公正証書遺言の作り方|証人2人・手数料・必要書類と自筆証書との違い

公正証書遺言は、公証人が作る遺言です。作るまでの流れ、証人になれない人、財産の額で決まる手数料、そろえる書類、自筆証書遺言との違いを、不動産を残したい方向けに整理します。
結論
- 公正証書遺言とは、証人2人以上の立会いのもと、遺言する人が内容を公証人に伝え、公証人が作る遺言です(民法第969条)。
- 相続のあと、家庭裁判所の検認がいりません(民法第1004条第2項)。
- 公証人の手数料は財産の額に応じて決まり、遺言の場合は財産の額が1億円以下なら1万3,000円が加わります(公証人手数料令第19条)。
- 推定相続人や財産を受け取る人、その配偶者と直系血族は、証人になれません(民法第974条)。
「自宅は長男に、アパートは長女に。でも、自分で書いた遺言で本当に大丈夫だろうか」。「字を書くのがつらくなってきた」。遺言を考える方から、こうした声を聞きます。
不動産は分けにくく、遺言の書き方ひとつで、残された家族の手続きが大きく変わります。確かな形で残したいときに選ばれるのが、公正証書遺言です。
この記事では、公正証書遺言の作り方を、証人の決まり、手数料、必要書類、作るまでの流れに分けて整理します。自筆証書遺言との違いや、不動産を書くときの注意点もまとめます。
公正証書遺言とは
意味
公正証書遺言とは、公証人が遺言する人から内容を聞き取り、公正証書として作る遺言です。公証人法の第11条では、公証人は法務大臣が任命するとされています。遺言のほか、契約などの公正証書も作ります。
民法の決まり
民法の第969条では、公正証書遺言は、証人2人以上の立会いがあること、遺言する人が遺言の趣旨を公証人に口で伝えることなどの方式に従うとされています。口がきけない人は、通訳人の通訳や自書で伝えることができます(第969条の2)。
選ばれる理由
- 公証人が関わるので、方式の誤りで無効になるおそれが小さい
- 相続のあと、家庭裁判所の検認がいらない
- 自分で全文を書かなくてよい
- 公証役場に出向けない場合は、公証人に来てもらう方法もある
自筆証書遺言との違い
比べる表
| 比べる点 | 公正証書遺言 | 自筆証書遺言 |
|---|---|---|
| 作る人 | 公証人 | 遺言する本人 |
| 証人 | 2人以上が必要 | いらない |
| 本人が書く量 | 書かなくてよい | 全文・日付・氏名を自分で書く |
| 検認 | いらない | 必要(法務局に預けた場合はいらない) |
| 費用 | 公証人の手数料がかかる | 自分で保管すればかからない |
| 内容の秘密 | 証人に内容を知られる | 知られずに作れる |
自筆証書遺言の要件や、法務局に預ける制度は「遺言書で不動産を残す書き方」で整理しています。
どちらを選ぶかの分かれ道
- 費用をおさえ、自分で書ける:自筆証書遺言を法務局に預ける
- 字を書くのがつらい、体調に不安がある:公正証書遺言を考える
- 不動産が多く、相続人ももめそう:公正証書遺言で、内容を専門家と詰める
- 内容をだれにも知られたくない:証人が要ることを踏まえて考える
証人の決まり
証人になれない人
民法の第974条では、次の人は遺言の証人になれないとされています。
- 未成年者
- 推定相続人(相続人になる予定の人)と受遺者(遺言で財産を受け取る人)
- 推定相続人と受遺者の、配偶者と直系血族
- 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記と使用人
証人を探すときの考え方
子や配偶者は推定相続人なので、証人になれません。孫も、遺言で財産を受け取るなら受遺者に当たります。家族の中で証人を探すのは難しいことが多いため、知人に頼むか、公証役場に相談します。
ポイント
- 証人は2人以上が必要
- 子・配偶者・財産を受け取る人は証人になれない
- その配偶者や直系血族(親・子・孫など)もなれない
