マスターリースとは?意味とサブリースとの違い、契約前に確かめる14の項目

マスターリースとは、オーナーがサブリース会社に建物を貸す契約のことです。この記事では、言葉の意味とサブリースとの違い、法律で決まった契約前の説明14項目と、確かめ方を整理します。
結論
- マスターリースとは、建物のオーナーがサブリース会社に建物を貸す契約のことです。賃貸住宅管理業法では「特定賃貸借契約」と呼びます。
- サブリース会社が入居者に又貸しする契約は「転貸借」で、この2つの契約を合わせた仕組み全体を、一般にサブリースと呼びます。
- マスターリース契約を結ぶ前には、サブリース会社が書面を渡して説明することが法律で義務づけられています。説明の項目は省令で14項目と決まっています。
「マスターリースとサブリースは、何が違うのですか」。借上げの提案を受けたオーナーから、よく聞かれる質問です。言葉が似ていて、資料によって使い方もまちまちなので、混乱するのは無理もありません。
ただ、言葉の違いが分からないままだと、自分がどの契約にサインするのか、だれに何を求められるのかがぼやけます。
この記事では、マスターリースの意味を先に言い切ります。そのうえで、サブリースとの違いを表で整理し、契約前に確かめる14の項目と、よくある誤解を説明します。
マスターリースとは
マスターリースとは、オーナー(貸主)がサブリース会社(借主)に、建物をまとめて貸す契約です。サブリース会社は、借りた建物を入居者に又貸しすることを目的にしています。
賃貸住宅管理業法では、賃貸住宅を第三者に又貸しする事業を営むことを目的とした賃貸借契約を「特定賃貸借契約」と定めています。この特定賃貸借契約が、一般にマスターリース契約と呼ばれるものです。国土交通省のガイドラインも、この言い方を使っています。
言い換えると
- マスターリース=オーナーとサブリース会社の「借上げ」の契約
- 転貸借=サブリース会社と入居者の「又貸し」の契約
- サブリース=この2つを組み合わせた仕組み全体(転貸借だけを指すこともある)
マスターリースとサブリースの違い
2つの契約は、当事者も、お金の流れも違います。表で比べてみましょう。
| 項目 | マスターリース(特定賃貸借) | 転貸借(サブリース) |
|---|---|---|
| 貸す人 | オーナー | サブリース会社 |
| 借りる人 | サブリース会社 | 入居者 |
| 支払われるお金 | サブリース会社がオーナーに払う賃料 | 入居者がサブリース会社に払う家賃 |
| 主に関わる法律 | 民法・借地借家法・賃貸住宅管理業法 | 民法・借地借家法 |
| オーナーとの関係 | オーナーが直接の当事者 | オーナーは当事者ではない |
オーナーが向き合う相手はサブリース会社
マスターリースでは、オーナーにとっての借り手はサブリース会社です。入居者がいるかどうかに関係なく、オーナーはサブリース会社と結んだ契約の条件で賃料を受け取ります。家賃保証との違いは「家賃保証とサブリースの違い」で説明しています。
サブリース会社も「借り手」として守られる
マスターリース契約も建物の賃貸借なので、借地借家法が適用されます。賃料の増減の請求や、オーナーからの更新拒絶に正当の事由が要る決まりは、サブリース会社にも当てはまります。
国土交通省のガイドラインでは、オーナーからの解約には正当の事由が必要なことや、将来家賃が変わりうることを明らかにしないまま契約させる事態が多く起きていたと説明しています。
法律で決まったマスターリースのルール
賃貸住宅管理業法は、マスターリースを結ぶサブリース会社(特定転貸事業者)に、次のようなルールを定めています。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 28条 | 賃料・維持保全の方法・解除などについて、事実と大きく違う広告や、実際よりよく見せる広告をしてはならない |
