抵当権抹消の手続きと必要書類|法務局への申請4ステップと登録免許税

住宅ローンを完済しても、抵当権の登記は申請しないと消えません。金融機関から届く書類、登録免許税の計算、法務局への申請の4ステップを、法務省の案内にそって整理します。
結論
- 抵当権抹消とは、住宅ローンを完済したあとも登記記録に残っている抵当権の登記を、法務局(登記所)への申請で消す手続きです。
- 完済すると、金融機関から登記識別情報(または登記済証)、解除証書や弁済証書などの登記原因証明情報、委任状が届きます。これに自分で作る登記申請書を添えて出します。
- 登録免許税は不動産1個につき1,000円です。土地1個と建物1個なら2,000円になります。
- 申請先は不動産の所在地を管轄する法務局で、窓口への持参・郵送・オンラインのいずれかで申請できます。
「ローンを払い終えたら、金融機関から分厚い封筒が届いた。これをどうすればいいのか分からない」。完済したあとに、こうした声をよく聞きます。
封筒の中身は、抵当権の登記を消すための書類です。ただし、書類が届いただけでは登記は消えません。所有者が法務局に申請して、初めて登記記録から抵当権が消えます。
この記事では、抵当権抹消に必要な書類、登録免許税の計算、申請書の作り方と出し方を、法務省民事局の案内(令和6年4月版)にそって順に説明します。
抵当権抹消とは
抵当権と抵当権抹消の意味
抵当権とは、お金を貸した金融機関が、返済されないときに不動産から優先して回収できる権利です。住宅ローンを組むと、家と土地に抵当権が設定され、その内容が登記されます。
抵当権抹消とは、完済などで抵当権が消えたあとに、登記記録に残った抵当権の登記を消す手続きです。法務省の案内では、住宅ローンの完済などで抵当権の登記を抹消する手続きとして説明されています。
完済しただけでは登記は消えない
ローンを完済すると、権利としての抵当権は消えます。しかし、登記記録の上では、申請するまで抵当権の登記が残ったままです。
登記記録は、誰でも登記事項証明書で見ることができます。抵当権の登記が残っていると、外から見るとまだ担保がついている家に見えます。
抹消を後回しにすると困る場面
- 家を売るとき:買主は担保のない状態で引き渡しを受けたいと考えます
- 新しく借入れをするとき:担保に入れる前に、古い登記の整理を求められることがあります
- 相続のとき:相続人が手続きをするころには、書類のありかや事情が分からなくなっていることがあります
法務省の案内も、書類を受け取ったら紛失や汚れに気をつけ、できるだけ速やかに申請するよう勧めています。
抵当権抹消に必要な書類(法務局)
申請に必要な書類の一覧
必要な書類は、自分で作る登記申請書と、金融機関から届く添付書類です。添付書類のことを、登記の言葉で「添付情報」と呼びます。
| 書類 | 用意する人 | 中身と確かめる点 |
|---|---|---|
| 登記申請書 | 所有者が自分で作る | 法務局のホームページに様式がある |
| 登記識別情報(または登記済証) | 金融機関から届く | 抵当権を登記したときの、金融機関側の書類 |
| 登記原因証明情報 | 金融機関から届く | 「解除証書」「弁済証書」など。日付や不動産の表示を確かめる |
| 会社法人等番号 | 金融機関の書類に書かれている | 金融機関の番号を申請書に書く |
| 代理権限証明情報(委任状) | 金融機関から届く | 日付などの書き漏れがないか確かめる |
| 登録免許税(収入印紙) | 所有者が用意する | 不動産1個につき1,000円 |
法務局(登記所)は、登記申請書の作成を代わりに行うことはできません。手続きの案内は予約制なので、各法務局のホームページで予約方法を確かめてから出かけましょう。
書類を受け取ったら最初に確かめること
書類が届いたら、すぐに中身を確かめます。書き漏れがあれば、申請の前に金融機関に問い合わせます。
- 解除証書や弁済証書の日付は書かれているか
- 不動産の表示(所在・地番・家屋番号など)に漏れはないか
- 委任状の日付は入っているか
- 金融機関の住所と名称が、登記記録と同じか
金融機関の住所や名称が登記記録と違うときは、変わった経緯が分かる書類(商業登記簿謄本など)が別に必要になることがあります。合併などで名称が変わった金融機関では、とくに確かめておきましょう。
