家具家電付き賃貸にするべき?オーナーが決める前に確かめる判断の分かれ道と注意点

家具家電付きにすれば空室が埋まるのか、迷うオーナーは少なくありません。向く物件と向かない物件の分かれ道、故障や入れ替えの負担、契約で決めておくことを順に整理します。
結論
- 家具家電付き賃貸にするかどうかは、「だれに・どれくらいの期間貸すか」で決まります。短い期間で住む人や、身軽に引っ越したい人が多い地域なら検討する価値があります。
- 備え付けた家具家電は、契約で「設備」とすると、壊れたときの修理はオーナーの負担になるのが基本です。入れ替えや処分の費用も見込んでおきます。
- 迷ったら、全部をそろえる前に、冷蔵庫・洗濯機・照明など少ない品目から始め、反響を見て足す方法もあります。
「家具家電付きにすれば、すぐ決まるのでは」。空室が続くと、こう考えるオーナーは多いと思います。たしかに、身一つで入居できる部屋を探している人はいます。
一方で、買いそろえる費用、壊れたときの対応、退去のたびの点検や入れ替えなど、手間は確実に増えます。家賃を上げられるかどうかも、地域や物件によって違います。
この記事では、家具家電付きにする前に考える判断の分かれ道、契約で決めておくこと、よくある失敗を順に説明します。
家具家電付き賃貸とは
意味を一言で
家具家電付き賃貸とは、ベッドや冷蔵庫、洗濯機などをオーナーが用意し、入居者がそのまま使える状態で貸す部屋のことです。入居者は家具家電を買わずに住み始められます。
マンスリーマンションとの違い
家具家電付きの部屋には、ふつうの賃貸借契約で貸すものと、短い期間だけ貸すマンスリーマンションのような形があります。家具がそろっている点は同じでも、契約の形と運営の手間が大きく違います。
| 比べる点 | 家具家電付きの普通の賃貸 | マンスリーマンション型 |
|---|---|---|
| 貸す期間 | 年単位の契約が中心 | 月単位など短い期間 |
| 入居者の入れ替わり | 少なめ | 多い |
| 清掃や点検 | 退去のときが中心 | 入れ替わりのたびに必要 |
| 備品の範囲 | 大きな家具家電が中心 | 食器や寝具まで用意することが多い |
| 運営の手間 | 比較的少ない | 多い。運営会社に任せることが多い |
短い期間で貸す運営については「マンスリーマンションの運営」でくわしく整理しています。この記事では、ふつうの賃貸借で家具家電を付ける場合を中心に説明します。
家具家電付きが向く物件・向かない物件
向きやすい場面
家具家電付きが合うのは、身軽に住み始めたい人が多く集まる場面です。たとえば次のような物件です。
- 単身者向けのワンルームや1Kで、駅や大学、職場に近い
- 転勤や出張、研修などで、期間を区切って住む人が多い地域
- 法人が社員用に部屋を借りる需要がある地域
- 海外から来た人や、初めて一人暮らしをする人が多い地域
法人が借りる部屋については「借り上げ社宅と社有社宅」もあわせて読むと、法人がどんな部屋を求めるかが分かります。
向きにくい場面
反対に、家族向けの広い部屋や、長く住む人が多い地域では、家具家電付きが強みになりにくいことがあります。家族はすでに家具を持っていることが多く、置いてある家具が邪魔になる場合もあるからです。
また、家具家電があることで部屋が狭く見え、内見で敬遠されることもあります。付けること自体が目的にならないよう、来てほしい入居者の姿から考えます。
判断の分かれ道
迷ったときは、次の順に考えると整理しやすくなります。
- 周りで募集している似た部屋に、家具家電付きがどれくらいあるかを見る
- 問い合わせや内見で、家具家電の有無を聞かれたことがあるかを管理会社に確かめる
- 来てほしい入居者が、どれくらいの期間住みそうかを考える
- 用意する品目と、壊れたときの対応を決められるかを考える
- 費用を何年で回収するつもりかを決め、家賃や条件と合うかを見る
ポイント
