空き家をコワーキングにするには?用途地域・事務所の扱い・泊めない線引きを確認

空き家をコワーキングスペースにしたいとき、まず確かめるのは「その場所で事務所として使えるか」です。この記事では、用途地域、建物の手続き、宿泊との線引き、貸し方の選び方を順に整理します。
結論
- 空き家をコワーキングにできるかは、まず用途地域で決まります。第一種・第二種低層住居専用地域と第一種中高層住居専用地域では、事務所だけの建物は原則として建てられず、住まいと兼ねる小さな事務所(事務所の部分が50㎡以下など)に限られます。
- 事務所は建築基準法の特殊建築物ではないので、住宅から事務所への用途変更では、原則として確認申請は要りません。ただし用途地域の決まりは守る必要があり、イベント中心の使い方などでは扱いが変わることもあります。
- 寝具を使って泊めて料金を受けると旅館業にあたるおそれがあります。仮眠や宿泊のサービスは付けない線引きを最初に決めましょう。
「駅から少し離れた空き家を、在宅勤務の人が集まる場所にできないか」。空き家の使い道として、コワーキングスペースを考える人が増えています。
コワーキングは、店舗や宿より設備が少なくて済みそうに見えます。ただ、住宅地では事務所として使えない地域があり、使い方によっては宿や飲食の決まりもかかります。
この記事では、空き家をコワーキングにするときに、工事や募集の前に確かめる用途の点を説明します。店舗にする場合は「空き家を店舗に転用」、宿にする場合は「簡易宿所の許可の流れ」を参考にしてください。
空き家のコワーキングとは
定義
コワーキングスペースとは、利用者が机や会議室を時間や月単位で借りて、それぞれの仕事をする場所です。法律の言葉ではありませんが、建物の使い方としては「事務所」として扱われることが多いです。
空き家をコワーキングにする形は、大きく2つです。オーナー自身が運営する形と、運営する会社や個人に建物ごと貸す形です。
言葉の言い換え
- 用途地域:区域ごとに、建ててよい建物の種類を決めたもの
- 用途変更:建物の使い道を変えること
- 兼用住宅:住まいと店や事務所を一つの建物で兼ねるもの
- 特殊建築物:多くの人が集まるなどの理由で、建築基準法で特に決まりが多い建物
用途地域で決まる「コワーキングにできるか」
地域ごとの目安
建築基準法の別表第二では、地域ごとに建てられる建物と、建ててはならない建物が決まっています。事務所に関わる部分をまとめると次のとおりです。
| 用途地域 | 事務所としての使い方の目安 |
|---|---|
| 第一種・第二種低層住居専用地域 | 事務所だけの建物は原則不可。兼用住宅なら可 |
| 第一種中高層住居専用地域 | 事務所だけの建物は原則不可。兼用住宅なら可 |
| 第二種中高層住居専用地域 | 3階以上を使うものや、床面積1,500㎡超は不可 |
| 第一種住居地域 | 床面積3,000㎡超は不可 |
| 上の表にない地域 | 地域ごとの決まりを窓口で個別に確かめる |
用途地域は、市区町村の都市計画の窓口や地図で調べられます。
住まいと兼ねる小さな事務所
建築基準法施行令130条の3では、低層住居専用地域などで建てられる兼用住宅を決めています。延べ面積の2分の1以上を住まいに使い、事務所などの部分が50㎡以下のものです。
つまり、だれも住まない空き家を丸ごとコワーキングにするのは、これらの地域では難しくなります。住居専用地域の空き家なら、住まいを残して一部を仕事場として開く形か、別の使い道を考えるのが現実的です。
第二種低層・第一種中高層住居専用地域では、事務所ではなく店舗などの扱いになると、別の床面積の決まりがかかります。カフェを兼ねるなど使い方を足すときは、建築の窓口で確かめてください。
建物の手続き:確認申請は要るか
事務所は特殊建築物ではない
