多い設備です
- 止めても残しても、見回りと手入れを続けることが一番大切です