- 家族で見つからなければ、公証役場に相談する
公正証書遺言の手数料
財産の額で決まる手数料
公証人手数料令の別表では、法律行為の目的の価額に応じて、次の手数料が定められています。
| 目的の価額 | 手数料 |
|---|---|
| 50万円以下 | 3,000円 |
| 50万円を超え100万円以下 | 5,000円 |
| 100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
| 200万円を超え500万円以下 | 1万3,000円 |
| 500万円を超え1,000万円以下 | 2万円 |
| 1,000万円を超え3,000万円以下 | 2万6,000円 |
| 3,000万円を超え5,000万円以下 | 3万3,000円 |
| 5,000万円を超え1億円以下 | 4万9,000円 |
1億円を超える部分は、5,000万円ごとに加算する決まりです。
遺言ならではの加算
公証人手数料令の第19条では、遺言の公正証書は、別表の額に1万3,000円を加えるとされています。ただし、遺言の目的の価額が1億円を超えるときは加えません。遺言を取り消す公正証書の手数料は、1万3,000円です。
出張してもらう場合
病気などで公証役場に行けず、病床で作る場合は、手数料に、加算前の額の10分の5が加わります(第32条)。公証人の日当は1日2万円、4時間以内なら1万円で、交通費の実費もかかります(第43条)。
計算の例
たとえば、目的の価額が3,000万円と見られる自宅だけを長男に残す遺言なら、別表の2万6,000円に、遺言の加算1万3,000円を加えて3万9,000円が手数料の基本になります。財産の額をどう見るかや、ほかの費用によって、実際の額は変わります。
財産をどう数えるか(受け取る人ごとに分けて数えるかなど)で、手数料の合計は変わります。実際の額は、作る前に公証役場で見積もってもらいましょう。
作るまでの流れと必要書類
手順
- だれに、どの財産を残すかを考え、メモにする
- 財産と相続人が分かる書類を集める
- 公証役場に連絡し、内容を相談して日時を決める
- 証人2人を決める(見つからなければ公証役場に相談する)
- 公証人が作った案を確かめ、直したい所を伝える
- 当日、証人の立会いのもとで内容を確かめ、遺言が完成する
そろえたい書類
- 遺言する人の本人確認の書類
- 遺言する人と相続人の続柄が分かる戸籍
- 相続人以外に残す場合は、受け取る人の氏名・住所が分かる書類
- 不動産の登記事項証明書と、固定資産税の課税明細書など財産の額が分かる書類
- 預貯金などの財産が分かる資料
- 証人の氏名・住所などが分かるメモ
これは準備の目安です。求められる書類は公証役場の案内で確かめます。財産の額は手数料の計算にも使うため、早めに集めておくと相談が進みます。
相談の前に整理しておくこと
公証人に伝える内容は、メモの形でかまいません。次の点を書き出しておくと、1回目の相談で話がまとまりやすくなります。
- 残したい財産の一覧(不動産・預貯金・株など)
- それぞれをだれに残すか
- 受け取る人が先に亡くなった場合に、代わりにだれに残すか
- 遺言の内容を実際に手続きする人(遺言執行者)をだれにするか
- 家族に伝えておきたい思い(付言として書けることがある)
とくに不動産は、相続のあと住む・貸す・売るのどれにするかで、引き継ぐ人の負担が変わります。引き継ぐ人と、使い道を話しておくと安心です。
デジタル化の決まり
公証人法では、公正証書は原則として電磁的記録(電子データ)で作るとされています(第36条)。また、本人の申出があり公証人が相当と認めるときは、映像と音声でやりとりする方法で手続きを行える決まりもあります(第37条第2項など)。使えるかどうかは、公証役場で確かめましょう。
作ったあとにすること
- 受け取った書面やデータの保管場所を、信頼できる家族に伝える
- 遺言の内容を手続きする人(遺言執行者)を決めたなら、その人に知らせておく