抵当権抹消の登録免許税
不動産1個につき1,000円
抵当権抹消の登録免許税は、不動産(土地または建物)1個につき1,000円です。数えるのは「物件の数」で、借りた金額は関係ありません。
| 物件の例 | 数え方 | 登録免許税 |
|---|---|---|
| 戸建て(土地1筆・建物1個) | 2個 | 2,000円 |
| マンション(建物1個・敷地権の土地1筆) | 2個 | 2,000円 |
| マンション(建物1個・敷地権の土地3筆) | 4個 | 4,000円 |
マンションでは、敷地権の土地が複数の筆に分かれていることがあります。その場合、土地の数だけ1,000円ずつ加えます。土地の数は登記事項証明書で確かめられます。
納め方は収入印紙が基本
登録免許税は、金額分の収入印紙で納めるのが基本です。現金を国(税務署など)に納めて、その領収証書を出す方法もあります。
収入印紙は申請書に直接貼りません。別の白紙(台紙)に貼り、申請書と一緒にホチキスでとじて、申請書と台紙の間に契印をします。収入印紙そのものには押印しません。
抵当権抹消の手続きの流れ(4ステップ)
自分で申請するときの流れ
- 登記申請書を作る(法務局ホームページ「不動産登記の申請書様式について」の様式を使う)
- 登録免許税を納める(収入印紙を台紙に貼り、申請書ととじる)
- 管轄の法務局に申請書と添付書類を出す(窓口に持参・郵送・オンライン)
- 登記完了証を受け取る(窓口か郵送)
申請書の作り方の決まり
申請書はA4の丈夫な紙に、片面で印刷します。手書きなら黒のインクやボールペンを使い、消せるペンや鉛筆は使えません。
申請書が複数枚になるときは、つづり目に契印をします。申請書と収入印紙の台紙は、左の余白の2か所をホチキスでとめます。添付書類はその後ろにクリップなどでまとめます。
申請書のおもな書き方
- 登記の目的:「抵当権抹消(順位番号後記のとおり)」と書く
- 原因:抵当権が消えた日と原因を書く(例「令和2年7月1日解除」)
- 権利者:所有者(共有なら全員)の住所と氏名。登記記録と同じにする
- 義務者:金融機関の住所・名称・会社法人等番号・代表者の氏名
- 連絡先:平日の日中につながる電話番号
- 不動産の表示:登記事項証明書のとおりに書く
不動産番号(13桁)を書けば、不動産の表示の一部を省けます。ただし不動産番号の記載は任意なので、分からなければ書かなくてかまいません。
出し方と受け取り方
登記識別情報を書いた書面は封筒に入れて封をします。封筒には金融機関の名称、「抵当権抹消」、登記識別情報を書いた書面が入っていることを書きます。
郵送するときは、封筒の表に「不動産登記申請書在中」と書き、書留で送ります。完了証を郵送で受け取るなら、宛名を書いた返信用封筒と書留分の切手を同封します。窓口で受け取るなら、申請書に押したものと同じ印鑑を持っていきます。
オンライン申請の方法は、法務局ホームページの「住宅ローン等を完済した(抵当権抹消の登記をオンライン申請したい方)」のページで案内されています。
住所や名前が変わっている場合は先に変更登記
登記記録の住所と今の住所が違うとき
申請書の権利者の住所と氏名は、登記記録と一致している必要があります。引っ越しで住所が変わったのに登記を直していない場合は、抵当権抹消の前に、住所を変える登記が別に必要です。
住宅ローンを組んだあとに住み替えた方や、結婚で姓が変わった方は、ここでつまずきやすくなります。先に登記事項証明書を取り、登記記録の住所と氏名を確かめましょう。
住所等の変更登記は2026年4月1日から義務
法務省によると、2026年(令和8年)4月1日から、不動産の所有者は住所や氏名が変わった日から2年以内に変更登記を申請する義務を負います(不動産登記法76条の5)。正当な理由なく怠ると、5万円以下の過料の対象になります。
施行日より前に住所が変わり、変更登記をしていない場合も対象です。この場合の期限は2028年(令和10年)3月31日までです。抵当権抹消とあわせて、住所の変更登記も済ませておくと二度手間になりません。
ポイント
- 抵当権抹消は、ローン完済後に所有者が申請して初めて登記から消える
- 書類は金融機関から届くものと、自分で作る申請書の組み合わせ