建築基準法87条1項では、用途を変えて別表第一の特殊建築物にする場合、その部分が200㎡を超えると確認申請が要るとしています(6条1項1号の準用)。別表第一に挙がるのは、劇場・集会場、ホテル・旅館・共同住宅、学校、百貨店・マーケット、倉庫、自動車車庫などで、事務所は入っていません。
そのため、住宅から事務所への用途変更は、原則として確認申請の対象になりません。
確認申請がなくても守ること
- 用途地域の決まり(87条2項で、用途を変えるときも48条が準用される)
- 使い方が集会場などと判断されないか。イベントや講座を中心にするなら要注意
- 床の強さ、階段、避難の経路、窓や換気など、使う人数に合った安全
- 消防の設備。使い方を決めたら、消防署に図面を持って相談する
宿泊・飲食との線引き
泊めると旅館業になるおそれ
旅館業法2条5項では、宿泊を「寝具を使用して」施設を使うことと定めています。料金を受けて寝具を使わせ、泊まれるようにすると、旅館業の許可が要るおそれがあります。
夜通しの利用、仮眠室、布団の貸し出しなどは、最初から付けないと決めておくのが安全です。宿としても使いたいなら、許可や届出の道を別に考えます。
飲み物や軽食を出すなら
コーヒーや軽食を売るときは、食品衛生法55条の営業の許可が要る場合があります。何を、どう出すかで扱いが変わるので、保健所の食品衛生の窓口で確かめます。
自分で運営するか、運営する人に貸すか
2つの形を比べる
| 項目 | 自分で運営する | 運営する人に貸す |
|---|---|---|
| 収入 | 利用料。利用者の数で変わる | 決まった家賃 |
| 手間 | 受付・清掃・予約・設備の対応 | 建物の貸主としての対応 |
| 用途の確認 | 自分で行う | 借り手と一緒に行う |
| やめ方 | 自分で決められる | 契約の期間と終わり方による |
貸すなら定期借家も選べる
事務所として貸す契約にも、借地借家法がかかります。期間が来たら確実に終わる形にしたいなら、定期借家契約があります。借地借家法38条では、書面で契約し、更新がなく期間の満了で終わることを、前もって書面を渡して説明すると定めています。違いは「定期借家と普通借家の違い」で整理しています。
なお、国土交通省の賃貸住宅管理業法の解釈・運用の考え方では、事業に使うオフィスは「住宅」にあたらないとしています。コワーキングとして貸す場合、住まいの賃貸向けのこの法律のルールは、原則としてかかりません。
空き家をコワーキングにする手順
- 用途地域を調べ、事務所として使えるか、兼用住宅にする必要があるかを確かめる
- 使い方を決める:利用の時間帯、定員、会議室、イベントの有無、飲食の有無
- 建築の窓口に相談し、事務所として扱えるか、直すべき点がないかを確かめる
- 消防署に図面を持って相談し、必要な設備を確かめる
- 自分で運営するか、貸すかを決め、貸すなら契約の形を選ぶ
- 改装し、ネット回線、机、照明、トイレなどを整える
- 利用の決まり(夜間・宿泊の禁止、騒音、ごみ)を作り、近所に説明する
たとえば、駅近くの空き家を持つDさん
Dさんの空き家は、駅から歩いて10分ほどの第一種住居地域にありました。用途地域では事務所として使えると分かり、利用は朝から夜までに限り、仮眠室は作らないと決めました。
Dさんは建築の窓口に、イベント中心ではなく仕事場として使う計画を伝え、事務所として扱えるかを確かめました。そのうえで自分で運営する手間を考え、運営する人に定期借家で貸す形を選びました。
よくある失敗
- 住居専用地域の空き家を丸ごと仕事場にしようとして、後で使えないと分かる
- 仮眠室を作り、料金を受けて泊める形になってしまう
- カフェを足したことで、店舗の扱いや食品の許可が必要になる
- 近所に説明せず、人の出入りや話し声で苦情が出る
コワーキングに向く空き家・向かない空き家
向きやすい空き家
- 駅やバス停から歩ける、または車を止められる場所にある