- 財産の一覧の控えを、遺言と一緒に保管する
- 家を売る・建て替えるなど財産が変わったら、作り直しを考える
証人を頼む人に伝えること
証人は、遺言の内容を聞くことになります。頼むときは、内容を知られることと、当日の時間と場所を伝えます。証人になれない人に当たらないか(相続人や受け取る人の家族ではないか)も、頼む前に確かめましょう。
不動産を残すときの注意点
不動産の書き方
不動産は、登記事項証明書のとおりに、土地は所在・地番、建物は所在・家屋番号などで特定します。公証人が書面を整えますが、もとになる書類をそろえるのは遺言する人です。
遺留分に気を配る
民法の第1042条では、兄弟姉妹以外の相続人には遺留分(最低限の取り分)があります。1人に不動産をすべて残すと、ほかの相続人からお金を求められることがあります。
書き直しと撤回
民法の第1022条では、遺言はいつでも、遺言の方式に従って撤回できるとされています。前の遺言と後の遺言が食い違う部分は、後の遺言で撤回したものとみなされます(第1023条)。家を売ったり建て替えたりしたら、内容を見直しましょう。
不動産ごとの考え方
| 不動産 | 考えておきたいこと |
|---|---|
| 自宅 | 同居している家族が住み続けられるか |
| 貸しているアパート | 管理を引き継げる人か、入居者との契約をどうするか |
| 空き家 | 売るか貸すかを、引き継ぐ人と話しておく |
| 共有の土地 | 共有のまま残すと、あとで分けにくくなる |
不動産を複数の人で共有させると、売るにも貸すにも全員の話し合いが要ります。できるだけ、1つの不動産は1人に残す形を考えましょう。
場面の例
Dさんは、自宅を同居の長男に、貸しているアパートを長女に残したいと考えました。手が震えて長い文章を書くのがつらいため、公正証書遺言を選びました。登記事項証明書と戸籍を集めて公証役場に相談し、友人2人に証人を頼んで作りました。
よくある失敗
- 子や孫に証人を頼もうとして、当日になって困る
- 不動産を住所だけで伝え、地番や家屋番号の書類を用意していない
- 遺留分を考えず、相続人の間に不満が残る
- 作ったあとに財産が変わったのに、見直さない
むずかしい言葉の言い換え
- 公証人:公正証書を作る、法律の専門家
- 検認:家庭裁判所が、遺言書の形や状態を確かめる手続き
- 推定相続人:今亡くなったら相続人になる予定の人
- 受遺者:遺言で財産を受け取る人
よくある質問
- 公正証書遺言の証人はだれでもなれますか?
- なれません。未成年者、推定相続人と受遺者、その配偶者と直系血族などは証人になれません。
- 公正証書遺言の手数料はいくらですか?
- 財産の額に応じて公証人手数料令の別表で決まり、遺言では1億円以下なら1万3,000円が加わります。
- 公正証書遺言は検認が必要ですか?
- 必要ありません。民法第1004条第2項で、公正証書による遺言には検認の決まりを当てはめないとされています。
- 公証役場に行けない場合はどうしますか?
- 公証人に病院や自宅へ来てもらえます。手数料の加算と、日当・交通費がかかります。
- 公正証書遺言は作り直せますか?
- 作り直せます。遺言はいつでも、遺言の方式に従って撤回できます。
- 公正証書遺言の証人を子どもに頼めますか?
- 頼めません。子は推定相続人なので、民法第974条で証人になれないとされています。
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まとめ
- 公正証書遺言は、証人2人以上の立会いのもと公証人が作る遺言です
- 相続のあと、家庭裁判所の検認がいりません
- 推定相続人・受遺者とその配偶者・直系血族は、証人になれません
- 手数料は財産の額で決まり、遺言では1億円以下なら1万3,000円が加わります
- 不動産は、登記事項証明書の書類をそろえて伝えます
- 財産が変わったら、遺言の方式で作り直せます