| 29条 | 勧誘のときに、判断に影響する大事なことをわざと告げなかったり、うそを告げたりしてはならない |
| 30条 | 契約を結ぶ前に、書面を渡して説明しなければならない |
| 31条 | 契約を結んだら、遅れずに契約の内容を書いた書面を渡さなければならない |
| 32条 | 業務と財産の状況を書いた書類を備え置き、求めに応じて見せなければならない |
違反したときの扱い
国土交通大臣は、28条から32条に違反したサブリース会社に指示をしたり、1年以内の期間で業務の停止を命じたりできます。30条・31条の書面を渡さなかったり、うその書面を渡したりした場合は、50万円以下の罰金の対象です。
勧誘する人にもルールがある
28条と29条は、サブリース会社だけでなく、サブリース会社に頼まれて勧誘する「勧誘者」にも当てはまります。ガイドラインでは、建設会社や不動産会社が、特定のサブリース会社の資料を使って勧める場合なども例に挙げています。
契約前に確かめる14の項目
賃貸住宅管理業法の施行規則は、契約前に説明する事項を14項目に定めています。説明を受けるときは、この一覧を手元に置き、一つずつ印をつけていきましょう。
- サブリース会社の名前と住所
- 対象となる賃貸住宅
- 受け取る賃料の額・支払日・支払方法と、その変更に関すること
- サブリース会社が行う維持保全(点検・清掃・修繕など)の方法
- 維持保全の費用をどちらが負担するか
- 維持保全の実施状況をオーナーに報告する方法
- 損害賠償額の予定や違約金
- 責任と免責に関すること
- 契約期間
- 入居者の資格など、又貸しの条件
- 維持保全の内容を入居者に知らせる方法
- 契約の更新と解除に関すること
- 契約が終わったときに、サブリース会社の権利と義務をどう引き継ぐか
- 借地借家法など、関係する法令の概要
ポイント
- マスターリースはオーナーとサブリース会社の契約
- 契約前に、書面での説明が法律で義務づけられている
- 説明の項目は14項目。賃料の変更と解除は特に念入りに
- 契約が終わったら、オーナーが入居者に貸す側を引き継ぐ
説明から契約までの期間
国土交通省のガイドラインでは、説明から契約までに1週間程度の十分な期間をおくことが望ましいとしています。その場で署名を求められても、持ち帰って読み直す時間をとりましょう。
特に念入りに見たい3つ
- 賃料の変更:見直しの時期と、借地借家法による減額の請求がありうること
- 費用の分担:経年劣化の修繕など、どの費用がオーナー負担になるか。業者の指定があるか
- 契約の終わり方:オーナーから解約するときの条件と、終わったあとの入居者の扱い
ガイドラインでは、契約が終わったとき、オーナーが入居者に貸す側の立場を引き継ぐ定めを設けることとしています。その場合、正当の事由なく入居者の更新を断れないことや、サブリース会社の敷金を返す義務を引き継ぐことを、オーナーが分かるようにするよう求めています。
マスターリースでよくある誤解
「家賃保証」だから賃料は変わらない
ガイドラインでは、「家賃保証」などと広告する場合、そのすぐそばに、定期的な見直しがあることや、借地借家法により減額されることがあることを書くよう求めています。保証という言葉は、賃料がずっと同じという意味ではありません。
「30年借上げ」なら30年は解約されない
ガイドラインは、期間中でもサブリース会社から解約することがありうるのに、解約されないと思わせる表示をしないよう求めています。期間の長さと、途中で終わる条件は、分けて確かめましょう。
「やめたくなったら、いつでもやめられる」
オーナーから更新を断るには、借地借家法の正当の事由が必要です。中途解約の条項があっても同じです。やめ方は「サブリースの解約」で確かめておきましょう。
マスターリースを結ぶか迷ったときの判断の分かれ道
場面ごとの考え方
- 新しくアパートを建てる提案と一緒に勧められた:建てる契約と借上げの契約を分けて考え、借上げの条件だけでも収支が成り立つかを確かめる
