賃貸の共用部の清掃・点検の決め方|頻度・担当・費用と法律で決まった点検

賃貸の共用部の清掃は、廊下や階段の見た目だけでなく、空室や入居者の満足にも関わります。この記事では、清掃と点検の頻度と担当の決め方、管理会社への頼み方、消防設備や受水槽など法律で決まった点検を整理します。
結論
- 賃貸の共用部の清掃は、場所ごとに「何を・どのくらいの頻度で・だれが」を表にして決め、管理委託契約に書いておきます。
- 賃貸住宅管理業法では、点検や清掃などの維持と必要な修繕を「維持保全」と呼び、管理会社の業務の中心に置いています。
- 消防用設備は1年以内で消防庁長官が定める期間ごとに点検し、共同住宅では3年に1回、消防長または消防署長に報告します。受水槽の有効容量が10立方メートルを超えるなら、水槽の掃除と検査が毎年1回以上必要です。
廊下に落ち葉がたまり、ごみ置き場から臭いがする。入居者から苦情が来て、はじめて清掃の回数が足りていないと気づく。共用部の清掃は、問題が起きるまで目が向きにくい仕事です。
一方で、内見に来た人が最初に見るのは、建物の入口や廊下です。共用部が整っていないと、部屋がきれいでも印象が下がります。
この記事では、共用部の清掃と点検をどう決めるかを、頻度・担当・費用・法律の順に説明します。
賃貸の共用部とは
共用部の意味
賃貸の共用部とは、入居者がみんなで使う場所のことです。廊下、階段、エントランス、ごみ置き場、駐輪場、集合ポスト、外灯などがあたります。入居者が自分だけで使う部屋の中(専有部分)とは分けて考えます。
分譲マンションでは、区分所有法2条で、専有部分以外の建物の部分などを共用部分と呼んでいます。一棟のアパートやマンションを持つオーナーの場合は、共用部の手入れはオーナーの側の仕事です。
管理業法での位置づけ
賃貸住宅管理業法2条2項1号は、管理会社の業務の一つとして「維持保全」を挙げています。維持保全とは、住宅の居室とその他の部分について、点検、清掃その他の維持を行い、必要な修繕を行うことです。
つまり、共用部の清掃と点検は、管理を任せるときの中心の業務です。同じ法律の20条では、管理会社は業務の実施状況などを、定期的にオーナーへ報告しなければならないとされています。法律の全体像は賃貸住宅管理業法とはをご覧ください。
共用部の清掃の決め方
場所ごとに頻度と担当を表にする
清掃の回数に法律の決まりはありません。建物の大きさ、入居者の数、まわりの環境で変わります。だからこそ、場所ごとに表にして決めます。
| 場所 | 主な作業 | 頻度の決め方 | 担当の例 |
|---|---|---|---|
| エントランス・廊下・階段 | 掃き掃除、拭き掃除、くもの巣取り | 人の出入りと汚れ方で決める | 日常清掃の担当 |
| ごみ置き場 | 散らかったごみの片付け、床の水洗い | 収集日の翌日に合わせる | 日常清掃の担当 |
| 集合ポスト・掲示板 | チラシの片付け、掲示の張り替え | 週ごとなど決まった日 | 日常清掃の担当 |
| 植え込み・外回り | 草取り、落ち葉の片付け | 季節で回数を変える | 外部の業者 |
| 外灯・照明 | 球切れの確認と交換 | 清掃の日にあわせて確認 | 管理会社 |
| 床や外壁の汚れ | 機械での洗浄 | 年ごとなど計画で決める | 専門の業者 |
日常清掃と定期清掃を分ける
清掃は、毎週などの決まった日にする「日常清掃」と、機械を使って年に数回などで行う「定期清掃」に分けると決めやすくなります。日常清掃は見た目と臭い、定期清掃は汚れの積み重ねを防ぐ役目です。
清掃と点検は一緒に回す
清掃の担当者は、建物を一番よく見ている人でもあります。清掃のときに、外灯の球切れ、手すりのぐらつき、雨もりのしみ、消火器の位置などを確かめてもらうと、小さな傷みを早く見つけられます。
管理会社に共用部の清掃を頼むときの確認点
管理会社に任せるときは、次の順番で決めると、あとで食い違いが起きにくくなります。