- 家具家電付きにするかは「だれに・どれくらいの期間貸すか」から決める
- 周りの募集と、問い合わせで聞かれたことを先に確かめる
- 全部そろえず、少ない品目から始める方法もある
- 費用だけでなく、故障・入れ替え・処分の手間も見込む
用意する家具家電の選び方
よく用意される品目
家具家電付きでよく用意されるのは、生活にすぐ必要なものです。品目が多いほど便利になりますが、壊れる物も増えます。
| 区分 | 主な品目 | 考えておくこと |
|---|---|---|
| 大きな家電 | 冷蔵庫・洗濯機・電子レンジ | 壊れたときの修理と入れ替え |
| 空調・照明 | エアコン・照明器具 | もともと設備として付いていることも多い |
| 家具 | ベッド・机・いす・カーテン | 汚れや傷みと、退去時の点検 |
| 小物 | 寝具・食器・調理器具 | 衛生面の扱い。入居者に任せることが多い |
少ない品目から始める
最初から全部そろえると、費用も手間も大きくなります。冷蔵庫・洗濯機・電子レンジ・照明・カーテンなど、入居者が「最初の日に困るもの」だけを用意する形もあります。
寝具や食器のように、人によって好みや衛生の感じ方が違うものは、あえて用意しない判断もあります。用意するかどうかは、募集のときに分かるように書いておきます。
家具家電が壊れたときの負担と契約
修理はオーナーが負担するのが基本
民法では、貸す側は、借りた人が使うために必要な修繕をする義務を負うとされています(民法606条)。ただし、借りた人の責任で壊れた場合は別です。
契約で家具家電を部屋の「設備」として貸すと、それが壊れたときの修理や交換は、オーナーの負担になるのが基本です。電話一本で、冷蔵庫の買い替えが必要になることもあります。
また、オーナーに修繕が必要だと伝えたのに、相当の期間内に直さないときや、急ぎの事情があるときは、借りた人が自分で修繕できるとされています(民法607条の2)。対応の窓口と期限を決めておくことが大切です。
「残置物」として扱う方法との違い
前の入居者が置いていった家具家電を、そのまま使ってもらう場合もあります。このとき、設備として貸すのか、「壊れても修理しない物」として扱うのかで、オーナーの負担が変わります。
「壊れても直さない」と決める場合は、契約書と重要事項の説明で、どの品目がその扱いなのかを入居者に分かる形で書いておきます。口頭だけの約束は、あとで食い違いの原因になります。
契約で決めておくこと
家具家電付きで貸すときは、次の点を契約や付属の書類で決めておきます。
- 備え付ける品目の一覧(メーカー名や型番、入居時の状態の写真)
- 設備として貸すのか、修理しない物として扱うのか
- 壊れたときの連絡先と、だれが修理を手配するか
- 使い方の誤りで壊れた場合の扱い
- 退去時の点検の仕方と、汚れや傷の扱い
退去時の扱いは、ふつうに使って古くなった分(通常の損耗や経年変化)は、借りた人が元に戻す義務の対象から外れるとされています(民法621条)。家具家電も、年数がたって傷んだ分を入居者に請求することはできません。考え方は「原状回復のガイドライン」で整理しています。
費用と家賃の考え方
家賃をいくら上げられるかは物件しだい
家具家電付きにして、家賃をどれだけ上げられるかに決まった目安はありません。地域の需要、周りの募集条件、部屋の広さや築年数によって大きく違います。
周りの家具家電付きの部屋と、付いていない部屋の募集条件を見比べると、手がかりになります。家賃を見直すときの考え方は「空室対策」でも整理しています。最後は、管理会社と相談して決めるのが現実的です。
費用は「買う・直す・入れ替える・捨てる」で考える
かかる費用は、買う時だけではありません。次の4つに分けて考えると、見落としが減ります。
- 買う:最初にそろえる費用と、運び込みや設置の費用
- 直す:壊れたときの修理や、出張の費用
- 入れ替える:古くなったときや、退去後に傷んだときの買い替え
