空き家のアスベスト事前調査とは?解体・改修の前に必要な調査と報告の決まり

空き家を解体したり直したりする前には、石綿(アスベスト)が使われていないかを調べる決まりがあります。だれが調べて、どんな工事で報告が要るのか、持ち主が何をすればよいかを整理します。
結論
- 空き家を解体・改修するときは、工事の大小にかかわらず、石綿(アスベスト)が使われているかを工事の前に調べる必要があります。
- 調べるのは工事の元請業者で、建築物の調査は2023年(令和5年)10月から、決まった資格を持つ人が行います。
- 解体部分の床面積の合計が80平方メートル以上の解体、請負代金の合計が100万円以上の改修などは、調査の結果を報告します。
- 持ち主(発注者)は、調査の費用を適正に負担し、図面などの情報を渡して協力します。
「空き家を壊す見積もりに、アスベスト調査の費用が入っていた」。「台所を直すだけなのに、本当に調査が要るのか」。解体やリフォームを考え始めた持ち主から、こうした声を聞きます。
石綿は、昔の建物に多く使われた材料です。壊したり削ったりすると細かい繊維が飛び、吸い込むと体に害を及ぼすおそれがあります。そのため、工事の前に調べる決まりが法律で定められています。
この記事では、空き家の解体や改修の前に必要な石綿の事前調査について、だれが・いつ・何をするのか、報告が要る工事の基準、持ち主の役割を整理します。
空き家のアスベスト事前調査とは
事前調査の意味
石綿の事前調査とは、解体や改修の工事を始める前に、工事をする部分の材料に石綿が含まれているかを調べることです。大気汚染防止法の第18条の15では、工事の元請業者が、図面などの書面による調査と、目で見る調査を行うと定めています。
古い空き家ほど関係が深い理由
厚生労働省の石綿総合情報ポータルでは、石綿は2006年(平成18年)9月から輸入・製造・使用などが禁止されたと説明しています。それより前に着工した建物には、石綿が使われているおそれがあります。相続した空き家の多くは、この時期より前に建っています。
規模にかかわらず調査が要る
厚生労働省は、解体・改修工事では、その規模の大小にかかわらず、工事の前に作業部分のすべての材料について石綿の有無を調べる必要があるとしています。報告が要る工事の基準と、調査そのものが要る工事は別だと考えましょう。
だれが何をするのか
役割の表
| 立場 | すること | 根拠 |
|---|---|---|
| 元請業者 | 事前調査を行い、結果を書面で持ち主に説明する | 大気汚染防止法第18条の15第1項 |
| 持ち主(発注者) | 調査の費用を適正に負担し、調査に協力する | 同条第2項 |
| 元請業者 | 調査の記録を作り、保存する | 同条第3項 |
| 元請業者 | 現場に記録の写しを置き、結果を掲示する | 同条第5項 |
| 元請業者 | 調査の結果を都道府県知事に報告する | 同条第6項 |
自分で工事をする場合
業者に頼まず、自分で解体や改修をする人を「自主施工者」と呼びます。大気汚染防止法では、自主施工者も事前調査を行い、記録を作って保存しなければならないとされています。DIYで壁や天井を壊す場合も、決まりの外にはなりません。
調べる人の資格
厚生労働省によると、建築物の事前調査は、2023年(令和5年)10月から、建築物石綿含有建材調査者など一定の要件を満たす人が行う必要があります。図面などの書面の調査と、目で見る調査の両方が必要です。
ポイント
- 解体も改修も、工事の前に石綿の有無を調べる
- 調べるのは元請業者で、建築物は資格を持つ人が行う
- 持ち主は、費用を適正に負担し、図面などを渡す
- 自分で工事をする場合も、調査と記録が必要
報告が必要な工事の基準
報告の対象
環境省によると、次のいずれかに当たる工事は、調査の結果を都道府県または大気汚染防止法の政令市に報告します。
| 工事の種類 | 報告が要る基準 |
|---|---|
| 建築物の解体 | 解体する部分の床面積の合計が80平方メートル以上 |