- 清掃する場所と作業の中身を、表で示してもらう
- 頻度と、作業する曜日や時間帯を決める
- 費用が管理委託料に含まれるか、別の料金かを確かめる
- 作業のあとの報告の形(写真つきの報告書など)を決める
- 入居者から苦情が来たときの連絡の流れを決める
費用の考え方
清掃の費用は、会社や建物によって違います。管理委託料に含まれている場合もあれば、別の料金になっている場合もあります。見積もりは、場所と頻度をそろえて比べましょう。比べ方は管理会社の選び方でくわしく説明しています。
自分で清掃するとき
自主管理で清掃を自分でする場合も、表を作っておくと続けやすくなります。忙しくて回数が減りやすいところは、部分的に外部の業者に頼む方法もあります。自主管理と委託の違いは自主管理と管理委託の違いをご覧ください。
ポイント
- 清掃は場所ごとに、作業・頻度・担当を表にする
- 日常清掃と定期清掃を分けて計画する
- 清掃のときに、傷みや球切れの確認もあわせて頼む
- 費用が委託料に含まれるかを、見積もりで確かめる
法律で決まっている共用部の点検
清掃の回数は自由に決められますが、建物の設備によっては、法律で点検が決まっているものがあります。
消防用設備の点検(消防法)
消防法17条の3の3は、消防用設備などを定期に点検し、その結果を消防長または消防署長に報告するよう定めています。消防法施行規則31条の6では、点検は種類や内容に応じて1年以内で消防庁長官が定める期間ごとに行い、共同住宅の報告は3年に1回とされています。
建物の規模などによっては、消防設備士など資格のある人に点検させる必要があります。どの設備が対象かは、建物ごとに消防署や点検の業者に確かめてください。
受水槽の掃除と検査(水道法)
建物に水道水をためる受水槽があり、その有効容量の合計が10立方メートルを超えるときは、水道法の「簡易専用水道」にあたります。水道法施行規則では、水槽の掃除を毎年1回以上定期に行い、登録を受けた機関などの検査を毎年1回以上受けることとされています。
建物と昇降機の定期調査・検査(建築基準法)
建築基準法12条では、一定の用途や規模の建物で、特定行政庁が指定するものなどについて、定期に建物の調査や、昇降機などの設備の検査をさせ、結果を報告するよう定めています。対象と時期は、建物の用途・規模と自治体の指定で変わります。建物のある自治体の窓口で確かめましょう。
| 点検 | 根拠 | 確かめる先 |
|---|---|---|
| 消防用設備 | 消防法17条の3の3、施行規則31条の6 | 消防署、点検業者 |
| 受水槽(有効容量10立方メートル超) | 水道法34条の2、施行規則55条・56条 | 自治体の水道の窓口 |
| 建物・昇降機など | 建築基準法12条 | 特定行政庁(自治体) |
法律で決まった点検は、清掃の契約とは別の契約になっていることが多いです。だれが、いつ、どの業者に頼んでいるかを一覧にしておきましょう。
場面で考える共用部の清掃と点検
場面1:ごみ置き場の苦情が続くアパート
Dさんのアパートでは、ごみ置き場の臭いとカラスの被害で、入居者から苦情が続いていました。清掃は週に1回でしたが、その曜日が収集日の前の日でした。
清掃の日を収集日の翌日に移し、ネットの張り方を掲示で知らせたところ、苦情が減りました。回数を増やす前に、日にちの合わせ方を見直すだけで変わることがあります。
場面2:清掃の報告がなく、中身が分からない
Eさんは管理会社に清掃を任せていましたが、報告は「清掃済み」の一言だけでした。内見に立ち会ったとき、階段の隅に汚れがたまっているのに気づきました。
Eさんは、場所ごとの作業を表にして示してもらい、清掃のあとに写真つきで報告してもらうよう契約を見直しました。報告の形を決めると、作業の抜けに気づきやすくなります。
場面3:相続したマンションで点検の時期が分からない