- 登録免許税は不動産1個につき1,000円。マンションは敷地権の土地の数も数える
- 住所や氏名が登記と違うときは、先に変更登記が必要
自分で申請するか司法書士に頼むか
2つの方法の違い
抵当権抹消は、所有者が自分で申請することも、司法書士に頼むこともできます。法務省の案内でも、専門家に相談したい場合は司法書士・弁護士に相談するよう書かれています。
| 比べる点 | 自分で申請 | 司法書士に依頼 |
|---|---|---|
| かかるお金 | 登録免許税と郵送料など | 登録免許税に加えて報酬(事務所によって違う) |
| 手間 | 申請書の作成・提出・受領を自分で行う | 書類を渡して任せられる |
| 向いている場面 | 住所の変更がなく、書類がそろっている | 住所変更・相続・売却が重なっている |
司法書士に頼んだ方がよい場面
- 所有者が亡くなっていて、先に相続の登記が必要
- 住所変更登記や氏名変更登記もあわせて必要
- 金融機関の名称が変わっていて、追加の書類が必要
- 売却の決済日に合わせて、抹消と名義の移転を同時に進めたい
売却と同時に進める場合は、買主側の登記とあわせて司法書士が手続きをするのが一般的です。売却の流れは「不動産売却の流れ」で確かめられます。
抵当権抹消でよくある失敗とチェックリスト
よくある失敗
1つめは、書類を受け取ったまましまい込むことです。数年たってから申請しようとして、書類の一部が見つからなくなる例があります。
2つめは、管轄違いです。申請先は「住んでいる場所」ではなく「不動産の所在地」を管轄する法務局です。管轄は法務局ホームページの「管轄のご案内」で確かめます。
3つめは、収入印紙の扱いです。申請書に直接貼ったり、印紙に押印したりしないようにしましょう。
出す前のチェックリスト
- 申請先の法務局(管轄)は合っているか
- 申請書に連絡先の電話番号と押印はあるか
- 複数枚のつづり目に契印をしたか
- 収入印紙を台紙に貼り、申請書との間に契印をしたか
- 添付書類はすべてそろい、日付の書き漏れはないか
- 原本を返してほしい書類は、写しに「原本に相違ありません」と書いて添えたか
- 郵送で受け取るなら、返信用封筒と切手を入れたか
解除証書などの原本を手元に残したいときは、写しを添えて原本の返還を求めることができます。ただし、申請のためだけに作った書類などは返されないことがあります。
よくある質問
- 抵当権抹消は自分でできますか?
- できます。金融機関から届く書類と、自分で作る登記申請書、収入印紙をそろえて法務局に出します。住所変更や相続が重なる場合は、司法書士に頼むと進めやすくなります。
- 抵当権抹消の費用はいくらですか?
- 登録免許税は不動産1個につき1,000円です。戸建てで土地1筆と建物1個なら2,000円です。司法書士に頼む場合は、別に報酬がかかり、金額は事務所によって違います。
- 抵当権抹消はいつまでに申請すればよいですか?
- 法務省の案内は、書類を受け取ったらできるだけ速やかに申請するよう勧めています。後回しにすると、書類の紛失や、売却・相続のときの手間につながります。
- 登記識別情報の書面は返してもらえますか?
- 法務省の案内では、登記識別情報を書いた書面は、登記が完了したあとも返されないとされています。
- 抵当権抹消はオンラインで申請できますか?
- できます。方法は法務局ホームページの、抵当権抹消をオンライン申請したい方向けのページで案内されています。
売却や相続とあわせて考える
抵当権抹消は、売却や相続の手続きと重なることがよくあります。売却に必要な書類は「不動産売却の必要書類」、相続の登記は「相続登記の義務化」もあわせてご覧ください。売却や活用の進め方をまとめて相談したい場合は「一括相談の使い方」で手順を説明しています。売却を任せる会社は「売買の会社一覧」から探せます。
まとめ
- 抵当権抹消は、ローン完済後に法務局へ申請して登記から抵当権を消す手続き
- 書類は金融機関から届く添付書類と、自分で作る登記申請書
- 登録免許税は不動産1個につき1,000円。敷地権の土地も1個ずつ数える
- 申請先は不動産の所在地を管轄する法務局。持参・郵送・オンラインで出せる
- 住所や氏名が変わっていれば先に変更登記。2026年4月1日から義務になっている