- 相続した物件に、すでにマスターリースが付いている:自分が貸主の立場を引き継いでいるので、契約書を取り寄せて中身を確かめる
- 今の管理委託から借上げに切り替える提案を受けた:今の手取りと、借上げにした後の手取りを、修繕費まで含めて比べる
説明の場でのチェックリスト
- 説明する人の名前と、説明書を受け取った日を控えたか
- 賃料の見直しの時期と、減額の請求がありうることの説明を受けたか
- 修繕費のうち、オーナーが払うものの一覧をもらったか
- 契約が終わったあとの入居者と敷金の扱いを聞いたか
- 分からない言葉を、その場で質問できたか
たとえば、建築とセットで勧められた場合
たとえば、土地を持つGさんは、アパートの建築とマスターリースをセットで勧められました。Gさんは、14の項目の一覧を手元に置いて説明を受けました。賃料の見直しの時期と修繕費の分担の答えを書き留め、1週間かけて家族と読み直してから返事をすることにしました。
契約したあとに見続けること
マスターリースは、結んで終わりではありません。契約の期間中も、次の点を定期的に確かめましょう。
- 契約どおりの日に、契約どおりの額の賃料が入っているか
- 維持保全の実施状況の報告を、契約で決めた頻度で受けているか
- 賃料の見直しの時期が近づいていないか
- 修繕の提案を受けたとき、費用の分担が契約と合っているか
- サブリース会社から減額の話があったとき、書面で根拠の説明を受けたか
国土交通省のガイドラインでは、サブリース会社が賃料の減額を求めるときは、その前に、変更しようとする額と設定の根拠などを、書面を渡して説明する必要があるとしています。口頭だけで話が進みそうなときは、書面を求めましょう。
書類は1か所にまとめて保管する
契約前の説明書、契約後の書面、毎回の報告書、賃料の入金の記録は、1つのファイルにまとめておきましょう。相続や売却のときにも、そのまま役立ちます。家族にも、どこに何があるかを伝えておくと、もしものときに慌てずに済みます。
よくある質問
- マスターリースとサブリースは同じ意味ですか?
- 違います。マスターリースはオーナーとサブリース会社の契約で、サブリースは入居者への又貸し、またはその仕組み全体を指します。
- マスターリース契約の前に、説明を受けないといけませんか?
- はい。賃貸住宅管理業法により、サブリース会社は契約前に書面を渡して説明する義務があります。サブリース事業者などの専門家が相手の場合は対象外です。
- マスターリースの賃料は下がることがありますか?
- あります。借地借家法により、経済事情の変動などで賃料が不相当になると、サブリース会社は減額を請求できます。
- 説明は電話やオンラインでも受けられますか?
- ガイドラインでは、映像と音声で双方向にやりとりできるなど条件を満たせば、テレビ会議などを使った説明も対面と同じに扱うとしています。
- 契約を結んだあとに渡される書面はありますか?
- あります。賃貸住宅管理業法31条により、契約後に、賃料や維持保全の方法、契約期間などを書いた書面が渡されます。
関係する記事と相談先
借上げの契約で気をつける点は「サブリースの注意点」、賃貸住宅管理業法の全体は「賃貸住宅管理業法」で説明しています。管理委託との比べ方は「賃貸管理と自主管理の違い」も参考になります。借上げを含む提案は会社一覧から探せるほか、まとめて相談して比べることもできます。
まとめ
- マスターリースは、オーナーがサブリース会社に建物を貸す契約
- 法律上の名前は「特定賃貸借契約」で、借地借家法も適用される
- 契約前に、14項目の書面での説明が義務づけられている
- 説明から契約までは、1週間程度の期間をおくことが望ましいとされる
- 「家賃保証」「長期借上げ」でも、賃料の見直しや途中の解約はありうる
- 契約が終わったあと、オーナーが入居者に貸す側を引き継ぐことも確かめる