| 建築物の改造・補修 | 請負代金の合計額が100万円以上 |
| 工作物の解体・改造・補修 | 請負代金の合計額が100万円以上 |
請負代金の数え方
環境省は、請負代金は材料費を含む作業全体の代金で判断し、消費税は含め、事前調査の費用は含めないとしています。同じ人が工事を2つ以上の契約に分けて請け負った場合は、1つの契約とみなされます。分けて頼めば報告がいらなくなる、ということはありません。
報告のしかた
報告は、原則として「石綿事前調査結果報告システム」から行います。厚生労働省によると、このシステムで、労働安全衛生法と大気汚染防止法の両方の報告を一度にできます。報告の義務は、2022年(令和4年)4月以降に始まる工事から始まりました。石綿が含まれていなかった場合も、その旨を報告します。
工事の前から工事中までの流れ
持ち主から見た手順
- 解体や改修の見積もりを頼むとき、事前調査の費用が含まれているかを確かめる
- 調査をする人が資格を持っているかを確かめる
- 家にある図面や建築確認の書類を、業者に渡す
- 調査の結果を、書面で説明してもらう
- 報告が必要な工事なら、報告が済んだかを確かめる
- 石綿があった場合は、除去の方法・期間・費用の説明を受ける
石綿が見つかった場合
吹き付けられた石綿や、石綿を含む断熱材・保温材などがある場合は、さらに手続きが増えます。大気汚染防止法の第18条の17では、こうした工事の発注者は、作業を始める日の14日前までに都道府県知事に届け出ることとされています。この届出は、業者ではなく持ち主側の役目です。
工事中の掲示と記録
厚生労働省によると、調査の結果の記録は3年間保存し、作業場所に備え付けます。結果の概要は、工事の期間中、近所の人と作業する人の両方が見やすい場所に掲示します。掲示の大きさは、A3判(29.7センチ×42センチ)以上とされています。
発注者は、工期や作業の方法について、決まりを守るのを妨げる条件を付けないよう配慮しなければなりません(大気汚染防止法第18条の16)。「とにかく安く、早く」とだけ頼むのは避けましょう。
空き家でよくある場面
場面の例
Bさんは、相続した昭和の木造の空き家を壊して、土地を売ることにしました。解体の見積もりを2社から取ると、1社には石綿の調査費が入っていませんでした。調査費の有無と調査者の資格を両社に確かめ、図面を渡してから、調査を含めた見積もりで比べ直しました。
持ち主が用意したい情報
厚生労働省の石綿総合情報ポータルでは、発注者は、業者が事前調査をきちんと行えるよう、設計図書や建築確認申請の副本などの情報を渡すよう案内しています。石綿の除去などの作業の様子を写真などで記録できるよう、撮影を許すことも求めています。
- 建てたときの図面や建築確認の書類
- 増築・リフォームの契約書や図面
- 過去に石綿の調査をした記録があれば、その結果
- 屋根や外壁を張り替えた時期が分かるメモ
工事が終わったあとに受け取るもの
同じポータルでは、発注者が業者を選ぶときの参考として、工事のあとに飛散防止の措置をした記録(写真を含む)を出してもらうことを挙げています。調査の結果報告書とあわせて、工事の記録を手元に残しておくと、あとで土地や建物を売るときにも説明しやすくなります。
石綿が見つかったときの考え方
石綿が見つかると、除去や飛散を防ぐ作業が加わり、工期と費用が増えることがあります。金額は、石綿のある場所や量、作業の方法で大きく違います。解体して売るか、残して貸すかを決める前に、調査の結果をもとに見積もりを取り直して比べましょう。
石綿があること自体を隠して進めるのは避けます。近所の人にも掲示で知らされるため、工事の前にあいさつをしておくと、問い合わせにも落ち着いて答えられます。
改修だけの場合
台所や浴室だけを直す場合も、工事をする部分の材料について調査が要ります。請負代金の合計が100万円未満なら報告はいりませんが、調査と記録は必要です。
よくある失敗
- 見積もりの安さだけで選び、調査費が入っていなかった
