賃貸の水漏れ対応|オーナーの初動5つと、原因で分かれる費用負担の考え方

賃貸の水漏れは、最初の数時間の対応で被害の広がりが変わります。この記事では、連絡を受けたオーナーがまずすること、原因別の費用負担の考え方、下の階に被害が出たときの民法の決まりを整理します。
結論
- 賃貸の水漏れの連絡を受けたら、まず水を止める、写真で記録する、原因の場所を調べる、の順で動きます。費用の話はそのあとです。
- 費用の負担は原因で分かれます。建物や設備の傷みが原因なら、民法606条により貸主(オーナー)が直します。入居者の不注意が原因なら、入居者の負担になります。
- 下の階など他人に被害が出たときは、民法717条により、建物の占有者が、必要な注意をしていれば所有者が、賠償の責任を負うとされています。
夜に管理会社や入居者から「天井から水が落ちてくる」と電話が来る。賃貸のオーナーにとって、水漏れは急に起きて、しかも広がりやすいトラブルです。
慌てて「すぐ直します、費用は全部持ちます」と約束すると、あとで原因が入居者の不注意だと分かったときに困ります。逆に、費用の話から入ると、入居者の不安が大きくなります。
この記事では、水漏れの連絡を受けたときの初動の順番と、費用の負担の考え方を説明します。設備の故障全般の修繕負担は賃貸の設備故障の修繕負担でくわしく説明しているので、ここでは水漏れに絞ります。
賃貸の水漏れとは
水漏れの主な原因
賃貸の水漏れとは、配管や設備、屋根や外壁などから水がもれ、部屋や建物に被害が出ることです。原因は大きく分けて次の3つです。
| 原因 | 例 | 主に負担する人の考え方 |
|---|---|---|
| 建物・設備の傷み | 配管の劣化、給湯器の故障、屋根からの雨もり | 貸主(民法606条) |
| 入居者の不注意 | 洗濯機のホースの外れ、蛇口の閉め忘れ | 入居者 |
| 原因がはっきりしない | 壁の中の配管、上の階からの水 | 調べてから判断 |
水漏れと結露を見分ける
冬に窓や壁が濡れているときは、水漏れではなく結露のこともあります。結露は、部屋の中と外の温度の差で、空気中の水分が水になるものです。濡れる場所が窓のまわりに限られ、晴れた日も続くなら結露、雨の日だけ、または水を使ったときだけ濡れるなら水漏れを疑います。迷ったら、業者に見てもらいましょう。
法律の決まり
民法606条は、貸主は貸している物を使うのに必要な修繕をする義務を負うと定めています。ただし、入居者の責めに帰すべき事由で修繕が必要になったときは、この限りではありません。
民法615条は、修繕が必要なとき、入居者は遅れずに貸主に知らせなければならないと定めています。水漏れに気づいた入居者からの連絡は、この知らせにあたります。
水漏れの連絡を受けたときの初動5つ
連絡を受けたら、次の順番で動きます。
- 水を止める(元栓や止水栓を閉めるよう入居者に伝える。電気製品が濡れていないかも聞く)
- 被害の写真と動画を残すよう頼む(天井・床・家具・時間)
- 管理会社または水道業者に連絡し、原因の場所を調べてもらう
- 上の階・下の階の部屋に被害がないかを確かめる
- 保険の会社に連絡し、使える保険があるか確かめる
「水を止める」を最初にする理由
水は時間とともに下の階や壁の中へ広がります。原因を調べる前でも、元栓を閉めれば広がりを抑えられます。入居者が元栓の場所を知らないことも多いので、入居のときに場所を伝えておくと安心です。
記録が費用の話を落ち着かせる
あとで原因と費用を話し合うとき、写真や動画、連絡を受けた時刻のメモが役に立ちます。どの順番で何が濡れたかは、時間がたつと分からなくなります。
濡れた家電やコンセントには触らないよう、入居者に伝えましょう。感電のおそれがあります。
原因で分かれる費用の負担
建物や設備の傷みが原因のとき