- 用途地域で、事務所として使えると確かめられる
- 広い居間や続き間があり、机を並べやすい
- トイレや水回りが使える状態で、大きく直さずに済む
向きにくい空き家
- 住居専用地域にあり、だれも住まない形でしか使えない
- 傷みが大きく、床や階段を直す費用が利用料で取り戻しにくい
- 近所の家と近く、人の出入りや話し声が気になりやすい
住居専用地域の空き家なら
住居専用地域の空き家でも、使い方を変えれば仕事場にできることがあります。たとえば、家族が住みながら一部屋を事務所として開く形や、近所の人だけが使う会員制の小さな仕事場にする形です。この場合も、事務所の部分が50㎡以下で、延べ面積の2分の1以上を住まいに使う必要があります。だれも住まない空き家なら、住まいとして貸す、売るなど別の使い道と比べるほうが早いこともあります。
たとえば、低層住居専用地域に空き家を持つFさん
Fさんの空き家は第一種低層住居専用地域にありました。丸ごとコワーキングにする計画は、地域の決まりで難しいと分かりました。Fさんは、息子が住みながら1階の一室だけを仕事場として開く形に切り替え、残りの使い道は住まいとして貸す道と比べることにしました。
改装で見ておく点
仕事場では、ネット回線、電源の数、照明の明るさ、冷暖房が使い心地を左右します。二階を使うなら、階段の安全や、重い机や棚を置いても大丈夫な床かも確かめます。古い建物では、電気の容量が足りないこともあるので、電気工事の会社に見てもらいます。
費用の見通しの立て方
改装の費用、机や回線の費用、毎月の光熱費と清掃の費用は、物件や使い方によって大きく違います。見積もりは、改装・家具・回線・毎月の運営に分けて取り、利用者が何人なら費用をまかなえるかを先に計算しておきます。利用者が思うように集まらない月も考え、無理のない規模から始めます。
利用の決まりの例
- 利用できる時間:朝から夜までとし、夜通しの利用はしない
- 宿泊・仮眠:寝具は置かず、泊まることはできない
- 飲食:持ち込みの決まりと、ごみの持ち帰り
- 音:通話やオンライン会議をする場所を分ける
- 近所:路上での待ち合わせや喫煙をしない
開業前のチェックリスト
ポイント
- 用途地域で、事務所として使えるか確かめた
- 兼用住宅にする場合、住まいの部分と事務所の部分(50㎡以下)を図面で分けた
- 建築の窓口と消防署に、使い方を伝えて相談した
- 宿泊と飲食をどう扱うか決めた
- 自分で運営するか、貸すかを決めた
よくある質問
- 空き家をコワーキングにするのに確認申請は要りますか?
- 事務所は特殊建築物ではないので、原則として用途変更の確認申請は要りません。ただし用途地域の決まりは守る必要があります。
- 住宅街の空き家でもコワーキングにできますか?
- 低層住居専用地域などでは、事務所だけの建物は原則として建てられません。住まいと兼ね、事務所の部分を50㎡以下にする形なら可能です。
- 利用者が泊まれるようにしてもよいですか?
- 料金を受けて寝具を使わせると、旅館業の許可が要るおそれがあります。宿泊はしない決まりにしておきましょう。
- 飲み物を売ってもよいですか?
- 出し方によっては食品衛生法の営業の許可が要ります。保健所で確かめてから始めます。
- 運営を人に任せることはできますか?
- できます。建物ごと貸す形なら、定期借家契約で期間を区切ることもできます。
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まとめ
- 空き家をコワーキングにできるかは、まず用途地域で決まる
- 住居専用地域では、住まいと兼ねる小さな事務所(50㎡以下など)に限られる
- 事務所への用途変更は、原則として確認申請は要らないが、用途地域の決まりは守る
- 寝具を使って泊めるサービスは付けず、飲食は保健所で確かめる
- 自分で運営するか貸すかを決め、貸すなら定期借家も選べる




