外国人の入居受け入れの準備と注意点|差別にあたらない審査と多言語の説明

外国人の入居を受け入れたいが、言葉や生活習慣の違いが心配という大家さんに向けて、国土交通省のガイドラインをもとに、契約前・入居中・退去時の準備と、差別にあたらない対応を整理します。
結論
- 外国人の入居受け入れで大切なのは、契約前に契約の内容と生活のルールを、やさしい日本語や母国語でていねいに説明し、理解してもらうことです。
- 国土交通省は、入居申込書や賃貸住宅標準契約書などを14言語で載せた「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」を公開しています。
- 国土交通省のガイドでは、外国人であることを理由に入居を拒否すると、不当な差別にあたるおそれがあるとしています。
- 不安には、外国人に対応した家賃債務保証業者の活用や、緊急連絡先の事前確認、入居時の立ち会いで備えます。
「外国の方から申し込みがあったが、言葉が通じるか心配」。「ゴミ出しや騒音でトラブルにならないだろうか」。外国人の入居について、大家さんからこうした相談が寄せられます。
国土交通省のガイドでは、外国人入居者とのトラブルのおもな原因として、生活ルールや住宅の使い方を理解していなかったこと、契約内容を十分に理解していなかったこと、コミュニケーションがうまくとれなかったことを挙げています。
つまり、トラブルの多くは国籍ではなく、説明と確認の不足から起こります。この記事では、国土交通省のガイドラインと受入れガイドをもとに、受け入れの準備を順に説明します。
外国人の入居受け入れで大切なこと
差別にあたらない対応の基本
国土交通省の「外国人の受入れガイド」(令和3年12月)では、外国人であることを理由に入居を拒否すると、不当な差別にあたるおそれがあるとしています。過去に、国籍だけを理由に入居を拒否したことで、慰謝料の支払いが命じられた事例もあると紹介しています。
審査では、国籍で線を引くのではなく、すべての申込者に同じ基準を当てはめることが基本です。たとえば、家賃を払い続けられるか、連絡がとれるか、契約の内容を理解しているかといった点です。
外国人は住宅確保要配慮者にも含まれる
住宅セーフティネット制度では、住まいの確保に配慮が必要な「住宅確保要配慮者」に、省令で外国人などが加えられています。地域の居住支援協議会などの支援を受けられる場面もあります。
日本と外国の借り方の違い
入居前に伝えておきたい違い
国土交通省のガイドでは、日本と外国の賃貸の習慣の違いとして、次の点を挙げています。
- 国によっては、敷金・礼金・更新料などを払う習慣がない
- 退去時の原状回復の習慣がない場合もある
- 電気・ガス・水道の契約と解約を、入居者自身が行う必要がある
- 外国では口頭の契約が主流で、書面で契約する習慣がないこともある
日本では当たり前のことでも、相手にとっては初めてのことかもしれません。「知らなかった」を減らすことが、トラブルを防ぐいちばんの近道です。
入居中に起こりやすいトラブル
| トラブルの例 | 起こる理由 | 備え方 |
|---|---|---|
| ゴミ出しのルール違反 | 分別や曜日のルールを知らない | イラスト入りの掲示・多言語のチェックシート |
| 騒音による近隣トラブル | 生活時間や音の感じ方の違い | 入居時に生活ルールを説明し、定期的に見回る |
| 家賃滞納や無断同居 | 契約内容の理解不足 | 契約前に母国語などで説明し、書面でも渡す |
| 解約の連絡や鍵の返却をせず退去 | 退去の手順を知らない | 入居中の案内で退去の方法をあらためて知らせる |
契約前の準備(入居審査と説明)
多言語のガイドラインと様式を使う
国土交通省の「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」は、大家さんや仲介・管理会社向けの実務の手引きです。日本語、英語、中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語、ベトナム語、ネパール語、タイ語、インドネシア語、ミャンマー語、カンボジア語、タガログ語、モンゴル語の14言語に対応しています。
載っている様式は、入居申込書、重要事項説明書、賃貸住宅標準契約書と定期賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版)などです。資料編には、希望条件・入居審査の必要書類・入居の約束の3つのチェックシートがあります。
説明のしかた
- やさしい日本語で、ゆっくり、はっきり話す。専門用語はなるべく使わない
- できれば入居希望者の母国語で話す。難しければ、通訳をしてくれる友人の同伴や翻訳機も使う
- 初期費用、文化や習慣の違い、日本での生活ルールを、イラストや動画も使って確かめる
- 契約書とは別に、トラブルになりやすい事項をまとめた書面を用意して説明する
- 「入居の約束チェックシート」で、守ってほしいルールを一緒に確かめる
トラブルになりやすい事項とは、家賃などの費用、契約期間と更新、敷金の精算、違約金、解約の予告期間、ゴミ出しのルール、原状回復の費用などです。
言葉を言い換えて伝える
不動産の言葉は、日本語が得意な人にも分かりにくいものです。やさしい日本語に言い換えると、伝わりやすくなります。
- 敷金 → 部屋を出るときに、払っていない家賃や修理のお金を引いて返す「預けるお金」
- 礼金 → 部屋を借りるときに大家さんに払う、返ってこないお金
- 更新料 → 契約を続けるときに払うお金
- 原状回復 → 部屋を出るときに、壊したり汚したりしたところを直すこと
- 解約の予告 → 部屋を出る前に、決まった日までに知らせること
言い換えた言葉は、口で説明するだけでなく、書面にも書いて渡すと、あとで見返してもらえます。
在留カードの確かめ方