配管の劣化や設備の故障が原因なら、修繕は貸主の負担です(民法606条)。修繕のために部屋に入る必要があるとき、入居者はそれを拒めません(同2項)。
入居者の不注意が原因のとき
洗濯機のホースが外れた、蛇口を閉め忘れたなど、入居者の不注意が原因なら、修繕の費用は入居者の負担になります。退去のときの扱いは、民法621条の原状回復の決まりも関わります。くわしくは原状回復のルールをご覧ください。
貸主が直さないと、入居者が直すこともある
民法607条の2は、入居者が知らせたのに貸主が相当の期間内に直さないとき、または急ぎの事情があるときは、入居者が自分で修繕できると定めています。水漏れは急ぎの事情にあたりやすいので、連絡を受けたら早く動きます。
使えない間の家賃
民法611条は、部屋の一部が入居者の責めによらない理由で使えなくなったときは、使えない部分の割合に応じて家賃が減額されると定めています。水漏れで一部屋が使えないときは、この点も話し合いに入ります。
ポイント
- 初動は、止水、記録、原因の調査、上下の部屋の確認、保険の連絡
- 建物や設備の傷みが原因なら、修繕は貸主の負担(民法606条)
- 入居者の不注意が原因なら、入居者の負担
- 使えない部分がある間は、家賃の減額が問題になる(民法611条)
下の階や他人に被害が出たとき
民法717条の工作物責任
民法717条は、建物などの設置や保存に問題があって他人に損害が出たときは、まず占有者(住んでいる人)が賠償の責任を負い、占有者が必要な注意をしていたときは所有者が責任を負うと定めています。
配管の劣化など建物の問題で下の階に被害が出たときは、所有者であるオーナーが責任を問われることがあります。日ごろの点検が大切なのはこのためです。
分譲マンションの一室を貸しているとき
分譲マンションの一室を貸しているときは、原因が自分の部屋(専有部分)か、建物全体の部分(共用部分)かで、連絡先が変わります。区分所有法9条は、建物の設置や保存の問題で他人に損害が出たときは、その問題は共用部分にあると推定すると定めています。
原因が共用部分の配管なら、管理組合や管理会社とも連絡を取ります。
保険を確かめる
建物の保険、入居者の保険、上の階の人の保険など、使える保険が重なることがあります。入居者の保険の役割は入居者の火災保険でくわしく説明しています。保険が使えるかは、契約の内容と原因で変わるので、保険の会社に確かめてください。
場面で考える水漏れ対応
場面1:上の階の洗濯機から水があふれた
上の階の入居者が洗濯機のホースを付け忘れ、下の階の天井が濡れました。原因は上の階の入居者の不注意なので、下の階の損害は、まず上の階の入居者との話になります。オーナーは、建物の天井の修繕と、両方の入居者への連絡を受け持ちます。
場面2:築年数のたった建物で配管から水がもれた
壁の中の古い配管から水がもれ、床が濡れました。原因は設備の傷みなので、修繕はオーナーの負担です。入居者が部屋を使えない間の家賃の扱いも、早めに話し合います。
場面3:空室の部屋で水漏れが見つかった
入居者のいない部屋で配管から水がもれ、下の階の入居者から知らせが来ました。空室では、だれも気づかないまま水が出続けることがあります。オーナーは、空室の部屋の元栓を閉めておくか、定期的に見回る決まりを管理会社と決めました。
場面4:外壁のひびから雨水が入った
台風のあと、窓のまわりの壁紙にしみが出たと入居者から連絡がありました。原因は外壁のひびからの雨水でした。建物の傷みが原因なので、修繕はオーナーの負担です。室内の壁紙も、雨水で傷んだ部分はオーナーの側で直します。
管理会社と決めておく役割分担
水漏れは夜や休日にも起きます。管理会社に任せている場合は、次のことを先に決めておくと対応が速くなります。
- 夜間・休日に連絡を受ける窓口と、駆けつける業者
- オーナーに確かめずに直してよい金額の目安
- 入居者への説明を、だれが、どの順番でするか
- 保険の会社への連絡を、だれがするか