- 図面を探さずに任せ、調べる範囲があいまいになった
- 工事を細かく分ければ報告がいらないと思い込んだ
- 石綿が見つかったあとの、届出の役目を知らなかった
- 工事が終わったあと、調査や作業の記録を受け取らなかった
解体の届出との違い
解体工事には、石綿の調査とは別に、建設リサイクル法の届出もあります。どちらも床面積80平方メートルという数字が出てきますが、決まりも出す先も別のものです。解体の届出は「空き家の解体と補助金」で整理しています。
| 決まり | 主な中身 | 主に動く人 |
|---|---|---|
| 石綿の事前調査 | 工事の前に石綿の有無を調べ、基準以上なら報告 | 元請業者 |
| 石綿を含む断熱材などの作業の届出 | 作業開始の14日前までに届け出る | 発注者 |
| 建設リサイクル法の届出 | 一定の規模以上の解体を届け出る | 発注者 |
図面がない空き家の場合
相続した古い家では、図面や建築確認の書類が見つからないこともあります。その場合でも、目で見る調査は必要です。書面で分からない材料は、現地で確かめたり、分析で調べたりすることになり、調査に手間がかかることがあります。家にある書類は、見つかった分だけでも業者に渡しましょう。
判断の分かれ道
- 解体して土地を売る:調査費を含めた解体の見積もりで比べる
- 古家付きのまま売る:買主が壊すときに調査が要ることを伝える
- 直して貸す:工事をする部分の調査を、工事の見積もりに含める
- まだ決めていない:使い道を決めてから、工事の範囲に合わせて調べる
業者を選ぶときのチェックリスト
- 見積もりに事前調査の費用が書かれているか
- 調査をする人の資格を示してもらえるか
- 調査の結果を、書面で説明してもらえるか
- 報告が必要な工事で、報告をしてもらえるか
- 工事後に、作業の記録や写真を出してもらえるか
むずかしい言葉の言い換え
- 石綿(アスベスト):昔の建材に使われた、細い繊維の鉱物
- 事前調査:工事の前に、石綿が使われているかを調べること
- 元請業者:持ち主から直接工事を請け負った業者
- 自主施工者:業者に頼まず、自分で工事をする人
よくある質問
- 空き家を解体するとき、アスベストの事前調査は必要ですか?
- 必要です。解体や改修の工事では、規模にかかわらず、工事の前に石綿の有無を調べます。
- アスベストの事前調査はだれがしますか?
- 工事の元請業者が行います。建築物の調査は、2023年10月から資格を持つ人が行う決まりです。
- 事前調査の結果を報告しなければならないのはどんな工事ですか?
- 床面積の合計80平方メートル以上の解体、請負代金の合計100万円以上の改修などです。
- 自分でリフォームする場合も調査は必要ですか?
- 必要です。自分で工事をする人も、事前調査を行い、記録を作って保存します。
- 事前調査の費用はだれが払いますか?
- 発注者である持ち主が、調査の費用を適正に負担して協力する決まりです。金額は建物や調べ方で違います。
- 改修工事が100万円未満なら、調査はいりませんか?
- いります。100万円未満の改修は結果の報告がいらないだけで、工事の前の調査と記録は必要です。
次に読みたい記事と相談先
壊す場合の補助や届出は「空き家の解体と補助金」、古い家を残したまま売る方法は「古家付き土地の売却」、貸すための工事は「空き家を賃貸に出すリフォームの優先順位」をご覧ください。地域の会社は会社一覧から探せます。売るか貸すかをまとめて聞きたい方は一括相談が便利です。
まとめ
- 解体も改修も、工事の前に石綿の有無を調べる決まりがあります
- 調べるのは元請業者で、建築物は2023年10月から資格を持つ人が行います
- 80平方メートル以上の解体、100万円以上の改修などは結果を報告します
- 持ち主は、調査の費用を適正に負担し、図面などを渡して協力します
- 石綿を含む断熱材などがあれば、発注者が14日前までに届け出ます
- 見積もりでは、調査費の有無と調査者の資格を確かめます