在留カードは、中長期在留者に交付されるカードで、在留資格や在留期間をもって適法に在留していることを証明するものです。氏名、国籍・地域、住居地、在留資格、就労の可否などが記載されています。
出入国在留管理庁によると、2026年6月14日からの新しい様式の在留カードでは、「在留期間」「許可の種類」「許可年月日」「交付年月日」が券面に書かれていません。在留期間などは、令和8年8月19日に公開された版以降の「在留カード等読取アプリケーション」で表示できます。
在留期間の確認は、すべての外国人の申込者に同じ手順で行います。国籍で確認の厳しさを変えないことが大切です。
ポイント
- トラブルの多くは、国籍ではなく説明と理解の不足から起こる
- 国土交通省の14言語の様式とチェックシートを使って説明する
- 審査の基準は、すべての申込者に同じものを当てはめる
- 在留カードの確認も、全員に同じ手順で行う
家賃保証と緊急連絡先の備え
外国人に対応した家賃債務保証業者
国土交通省のガイドでは、不安を和らげる手段のひとつとして、外国人に対応している家賃債務保証業者の活用を挙げています。滞納家賃の保証だけでなく、契約時や入居中の多言語でのサポートを受けられる場合があります。
国土交通省の登録制度に登録した家賃債務保証業者のうち、多言語に対応する業者の一覧は、国土交通省のホームページで紹介されています。保証の範囲や保証料は業者によって違うため、契約前に比べて確かめます。
緊急連絡先と普段の連絡先
入居希望者が普段かかわっている人の連絡先を、事前に確かめておくことが大切です。たとえば、母国の親族、日本人の友人、勤務先、通学先などです。
緊急連絡先が確保できないときは、地域の居住支援協議会に相談できます。協議会が緊急連絡先の役割を担ったり、その役割を担う社会福祉法人やNPO法人などを紹介したりしている場合があります。
入居中と退去時の対応
入居中にしておきたいこと
- 契約時に説明した生活ルールを、入居後にもう一度確かめてもらう
- ゴミ捨て場や共用部、物件のまわりを定期的に見回る
- 掲示物は文字だけでなく、イラストを使って伝える
- 日ごろからあいさつなどで声をかけ、異変に早く気づけるようにする
- 近所へのあいさつを促し、入居者どうしが話せる環境をつくる
在留カードを持つ中長期在留者には、引っ越したら新しい住居地の市区町村で14日以内に住居地を届け出る義務があります(出入国管理及び難民認定法19条の9第1項)。入居の案内に一言添えておくと、入居者にとっても助けになります。
退去時のトラブルを防ぐ
国土交通省のガイドでは、退去時のルールを契約時にていねいに説明することに加え、入居中の案内文書で退去の方法をあらためて知らせることを勧めています。事前の解約通知や鍵の返却をせずに退去してしまうことを防ぐためです。
原状回復については、契約時に義務があることを説明し、できれば入居時に立ち会って部屋の状態を一緒に確かめます。精算は国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」などをもとに行います。家具家電つきの物件なら、備え付けの物をチェックリストで確かめておくと、持ち帰りのトラブルを防げます。
場面の例で考える
日本の会社で働き始めたばかりの方から申し込みがあった場面です。日本語の会話はできますが、契約書の言葉は難しいと話しています。
この場合は、母国語の重要事項説明書と契約書の見本を見せながら説明し、トラブルになりやすい事項をまとめた書面を渡します。緊急連絡先として勤務先の連絡先も確かめ、入居日には立ち会って部屋の状態を一緒に記録します。こうして最初にかける手間が、入居中と退去時の安心につながります。
受け入れ前のチェックリスト
- 審査の基準は、国籍に関係なく全員に同じものを使っているか
- 14言語の様式(入居申込書・重要事項説明書・契約書)を用意したか
- トラブルになりやすい事項をまとめた書面を作ったか
- 家賃債務保証業者は、多言語対応や外国人対応を確かめたか
- 緊急連絡先と、普段の連絡先(勤務先・通学先など)を確かめたか
- ゴミ出しなどのルールを、イラスト入りで伝える準備をしたか
- 入居時の立ち会いと、退去の手順の案内を予定しているか
よくある質問
- 外国人であることを理由に入居を断ってもよいですか?
- 国土交通省のガイドでは、外国人であることを理由に入居を拒否すると、不当な差別にあたるおそれがあるとしています。国籍ではなく、支払い能力や連絡先など、全員に同じ基準で審査しましょう。
- 日本語が話せない人とはどう契約すればよいですか?
- 国土交通省のガイドラインにある14言語の入居申込書や契約書を使い、やさしい日本語か母国語で説明します。通訳をしてくれる友人の同伴や翻訳機を使う方法もあります。
- 外国人の入居者に保証人がいない場合はどうすればよいですか?
- 外国人に対応した家賃債務保証業者を使う方法があります。多言語に対応する登録家賃債務保証業者の一覧は、国土交通省のホームページで紹介されています。
- 在留カードで在留期間が見えないのはなぜですか?
- 2026年6月14日からの新しい様式では、在留期間などが券面に書かれていません。出入国在留管理庁の「在留カード等読取アプリケーション」で表示できます。
- ゴミ出しのトラブルを防ぐにはどうすればよいですか?
- 契約時にルールを説明し、イラスト入りの掲示や多言語のチェックシートで伝えます。自治体によっては外国語のゴミ出しパンフレットがあるので、相談してみましょう。
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まとめ
- 外国人の入居受け入れで大切なのは、契約前のていねいな説明と理解の確認
- 国土交通省の14言語のガイドラインと様式・チェックシートを使う
- 外国人であることを理由にした入居拒否は、不当な差別にあたるおそれがある
- 家賃保証は外国人対応の業者、緊急連絡先は勤務先なども含めて確かめる
- 入居時の立ち会いと、退去方法の再案内で退去時のトラブルを防ぐ