入居者への伝え方
入居者は、部屋が濡れて不安になっています。最初の連絡では、費用の話よりも、いつ業者が来るか、今日はどう過ごせばよいかを伝えます。原因と費用の話は、調べた結果が出てから落ち着いて行うと伝えておくと、話がこじれにくくなります。
判断の分かれ道
- 原因が入居者の部屋の中の使い方か、建物の設備か
- 被害が自分の部屋だけか、他の部屋に広がったか
- 分譲マンションなら、専有部分か共用部分か
- 使える保険はどれか
水漏れ対応でよくある失敗
- 原因が分からないうちに「全部こちらで持ちます」と約束する
- 写真や時刻を残さず、あとで原因の話がまとまらない
- 下の階の確認をせず、被害の広がりに気づくのが遅れる
- 管理会社とオーナーが別々に入居者へ説明する
- 修繕が終わったあと、壁の中や床下の乾き具合を確かめない
- 修繕の記録を残さず、同じ場所の水漏れが繰り返される
入居者への伝え方は入居者のクレーム対応が参考になります。
修繕が終わったあとにすること
水が止まって修繕が終わっても、対応はそこで終わりではありません。次のことを確かめ、記録を残しておきます。
- 原因、修繕の中身、費用、かかった日数を一つの記録にまとめる
- 濡れた床や壁が乾いたか、においやかびが出ていないかを確かめる
- 費用の負担と、家賃の減額の有無を、入居者と書面で確かめる
- 同じ配管を使う他の部屋も、点検が要るかを業者に聞く
記録が次の判断に役立つ
同じ建物で水漏れが何度も起きるなら、部分的に直すより、配管をまとめて替えるほうがよい時期かもしれません。記録があれば、その判断を数字で考えられます。設備にお金をかけるかどうかの考え方は設備投資の判断をご覧ください。
言葉の言い換え
- 止水栓:部屋や設備ごとに水を止める栓
- 占有者:その建物や部屋を実際に使っている人
- 専有部分:分譲マンションで、各部屋の持ち主のものになる部分
- 共用部分:廊下や建物全体の配管など、みんなで持つ部分
日ごろの備えのチェックリスト
- 入居者に元栓の場所を伝えているか
- 夜間・休日の連絡先を決めているか
- 管理会社にどこまで判断を任せるか、金額の目安を決めているか
- 建物の保険の補償範囲を知っているか
- 入居者の保険の加入を確かめているか
- 古い配管の点検や交換の計画があるか
よくある質問
- 賃貸の水漏れの修理代はだれが払いますか?
- 原因で分かれます。建物や設備の傷みなら貸主、入居者の不注意なら入居者の負担です。
- 水漏れで部屋が使えない間、家賃は減りますか?
- 民法611条により、入居者の責めによらず一部が使えないときは、その割合に応じて減額されます。
- 入居者が勝手に業者を呼んで直したら?
- 知らせたのに貸主が相当の期間内に直さないときや、急ぎの事情があるときは、入居者が修繕できます。費用の扱いは原因によります。
- 下の階の家具が濡れたら、オーナーが弁償しますか?
- 原因によります。建物の問題なら所有者が責任を問われることがあり、入居者の不注意なら入居者の責任になるのが基本です。
- 原因が分からないときはどうしますか?
- まず水を止め、業者に原因の場所を調べてもらいます。費用の負担は、原因が分かってから話し合います。
水漏れと管理の相談先
夜間の対応や業者の手配を任せたいときは、管理会社の体制を確かめましょう。比べ方は管理会社の選び方、自分で管理するか任せるかは自主管理と管理委託の違いをご覧ください。相談先は会社一覧から探せます。まとめて相談したいときは一括相談の使い方が使えます。
まとめ
- 水漏れの初動は、止水、記録、原因の調査、上下の部屋の確認、保険の連絡
- 建物や設備の傷みが原因なら、修繕は貸主の負担
- 入居者の不注意が原因なら、入居者の負担
- 一部が使えない間は、家賃の減額が問題になる
- 他人に被害が出たときは、民法717条や区分所有法9条も関わる