一棟のマンションを相続したFさんは、消防設備の点検をだれに頼んでいるか分かりませんでした。前の持ち主の書類を探し、点検の業者と最後の報告の時期を一覧にまとめました。相続で引き継いだ建物は、点検の契約もあわせて引き継ぎを確かめる必要があります。引き継ぎ全体は相続した賃貸アパートの引き継ぎをご覧ください。
言葉の言い換え
- 共用部:入居者がみんなで使う場所。廊下・階段・ごみ置き場など
- 維持保全:点検や清掃で建物を保ち、必要な修繕をすること
- 日常清掃:決まった日に行う掃き掃除や拭き掃除
- 定期清掃:機械などを使って計画的に行う清掃
- 簡易専用水道:水道水を受水槽にためて使う設備のうち、有効容量の合計が10立方メートルを超えるもの
入居者に共用部のルールを伝える工夫
清掃の回数を増やしても、使い方のルールが伝わっていないと、すぐに汚れます。ごみの出し方、自転車の置き場所、廊下に私物を置かないことなどは、入居のときに書面で伝え、掲示板にも出しておきます。
掲示は、短い言葉で、なぜそのルールが必要かも添えると伝わりやすくなります。たとえば「廊下に物を置かないでください。火事のときの避難の通り道です」のように書きます。
外国から来た入居者が多い建物では、絵や記号を使った掲示にすると伝わりやすくなります。ルールを守ってもらえないときは、まず個別に事情を聞き、それでも続くときは管理会社と対応を相談します。共用部の使い方の苦情は、入居者どうしの関係にも関わるので、だれが言ったかを伏せて伝えるなどの気配りも大切です。
共用部の清掃でよくある失敗
- 清掃の中身が「共用部清掃一式」とだけ書かれ、何をするか分からない
- 報告がなく、本当に清掃されたか確かめられない
- ごみ置き場の清掃が収集日とずれ、臭いの苦情が続く
- 消防設備の点検の時期を、だれも把握していない
- 費用を下げるために回数を減らし、内見の印象が下がる
ごみや騒音など、共用部のルールの話は騒音トラブルの対応やシェアハウスのトラブル予防も参考になります。
共用部の清掃・点検のチェックリスト
- 場所ごとの作業・頻度・担当を表にしているか
- 清掃の費用が委託料に含まれるか確かめたか
- 清掃のあとの報告の形を決めたか
- 消防設備の点検と報告の時期を把握しているか
- 受水槽の有無と、有効容量を確かめたか
- 建物や昇降機の定期調査・検査の対象か、自治体に確かめたか
よくある質問
- 賃貸の共用部の清掃は、だれの仕事ですか?
- 一棟の建物では、オーナーの側の仕事です。管理会社に任せる場合は、管理委託契約で範囲と頻度を決めます。
- 共用部の清掃の頻度に決まりはありますか?
- 清掃そのものの回数に法律の決まりはありません。汚れ方や入居者の数で決め、契約に書いておきます。
- 共用部の清掃は空室対策になりますか?
- 内見の人は入口や廊下も見るので、印象に関わります。空室対策の全体は空室対策をご覧ください。
- 消防設備の点検は自分でできますか?
- 建物の規模などによっては、資格のある人に点検させる必要があります。消防署や点検の業者に確かめましょう。
- 受水槽の掃除はどのくらいの頻度ですか?
- 有効容量の合計が10立方メートルを超える受水槽なら、水道法施行規則で毎年1回以上の掃除と検査が決まっています。
共用部の管理の相談先
清掃と点検をまとめて任せたいときは、会社一覧から管理会社を探せます。内見の前の準備は内見の準備、管理会社を替えたいときは管理会社の変更をご覧ください。複数の会社に聞きたいときは一括相談の使い方が使えます。
まとめ
- 共用部の清掃は、場所ごとに作業・頻度・担当を表にして決める
- 管理業法では、点検・清掃などの維持保全が管理の中心の業務
- 消防用設備は1年以内の期間ごとに点検し、共同住宅は3年に1回報告
- 受水槽が10立方メートルを超えるなら、掃除と検査が毎年1回以上
- 法律で決まった点検の担当と時期を、一覧にしておく