- 捨てる:使えなくなった物の処分の費用
家電を捨てるときの決まり
家庭用エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機の4品目は、家電リサイクル法の対象です。捨てる人は、収集運搬料金とリサイクル料金を支払う役割があるとされています。
家具家電付きの部屋では、この4品目のうち冷蔵庫や洗濯機を用意することが多いはずです。入れ替えのたびに処分の費用がかかることを、最初から見込んでおきます。
経費の扱いは個別に確かめる
家具家電を買った費用を、不動産所得の経費としてどう扱うかは、取得価額や使い方で変わります。国税庁の案内では、貸し付けに使う減価償却資産について、令和4年4月1日以降に取得したものには少額の資産の特例が使えない場合があると説明されています。
自分の場合にどうなるかは、税務署や税理士に確かめてください。確定申告の基本は「不動産所得の確定申告」で整理しています。
家具家電付き賃貸でよくある失敗
失敗1:入居者の姿を決めずにそろえた
「付ければ決まる」と考えて一式をそろえたものの、問い合わせの多くが家族向けだった、という食い違いがあります。来てほしい入居者を先に決めておくと、品目も家賃も決めやすくなります。
失敗2:品目の一覧を残していなかった
入居時に何がどんな状態で置いてあったかの記録がないと、退去時に「最初から傷があった」「付いていなかった」と食い違います。品目の一覧と写真を、入居者と一緒に確かめておきます。
失敗3:故障の窓口があいまいだった
夜や休日に冷蔵庫が止まったとき、だれに連絡すればよいか決まっていないと、入居者の不満が大きくなります。管理会社に任せる場合も、どこまで対応してもらえるかを確かめておきます。
失敗4:入れ替えの費用を見込んでいなかった
数年たつと、家電は壊れやすくなります。入れ替えの時期と費用を見込まずにいると、手残りが思ったより少なくなります。
始める前のチェックリスト
- 来てほしい入居者と、住む期間のイメージを決めた
- 周りの家具家電付きの募集条件を見比べた
- 用意する品目と、修理しない物の区別を決めた
- 品目の一覧と写真を残す準備をした
- 故障の連絡先と対応の範囲を管理会社と決めた
- 入れ替えと処分の費用を見込んだ
よくある質問
- 家具家電付き賃貸にすると、空室は埋まりますか?
- 埋まりやすくなる場面はありますが、どの物件でも効くわけではありません。単身者や短い期間で住む人が多い地域かどうかで変わります。
- 家具家電が壊れたら、オーナーが直す必要がありますか?
- 設備として貸している場合は、オーナーが修繕するのが基本です(民法606条)。入居者の使い方の誤りで壊れた場合は扱いが変わります。
- 前の入居者が置いていった家電を、そのまま付けて貸してもいいですか?
- 貸すことはできますが、設備として扱うか、修理しない物として扱うかを契約で決めておく必要があります。状態の記録も残します。
- 家具家電付きにすると、家賃はいくら上げられますか?
- 決まった目安はなく、地域や物件によって違います。周りの家具家電付きの募集条件と見比べ、管理会社と相談して決めます。
- 家具家電を捨てるときに費用はかかりますか?
- エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機などの4品目は家電リサイクル法の対象で、収集運搬料金とリサイクル料金がかかります。
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まとめ
- 家具家電付きにするかは、だれに・どれくらいの期間貸すかで決める
- 向きやすいのは、単身者や短い期間で住む人が多い地域の部屋
- 設備として貸すと、壊れたときの修繕はオーナーが負担するのが基本
- 品目の一覧と写真を残し、故障の窓口を決めておく
- 買う・直す・入れ替える・捨てるの4つで費用を見込む




